日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

文化を知ること

2008-05-18 19:21:02 | アラカルト
YahooのトピックスにCNNの「米軍、コーランを的に銃撃練習」と言う内容の記事が掲載されている。
このトピックスの見出しを見たとき、「相手の文化を尊重しないと、何を言っても反感を買うだけ」という、当たり前のコトを理解していないアメリカを感じた。
何もこれはアメリカに限ったことではない。
先ごろ起きたチベットの問題にしても、ダライ・ラマ14世は「チベットの文化や自主性を尊重する『高度な自治』」を要求しているのであって、決して「中国からの独立」を言っているのではない。
それなのに、中国はチベットの(言語や宗教の自由だけではない)文化そのものを、破壊によって統制し力で制圧しようとしていることで起きている問題なのに、その事に目を向けることなく、一方的な批難を繰り返すばかりだった。
中国政府にとってチベットの文化などは、邪魔になるだけだと考えているのだ。

同じように、力のある立場にある国が「正義」と言う名のもとに侵攻していく場合、相手の文化などをまったく考えず、自分たちの考えや文化こそが正しいといって押し付け、場合によっては武力を使うコトがある。
その様なことで起きている悲劇は、後をたたないどころか世界各地へと広がっている。

これはあくまでも「政治」と言う世界の話だと思われがちなのだが、実際には経済においても同じような「文化摩擦」が起きている。
70年代、日本企業がアジア各地へ進出していくたびに、「エコノミック・アニマル」と言われた。
さすがに今では「死語」と化したと思われるのだが、それほど日本企業の海外進出は歓迎されないコトだったのだ。
日本企業そのものが現地の文化を尊重し、分かりあえるようになってくるまでに30年近くの時間が必要だったのだ。

先ごろ、世界的な環境保護団体「グリーンピース」が、日本の調査捕鯨船の乗組員が鯨の肉を横流しにしている、と告発をしていた。
「グリーピース」が行ったこと自体、窃盗に当たる行為なのだが、「鯨を守るため!」というお題目の前では窃盗もまた肯定されるべき行為だと言うのは、「日本人と鯨」と言う文化を理解してないからだろう。
そもそも、鯨の頭数激減の背景には欧米の捕鯨が大きく関わってきている。
ペルー来航の目的の一つは、捕鯨基地確保のためだったと言うのは、日本史でも習う内容だろう(今は分からないが、30年前はそうだった)。
目的は「鯨油」の確保だ。
その様な歴史的背景を棚に上げ、「鯨の保護」と言うのは・・・。
日本の伝統的な鯨漁や日本人と鯨の関わりは、鯨油目的ではなく食を含めての文化があった。
その点を理解することなく、感情的な鯨保護は的外れのような気がするのだ。

「経済のグローバル化」といわれて、久しい。
その事自体悪いことだとは思わない。
だが、グローバルになればなるほど、相手の文化を理解し尊重していかなくては、ビジネスも成り立たないどころか、相手から反感を買うだけだ。

10年近く前、某水色サッカーチームのサポである私は、中近東のチームとの国際試合を観戦するために、ホームスタジアムへと足を運んだ。
その時、イスラム圏の人たちが誇らしげに大型ラジカセから大音量でコーランを流している脇を、にこやかに水色チームサポが試合展開を予想しながら歩いていた。
そんな穏やかな空気の中で、試合が観戦できるコトに一種の嬉しさを感じたのである。
本来なら、そんな穏やかさが経済にも政治にも必要なのではないだろうか?