日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

選択肢が増えると後悔も増える

2022-01-24 11:35:59 | マーケティング

今朝、FMを聞きながら朝の支度をしていたら、ちょっと気になる話題があった。
「人は選択肢が増えると、後悔も増える」という話だった。
この研究そのものは、新しいものではなく随分前から言われてきたことだ。
有名なところでは、コロンビア・ビジネススクールのアイエンガー教授の研究だろう。
文芸春秋Book:「コロンビア大学ビジネススクール特別講義 選択の科学」

考えてみると、高度成長期の頃は企業が出す製品は、ほぼ似たり寄ったりで生活者の選択基準は、製品を作っているメーカーに対する信頼度だったような気がする。
例えば家電などは、一つのメーカーの製品で揃えられていた、というご家庭は多かったはずだ。
選択肢といっても「テレビ」という選択肢ではなく、「〇〇メーカーのテレビ」だった。
当然その選択の幅はほとんどなく、逆に言えば生活者は迷うことがなかった。

バブル経済の前後から盛んにマーケティングの世界で言われるようになったのが、「十人十色の時代から一人十色への変化」ということだった。
「一人の顧客の中に多様な価値観が生まれ、選択の幅も広がっている」ということを指した、言葉だった。
この言葉に合わせるように、メーカーだけではなく様々なサービス業なども「わずかな違いがある多様なモノ・サービス」を用意するようになった。
「多品種・少生産=顧客満足度を上げる」という考えだ。
ところが、生活者側からすれば「違いが判らない似たり寄ったりのモノ・サービスがたくさんあって、選ぶことができない」という時代になった、ということでもある。
そこで小売りやサービス業では「コンシェルジュ」と呼ばれる、「お客様にご提案をする人」を駐在させ、より高い顧客満足を提供しようということになったのだ。

それはモノをつくる側にとって、コスト負担をかけることにもつながっていった、ということにもなる。
にも拘わらず、日本の企業の多くはこの「多品種・少生産」の呪縛から、逃れることができなかったように思う。
例えば、今朝のFM番組で話されていたスーパーの「お惣菜」。
大手スーパーは、年間200種類近くの「お惣菜」を販売している、という。
もちろん、「季節限定お惣菜」というものもあると思う。
ただ、実際近所の大手系のスーパーでは「鳥のから揚げ」だけでも、3,4種類用意されている。
味付けが醤油・塩だけではなく、味付けが微妙に違うラインナップなのだ。
冬場はコッテリ系、夏場はあっさり系という分け方ではなく、オールシーズン用意されている。
それが、すべて完売するのであればよいのだが、売れ残った場合「廃棄処分」ということになってしまう。
今何かと話題というか推進されている「SDGs」の事を考えれば、「食品ロス」という問題を抱えながら販売をしている、ということにもなるはずだ。

それは上述した「選択肢がありすぎて、選べない」という生活者の姿とも重なることになる。
スーパーであれば、売り場のレイアウトの工夫によって、ある程度解決できるかもしれない。
例えば、「購入目的別」という売り場のレイアウトだ。
同じ売り場でも「ダイエット応援コーナー」のような区分があれば、「糖質を少なくした商品の中から選ぶ」ことになり、それだけ選択の幅は狭くなる。
そのような工夫が、「後悔をさせない買い物の提案」という時代になってきているのではないだろうか?



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