ケイの読書日記

個人が書く書評

「猫は神さまの贈り物」エッセイ編  有楽出版社

2017-11-11 19:51:02 | その他
 作家・画家・評論家・学者といった様々な職業人17人が書いた、猫についてのエッセイを集めたアンソロジー。初出はバラバラで、古いものは戦前に植民地下のソウルで書かれたエッセイもある。多くは戦後しばらくたって1970年代ぐらいのエッセイが多いかなぁ。

 夏目漱石のエッセイもあるし、漱石と猫について書いてある山本容朗という人のエッセイもある。
 夏目漱石は『吾輩は猫である』で有名になったので、猫派と思われるかもしれないが、実は犬の方が好きなんだってね。ただ、世間の人はそう思ってくれず、猫の名付け親になってくれと頼まれたり、猫の骸骨が送られてくることもあったそうだ。すごい人だなぁ。

 柳田國男の民俗学的エッセイもある。陸前の田代島は猫の島としてとても有名で、私もいつか行きたいと思っている場所。猫神社なるものがあり、ここは犬が上陸禁止なのだ。島民のほとんどが漁業に従事しているから、猫がいっぱいいるのは当然。その猫は犬と敵同士だから、犬を上陸させないようにした…というのは一見理屈が通っているように思うが、柳田國男は、別の説を唱える。犬の上陸禁止の方が先ではないか、と。(犬を入れてはならないという島は、昔は日本のあちこちにあったらしい)
 なぜか?それは、島を葬地とする習慣があったからではないかと彼は推測する。
 確かに、土を深く掘って死体を埋めることは、大昔にはやらないだろう。大昔は鳥葬や風葬みたいなのが一般的だったろう。海上にころあいの離れ小島があれば、それを葬りの場所にするのは自然のことで、そこに野犬がいれば遺体をメチャメチャに食い荒らすだろう。だから犬を上陸させなかった。
 時代が下って土葬が一般的になり、、そういった葬り島の言い伝えが消えていき、犬を上陸させないという習慣だけが残った。そこで、猫神さまの島という理由を後からつけた。なるほどね。あくまでも推測だけど。

 他には、黒田亮という動物学者が、猫とマタタビを研究していた。これ、戦前の京城(ソウル)で。暇ですなぁ。
 猫はマタタビにエクスタシーを感じるようで、我が家のみぃ太郎も、猫爪磨き板に添付されているマタタビパウダーを振りかけると、よだれをたらしてスリスリする。効果てきめん。ただ、黒田氏にいわせると、世界中のネコがマタタビを好きという訳ではなく、西洋のネコはアスパラガスが好きらしい。(本当か!?)

 猫好きで有名な大佛次郎のハートフルエッセイも。彼の家にはいつも10匹以上の猫がいて、ご飯時には、猫たちが1列に並んで一斉にご飯を食べている写真を見た事がある。壮観でした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 角田光代 「世界は終わりそ... | トップ | 「日の名残り」  カズオ・イシグ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事