先週末、資生堂の150周年を記念するCMが話題になっていた。
資生堂:150周年企業広告「美しさとは、人のしあわせを願うこと」(60秒篇)
おそらく化粧品会社として、創業150年を迎える企業は世界的にも珍しいのでは?という気がしている。
それほど長い間、日本人に愛されてきた化粧品会社としての誇り、のようなものを感じられるCMでもある。
それは創業当時の風景に始まり、時代と共に変化していく女性たちの姿を見つめてきた、という誇りでもあるかもしれない。
時代別のヘアスタイルやメイクの変遷を見せてくれる、Vougeのサイトがある。
Vouge Japan:アイメイク、100年の歴史
アイメイクに特化した内容ではあるが、化粧自体がその時々の時代感の中で変化し、女性の生き方にも影響されている、ということがわかる。
資生堂の150年という時間は、女性の生き方の変化の時間でもあるのだ。
それを「化粧品」というツールによって、サポートをし応援してきた企業である、という自信と誇りというものを感じれる、ということなのだ。
実はこのような150周年に向けた動きは、今年のお正月広告から始まっていたような気がしている。
気づかれた方もいらっしゃると思うのだが、今年資生堂は1月1日にお正月広告を掲載していなかった。
1年間で一番厚い新聞を繰りながら、「今年は資生堂の広告がないな~」と思いながら眺めていた。
そして数日後、資生堂が年明けの広告を出したのだ。
それが、開店当時の写真につけられた「1872年。東京・銀座に洋風調剤薬局として資生堂は誕生しました。」というコピーの広告だった。
資生堂:150周年スペシャル企業サイト
資生堂が調剤薬局としてスタートしている、ということを知らない方にとっては「そうなんだ~」と、意外性な印象を持たれたかもしれないが、「薬」という視点の中に「健康」というキーワードを見つけるだけではなく、「美しさ」という発想まで転換することができたことが、資生堂の企業としての強みのような気がする。
そして昨年、不採算事業とは思えない「トイレタリー(=洗面所やバスルームで使う商品)」を、売却したのは、もしかしたらこの150周年という時間の中で、資生堂が本来目指すべきところは何か?と考えての決断だったのかもしれない。
というのも1960年代までの資生堂は、スキンケア商品といっても比較的高い価格帯が中心で、この150周年のCMにも登場する「オイデルミン」という化粧水が資生堂が初めて手掛けた化粧品だった。
「西洋薬学に基づくスキンケア」という視点で考えると、低価格帯のスキンケア商品を切り離し、薬学的スキンケアという特化することで「美しさ」という「しあわせ」の表現をしていきたい、という企業メッセージだったのでは?と、今更ながら気づかされる。
それだけではなく、資生堂にとって一大転機となったのは、「太陽に愛されよう」という杉山登志さんのコピーと共に登場した、前田美波里さんだったのではないだろうか?
当時10代で、溌溂とした前田さんの登場は「日本の女性も行動的になろうよ」という、メッセージが込められていたように思う。
事実この後から、日本女性の美の価値観が変わった、といわれている(もちろん、同じころ公開された映画「007は二度死ぬ」に出演されていた浜美枝さんの活躍も忘れてはならないだろう)。
そのように考えると、資生堂という企業ほど「女性のライフスタイルの変化」に影響を与え、変化し続けてきた企業は無いかもしれない。
そして「女性」という言葉が無くなったのも、時代の変化に合わせてのメッセージのような気がしている(事実、CMにはジェンダーレスのモデルが登場している)。