日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「スポーツと広告」

2005-02-04 13:48:43 | マーケティング
一応「知的体力基礎講座」の3回目です。
教科書のような内容よりも、今起きていることを中心に「マーケティングとは何?」ということを綴っていきたいと思います。

昨日の静岡新聞に「ヤマハ発動機、AFCスポンサーに」という記事がありました。
詳しい内容は、ヤマハ発動機から出ているプレスリリースを読んで頂いたほうが、良いかと思います。

スポーツの国際大会などでよく目にする、スポンサー企業の広告。
「これだけで、宣伝効果があるのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
例えば、かつてあった「TOTOスーパー陸上」のように、「スポーツイベントのスポンサー」になったほうが、宣伝効果は高い様に思われます。
単純に短期的な効果という点では、スポーツイベントのスポンサーの方が効果はあるかも知れません。
しかし、一度スポンサーとなってしまうとそのイベントにおいて発生する様々な費用の捻出ということが、問題になってきます。
例えば、以前あった女子新体操の大会はバブル崩壊後スポンサーが撤退したのを機に、大会そのものがなくなってしまった事があります。
このようなことは、企業にとってマイナスイメージとなることはあっても、プラスイメージとして生活者に印象付けることはできません。
しかし、今回のヤマハ発動機のようにアジアサッカー連盟のスポンサーとなれば、アジアで行われるサッカーの国際大会への看板掲示ができます。
それだけではなく、テレビ中継などもありますから試合会場にいないアジアの人たちも、看板を目にすることができます。
サッカーのように、競技人口が世界一多いスポーツとなると、下手にイベントスポンサーとなるよりも遥かに効率の良い、宣伝活動になるのです。

まして、ヤマハ発動機のバイクは、アジアでもトップシェアを誇っています。
アジア各地にある販売店向けの、販売促進活動もこれまで以上にしやすくなるでしょう。
それだけではなく、「AFC」という名前を使った販売促進活動もできるようになるのです。
場合によっては、「チケットプレゼント」という販売促進をすることも可能です。

とはいうモノの、事業体とかけ離れたスポーツへの広告は決してプラスとはなりません。
撤退が相次いだ女子新体操の大会で、唯一残っているのは「ワコール」が冠となっている大会だけです。
ワコールという企業の事業分野は、女性の下着が中心です。
そして、新体操というスポーツ分野のスポンサーとなることで「リラックスウェア」や「スポーツウェア」という分野に進出することに成功しています。
今回のヤマハ発動機については、どうでしょうか?
サッカーファンの方であればお分かりになると思いますが、ヤマハ発動機の元サッカー部が現在の「ジュビロ磐田」です。
他にも、同じ「ジュビロ」という愛称でモータースポーツのチームやラグビーチームを持っています。
決して、本来の事業とかけ離れたところに広告を打つというわけではないのです。

様々な企業が、バブルの時に「新規分野」として進出をしました。
一番多かったのは、ゴルフへの参入でした。
しかし、バブル崩壊後トーナメント・スポンサーを降りた企業は、数え切れないほどあります。
これでは、スポーツ分野へ広告を打つ意味が、まったくないことになってしまいます。
スポーツという「言葉やイデオロギーを超える共通文化」に広告を出すことは、企業が「世界戦略としてのより磐石な販売基盤を作ること」になりますが、見当違いな分野での広告はマイナスイメージを生活者に植え付けるだけなのです。