日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

これからの日本のモノづくり

2011-12-26 18:55:39 | ビジネス
今朝の新聞に、柳宗理さんの訃報があった。
ご存知の通り、日本の工業デザイナーの先駆者的人物だった。
柳さんの作り出す作品は、工業製品というよりも「日用品」的な感覚があり、見た目の良さだけではなく、使い勝手や手触り感といったところまで、考え尽くされたデザインだったと思う。
だからこそ、半世紀以上も前の作品が今でも陳腐化せずに、時代の変化とは関係ないのに時代感を感じさせながら、今でも使われ続けているのだと思う。

柳さんのデザインの真骨頂とも言えるのが、「シンプル」というコトだったように思う。
「日本の美は、引き算の美」と言われている。
余分なものを削ぎ落とし続けた結果として現れるデザイン、それが柳さんのやかんや椅子などだったような気がしている。

ところで、今年を振り返ると「東日本大震災」と、「東京電力福島第一原子力発電所事故」の2つぐらいしか思い浮かばない。
特にこの2つが与えた影響は、日本国内だけではなく海外にも大きな影響を与えた。
まず震災についてだが、東北地方の「モノづくりの強さ」を、初めて知ったのは私だけだろうか?
もちろん、関係企業の方にとっては知っていて当たり前のコトだったと思うのだが、それ以外の人たちにとっては、少し驚くコトだったと思う。
そしてその事実を知った上でこれからの「日本のモノづくり」というモノを、考え直す必要があるのでは?と、感じた方も多かったのではないだろうか。
これまでのように、「工場を誘致して生産ラインでの雇用を期待する」という、地方の考え方では、人件費の安いアジア諸国とは太刀打ちできない。
であれば、「日本のモノづくりは、どうあるべきなのか?」という、コトを真剣に考え直す必要が出てきた。
その答えの一つが、今回の震災の被災地・東北にあるのでは?と、思ったのだ。
組み立て生産ラインのための雇用ではなく、「モノづくりの肝の生産ライン」という発想だ。
そこには、デザイも含めたモノづくりが必要になると思う。
むしろ、「工業製品だからこそ、優れたデザインが必要」という時代なのだと思うのだ。
組み立て生産ラインは、その企業における象徴的なモノに限り残し、それ以外は人件費の安いアジアへ拠点を移すというのは、これからの当然の流れとなっていくためには必要な事だろう。

そしてもう一つの「東京電力福島第一原子力発電所事故」は、私たちの「生活そのものを見直す」きっかけとなった。
言い換えれば、「ライフスタイルの転換」を迫られ、生活の「断捨離」を考えさせられたのではないだろうか?
それは「生活サイズの縮小」といえるかも知れない。
ただ「生活サイズの表面積の縮小」というコトなだけで、「生活サイズの内容充実度」という視点で見れば、まだまだ違う発想が生まれるのでは?
おそらく来年くらいから「スモールライフサイズの充実生活」という提案が、様々なトコロから出てくるのではないだろうか?
もしかしたら、それが「世界の快適な生活の標準サイズ」となるかも知れない。
そのくらいの気持ちを、提案していく必要があると思っている。
まさに、柳さんが創りだした「日本のデザイン」のように。