日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「待ち時間なし」はメリットだが、「暮らしの余白時間」が無くなるような気がする

2019-06-25 21:18:47 | ライフスタイル

日経新聞のWEBサイトを読んでいたら、スタバがアプリ事前決済を始める、という記事があった。
日経新聞:スタバ、アプリで事前決済 待ち時間なし、まず都内で

この記事を読んで、「スタバで、待ち時間から解放される!」と、喜んでいらっしゃる方はとても多いと思う。
この秋からは「飲食品の持ち帰り」は、店内で飲食をするよりも税金が安くなる「軽減税率」が始まる。
時間の無いサラリーパーソンにとっては、このような事前予約・事前決済による「待ち時間なし」というサービスは、願ってもないサービスだと思う。
思うのだが、「待ち時間なし」のサービスが提供されることで、失ってしまうものもあるのでは?という気もするのだ。

最近感じることなのだが、自分の思った通りにモノ・コトが進まないとイライラし、相手を攻撃するような言葉や態度を示す人が、増えているような気がする。
スタバの新サービスと同じにしてはいけないとは思うのだが、「自分の思い通りにモノ・コトが進む」などということは、社会の中ではほとんど無い、と実感している。

このスタバの新サービスにしても、受け取り場所までスムーズに行ける、という確約は無い。
諸般の事情により、遅れることもあるだろう。
場合によっては、気が変わり当初予定していた受け取り場所を変更したい、という人もいるかもしれない。
そのような場合、受け取り場所を気軽に、変更することなどはできないだろう。
このような場合、スタバに非はないのだが、自分のことを棚に上げて「なぜ、対応してくれないのか?お金は既にスタバに払っている」というクレームも起きるのでは?と、思ってしまうのだ。
それくらい、今の社会はどこか余裕が無いような(あるいは自己中心的な)人が、増えているように感じることがあるのだ。

そしてもう一つ感じることは、待ち時間が無くなった分の時間は、何に使うのか?ということだ。
ミュシュランガイドに掲載されるような星3ツの高級レストランなら、お料理がテーブルに運ばれるまでそれなりの時間が必要となるが、スタバやマクドナルドであれば、その時間は2、3分か、長くても5分程度だろう。
その時間を惜しんで、かわりに何をするのだろう?
スマホをいじる時間だろうか?

その待ち時間に、「新商品」の案内を見たり、キビキビを働くスタッフの動きを見ながら「スタバの魅力は何だろう?」と考えてみたりする時間にあてても良いのでは?
むしろそのような「待ち時間=余白時間」があることで、普段とは違う発見ができるかもしれない。

「忙しいの『忙』という漢字は、心を亡くす書きます。心を亡くすような仕事はしないように」というのは、私にマーケティングのご教示をくださった方から言われた言葉だ。
生活に余白となる時間は、自ら見つけなくては見つからない。
「待ち時間無し」というサービスは、確かに便利でメリットも高いサービスだと思う。
ただ「待ち時間」を有効につかう心の余白も失くしてしてしまっては、新しい視点も発想も生まれてこないのでは?と考えるのだ。