ケイの読書日記

個人が書く書評

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」を読んで

2005-11-15 16:27:41 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「グリーン家殺人事件」と比肩される本格推理小説ということで、読むのがすごく楽しみだった。
 この「僧正殺人事件」の方が、「グリーン家」より出来がいいと思う。


 コック・ロビンを殺したのはだあれ?「わたし」って雀はいった。「わたしの弓と矢をもってコック・ロビンを殺したの……

 マザーグースの童謡につれて、その歌詞どおりに連続殺人が発生する。


 こういった設定はクリスティの小説にもよくでてくるが、残念ながらあまり成功しているとはいえない。(唯一の例外は「そして誰もいなくなった」これはインディアンの童謡が本当に効果的につかわれている)

 しかし、この「僧正殺人事件」では、このコックロビンの無邪気な残酷さが作品を支配している。

 でも、「グリーン家」でも感じたが、最初から一握りの容疑者しかおらず、しかもその容疑者が次々と殺害され、残った2人の容疑者から犯人がわかっても、それでも名探偵というんだろうか。
 なんていったって、犯人がわかるまでに5人が殺されて、1人が殺されそうになっている。
 しっかりしろよ!ファイロ・ヴァンス!


 また、どうしてこの容疑者たちは、自分たちの中に犯人がいる事がわかっているのに、暗い夜道へ行ったり、部屋へ入ったりしているんだろう。疑心暗鬼になるのが当然なのに、あまりにも行動が明るくて無邪気なので驚いてしまう。
 「グリーン家」の時など、家の中で何人も毒殺されているというのに、皆さん人の作った食事をパクパク食べているので、あきれる。

 度胸があるというのか、肝がすわっているというのか、リアリティがないというのか……


 文句ばかり書いたが、最後のドンデン返しは見事。一読の価値あり。
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2 コメント

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Unknown (優美)
2005-11-16 17:12:17
そういう、被害者を多く出しながら

ゆっくり解決する名探偵って、いますよね~。

読みながら笑っちゃいました。



その肝のすわり方と、最後のどんでん返しが気になるので、

次回読んでみますね~。
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優美さんへ (kei)
2005-11-17 14:53:06
 被害者を多く出しながら、ゆっくり解決する名探偵の1人が、金田一耕介ですよね。何のためにいるんだろう。犯罪を防ぐには不適当な人です。依頼人から契約解除されないかしら、と心配しちゃいます。



 と、ボロボロに金田一耕介をこき下ろしましたが、私は横溝正史が、比較的好きです。

 江戸川乱歩よりうんと好き。一般的な評価は江戸川乱歩の方が上だろうけど、私はどうも乱歩はあまり好きになれないです。

 古すぎて、受け付けないなあ。



 横溝正史も古さを感じますが、そのクラシックな所が逆に好ましい。

 古い因習にがんじがらめになった、地方の没落しかけている旧家で起こる連続殺人事件。おおお、舞台装置満点です。
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