日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

文化と消費 セゾンが残したモノ

2013-11-29 05:59:15 | ビジネス

セゾングループを率いていた堤清二さんが亡くなられた。
堤さんと言えば、西武鉄道を率いていたお兄さんの堤義明さんのほうが、有名というか印象的な気がする。
しかし「セゾングループ」となると、また違う印象がある。
と言うのも「セゾングループ」そのものは、それまでの百貨店とは違うイメージ戦略で、小売市場を創ることに成功したからだ。
その一つが「パルコ」だったような気がする。

「パルコ」で、印象的だったのは糸井重里さんを起用した、「おいしい生活」や「不思議大好き」などのコピーやポスターだろう。
今の様にネットなどがない時代、ポスターやテレビCMは企業メッセージを伝える効果的な手段だった。
「パルコ」のポスターやテレビCMが印象的で、時代をリードした感があったのは、直接的な表現ではなく、受け手である生活者に「?!」という疑問符を付け、一人ひとりの受け止め方に幅を持たせたことのような気がしている。
言い換えれば、「パルコ(=買い物)を面白くするのは、お客様ですよ」と、問いかけをしていた様な気がするのだ。

その象徴といえるのが、1970年代~90年代にかけ、「パルコ」という異業種の小売が同居しながら、一つの「ファッションビル」として機能していた、という点だ。
「パルコ」は、小売をしているのではなく「生活を提案している」というアプローチは、それまでの百貨店では見られなかったし、同じファッションビル形態の「丸井」はファッションに特化するコトで、若者を引きつけていた。
確かに「パルコ」も顧客対象は若者だったと思うのだが、「マルイ」に比べるとファッション感度が高い人達を対象としていたように思う。

そして「セゾングループ」で忘れてはいけないのは、「パルコ劇場」や「セゾン美術館」だと思う。
それまで百貨店にある「美術品」はあくまでも商品であり、「美術館」では無かった。
それを「美術館」という形態にするコトで、「買い物次いでに美術品を鑑賞する」という「文化を売る」ことに成功したと思う。
名古屋でなら「パルコ」内にある「パルコギャラリー」で、買い物とギャラリーを楽しむと言うことだ。
実際「パルコギャラリー」で開催される展示は、挑戦的なモノも多く随分通った。
「パルコ劇場」にしても、「劇団四季」のような大公演を組むことができない小劇団にとっては、一つの登竜門となっていたし、実験的な演劇を上演するコトもできる場所だったように思う。

その意味で堤清二さんが創り出した「セゾングループ」は、「消費と文化」と言う一見相反するような部分を融合させることができた珍しい商業形態だったと思う。

そんな「セゾングループ」も、バブルが崩壊してからは衰退の一途・・・と言う感じだったような記憶がある。
もちろん今でも「パルコ劇場」では、様々な演劇が上演されているし、小売から切り離して「セゾン文化財団」と言う公益法人によって、文化支援を継続させている。
「文化を支援する小売業」というのは、「セゾン」が最初で最後となるのかも知れない。
何故なら、堤清二さんがペンネーム・辻井喬として作家や詩人という違う顔があったからこそ、と言う気がするからだ。