日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

人材の確保が急務なのでは?-出生前診断に思うー

2013-11-23 19:28:19 | 徒然

今朝のいくつかの新聞の一面に、「出生前診断」についての記事が掲載されている。
この夏ぐらいから、話題になった「出生前診断」。
この診断を受け、陽性と判定された妊婦さんの約9割の方が、中絶をしていた、と言う内容も記事には書いてある。
朝日新聞:新型出生前診断、陽性の9割以上中絶 羊水検査後

「陽性判定だから、中絶をした」と言うコトは、あくまでも妊娠された方とパートナーがしっかり相談をした上でのコトだと思う。
そこには第三者が、口を挟む余地は無いと思っている。
ただ、気になるコトがある。
それは「カウンセリング体制」という点だ。

今年の5月、全米だけではなく日本でも話題になった、女優・A・ジョリーさんの「予防的乳房切除」。
彼女の場合、母親だけではなく叔母も乳がん患者であったことを考えれば、一般的に言われる「家族性乳がん」の発症リスクが高い女性、と言うコトになると思う。
もちろん、「思う」だけではなく、「乳房切除」をするに当たって、「遺伝子検査」を実施しているはずだ。
A・ジョリーさんのこの話題直後、日本でも臨床試験として、いくつかの病院が「予防目的の乳房切除実施」が発表された。
タイミング的には、A。ジョリーさんの話題直後というコトで、この話題性で「乳癌学会」などが動いた様に思われがちだが、実は随分前から検討されてきたコトのようだ。

検討は随分前からされていたにも関わらず、臨床試験が行われなかった大きな理由の一つが「遺伝子検査後の対応」という点だった、と言う話を伺ったことがある。
日本だけではなく、米国でも「遺伝子に由来する病気」に関しては、必ず「カンセリングを受ける」というコトが必要だと言われている。
ところが、日本の場合この「遺伝子カウンセリング」ができる医師や医療関係者が、とても少ないのが現状なのだ。
実際、日本の医学部で「遺伝子カンセリング」を扱っている大学(正しくは、大学院)は、10校程度。資格取得者は140名程度、と言うのが現状で、カウンセリングを受けられる人というのは、僅かなのではないだろうか。
そう考えると、「羊水検査」によって陽性と判定された方の内、「遺伝子カンセリング」などをしっかり受けるコトができたのか?と言う疑問が湧いてくるのだ。

もう一つは、制度そのものが比較的新しい制度であるが故に、資格保有者の社会経験に不足も懸念している。
医師などに関しても言えるコトなのだが、医学部を卒業し医師免許を取得すれば「医師」となるコトができるのだが、臨床の現場では「学力」ではなく「コミュニケーション力」などが真っ先に問われる。
ところが社会経験などの少なさによって、患者の心を傷つけてしまうコトを言う医師も少なく無い。

「カウンセリング」という、患者の心にまで踏み込むコトを要する仕事であればこそ、コミュニケーション力などが必要だと思う。
そう考えると、「遺伝子カウンセラー」という分野に必要なコトは、医学的知識+αの能力が必要だと言うコトになる。
そこで提案をしたいのだが、様々な理由で医療の現場から離れている医師(例えば、子育てや介護などとの両立が難しいと感じて、復帰をしていない女性医師など)に積極的に、「カウンセリング講座」を受講してもらい、人材を確保する必要があるのではないだろうか?
むしろ、子育てや介護の経験が、大いにカウンセリングに役立つと思う。

「新型出生前診断」の実施は、今後広がっていくと思う。
であれば、判定前からキチンと「カウンセラー」によるアドバイスが受けられる体制づくりも、急務だと思う。