米国・ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人男性への頸部圧迫による死亡事件。
この事件をきっかけに、全米各地で黒人を中心としたデモが拡がっている。
デモに参加した人の中には、暴徒化し略奪行為を行ったりしているようだが、今回のデモを見ていてわずかながら、米国の社会変化を感じている。
米国における黒人への人種差別が、社会的にクローズアップされたのはおそらく50年以上前だろう。
「公民権運動」と呼ばれるものだ。
有名なところでは、キング牧師の「ワシントン大行進」だろうか?
この時の演説が「私には夢がある」という、あの有名な演説が行われている。
Huffpost:キング牧師「私には夢がある」演説から50年ワシントンで大行進【当時の演説全文】
この時のワシントン大行進では、黒人のみならず多くの白人も参加をし、米国社会の「人種差別」の意識を変えたかのように思われた。
しかし南部では変わらずアフリカ系黒人に対する差別はあり、有名な白人至上主義のグループといえば「KKK」と呼ばれる、白い三角帽子に白いマントを着た白人男性の一団だろう。
そして今でも「KKK」は存在し、南部ではそれなりの影響力を持ち続けている、といわれている。
それから半世紀以上たっても、米国内ではアフリカ系黒人に対する差別は変わらずあり、「公民権運動」が盛んだった1960年代の頃よりも米国白人の潜在意識の中に残っているのかもしれない。
それをよく表しているのが、このフロイドさんが殺される前に起きたある事件だ。
Huffpost:「犬をひもにつないで」と求めた黒人男性を、白人女性が警察に通報。「アフリカ系アメリカ人男性に脅されています」
この事件が起きたのは、ニューヨークのセントラルパーク。
犬を散歩させる時には、リードをつけるように決められている場所だ。
米国人にとってショックだったのは、ニューヨークというリベラルな地域でありながら、人種差別を堂々と行う若い女性がいた、ということだろう。
非があるのは、通報した女性側にあるのに「アフリカ系」というだけで、自分が被害者のようにふるまってしまっている、という点でアメリカにおける「人種差別」の根深さを改めて知ることとなった。
リベラルな地域とされるニューヨークですら、このようなことが起きるのだ。
ミネソタ州となれば、警官という職業であろうと「アフリカ系」というだけで、犯罪者であり排除すべき人という意識があるのは当然なのかもしれない。
「公民権運動」から50年以上たっても、同様の事件は起きている。
それも当たり前のように。
ただ今回これまでと大きく違うのは、企業がこの事件に対して抗議行動を起こしている、という点だろう。
Huffpost:『#BlackLivesMatter』企業も黒人差別に抗議、力強いメッセージ続く Netflix「私たちには声を上げる義務がある」
SNSが黒く染まる。拡がる「Black Out Tuesday」とは?黒人差別に抗議、米音楽業界で大規模なストライキ実施へ
それだけ米エンターテイメントの世界では、黒人の活躍が顕著であり、排除することができない存在になってきている、ということになるのだろうが、1960年代の「公民権運動」が起きた頃には、考えられなかったことだ。
日本にいると、このような事件や抗議は自分とは関係のない遠い国の話のように感じてしまう。
ただ、私たち日本人であっても様々な「差別意識」というモノを、潜在意識の中に埋めているということに気づくことが大切な気がする。