北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛装備庁-12式地対艦誘導弾射程延伸型初の発射試験実施を発表,離島防衛の根本を変える装備

2024-12-10 07:00:48 | 先端軍事テクノロジー
■試験は東京都内で実施
 射程1000km級の地対艦ミサイル開発が漸く終盤となる発射試験までたどり着きました。

 12式地対艦誘導弾射程延伸型の発射試験が10月から11月にかけ防衛装備庁の東京都にある新島試験所において実施されたとのことです。今回の試験は地対艦型と艦対艦型が地上発射装置から試験され、所要の性能を満たしたとされています。日本国内の報道機関ではそれほど大きく扱われませんでしたが、従来の自衛隊地対艦ミサイルと比し、長射程だ。

 射程延伸型、という名称ではありますが、発射装置は4連型までとなっており、現在の6連装型と比較しミサイル本体が大きくなり、また形状も大きく変容しています。この背景には射程が現在の200km前後から1000kmと大きく延伸し、防衛装備庁は射程の詳細を公表していませんが自衛隊は最終的に2200kmから2500kmまで射程を延伸させるかまえ。

 反撃能力整備の一環とされる装備開発ですが、同時に射程を大きくすることで、南西防衛における地対艦ミサイル配置にも大きな影響を及ぼす可能性があります、それは射程の延伸により離島に直接配備せずとも、離島防衛を、例えば九州から直接日本の離島に迫る脅威を排除できるようになるかもしれない、という運用の冗長性の確保、という視点です。

 南西防衛では、現在、離島には警備隊と地対空ミサイル中隊及び地対艦ミサイル中隊という、アメリカの海兵沿岸連隊が参考にしたのではないかというくらいの編成の部隊を駐屯させていますが、強力な装備である一方、地対艦ミサイルそのものが中国軍の攻撃目標になるのではないかという懸念を持つ住民不安が、少なからず存在することは否めません。

 上陸させない為の防備であれば、韓国軍は離島に自走榴弾砲を配備しているように自衛隊も99式自走榴弾砲を配備すれば上がらせませんし、スウェーデンのゴトランド島警備の主役はレオパルト2戦車となっていますので、多少非合理でも戦車を小隊規模で分散配置し、荒天時に漁業補償を行いつつ海上へ射げき訓練を行うという選択肢もある筈です。

 九州から南西諸島全域に届く装備の開発という意義は、離島地域の生活に有事の際、影響を及ぼさない体制というものを示すものです。ただ、現在のロシアウクライナ戦争を観た場合、ミサイルの所要数は相当多く成る事も現実であり、可能ならば一万発近いミサイル、最低でも六千発程度は、この種のミサイルを揃えなければならない課題があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】国際航空宇宙展2024,三菱重工CCA無人戦闘機構想とGCAP次期戦闘機,Fixed-Wing-VTOL-UAV

2024-12-03 20:11:00 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は少し間が開きましたが2024国際航空宇宙展の続報について。

 イギリスと日本及びイタリアが開発中のGCAP次期戦闘機について、2024国際航空宇宙展にその十分の一規模の模型が公開されました。GCAPグローバル航空戦闘プログラムは航空自衛隊のF-2戦闘機後継機を模索するとともに、イギリスとイタリアのユーロファイター2000タイフーン戦闘機の後継機を開発するものです。

 GCAP次期戦闘機について、三菱重工とBAEシステムズ社およびレオナルド社が参加していますが、今回公開されたものは十分の一水準の模型であり、実物大モックアップを展示できる状況ではない事が一つの象徴的出来事であるのかもしれません。事実、2024年7月にはイギリスのスターマー新政権が計画参加を見直す可能性を示唆しました。

 モックアップは、実際、イギリスは独自開発を模索していた時代、テンペスト戦闘機の実物大モックアップを早々に公開しています。イギリスはサウジアラビアの開発参加を示唆している一方、第三国輸出に消極的な日本の方針があり、具体的な機体形状をモックアップで示すことができないという現状を示唆しているのかもしれません。■

 三菱重工はCCA無人戦闘機構想を発表しました。これは東京ビッグサイトで開催されました国際航空宇宙展において模型とともにその運用の方向性を示すCG画像が公開されたもの。機体形状はいわゆる滞空型無人機ではなくステルス性に配慮したもので、ボーイングオーストラリアが開発したロイヤルウィングマン無人僚機をおもわせるもの。

 CCA無人戦闘機の運用として、有人戦闘機からの指示を受けミサイルを発射する、という運用が示されていました。これはステルス戦闘機がミサイルを発射する際、ウェポンベイを解放した瞬間にRCSレーダー反射面積が顕著に増大し敵対勢力に発見される懸念があったものを、管制は有人戦闘機、危険な発射は無人機、と任務を分けた構図といえる。

 CCAは一種の無人僚機として運用されるようですが、三菱重工が展示した模型ではエンジン部分に推力偏向用のコンダイノズルが設置されている様子が確認されることから、一直線に飛行するのでは無くある程度有人戦闘機に随伴することを想定した機動力が付与されることが前提とされ、日本版MQ-28ゴーストバットを目指す機体といえるでしょう。■

 日本飛行機は自衛隊V-BAT無人機導入を支援するもよう。東京ビッグサイトにおいて行われました国際航空宇宙展2024では航空機部品製造や航空機定期整備を担当する日本飛行機が、アメリカのシールドAI社が開発したV-BAT垂直離着陸型無人機の運用支援、予備部品製造やシステム維持と教育支援などの面で自衛隊に役務を提供出来ることを示した。

 V-BATはテイルシッター型VTOL無人機といわれ、全幅の大きな主翼を有するもののロケットのように発着は垂直に倒立して行うといい、これによりVTOL型無人機の課題であった滞空時間の短さを主翼により大きく解消するとともに、カタパルトのような発着装置を必要とせず、20分程度で発進準備が可能となる利点、自衛隊では艦上試験も行われている。

 V-BATの性能は巡航速度98.2km/hで滞空時間は10時間、全備重量は56.7kgで11.3kgまでの各種センサー搭載能力があり、テリリウム社製赤外線センサーやホダッチ社製複合光学装置、IMSAR社製NSP-3合成開口レーダ装置、またシールドAI社が開発中のAIシステムを搭載することで自律飛行などが可能になるもよう。■

 三菱重工は二機種のFixed-Wing-VTOL-UAVを発表しました。東京ビッグサイトにて開催された国際航空宇宙展2024の会場においてモックアップを公開、大型機と小型機を発表しています。興味深いのは大型機も小型機も航続距離と巡航速度が同じという点で、航続距離1000km、巡航速度100km/hにより移動することが可能となっています。

 機体形状は胴体後部に推進装置を搭載し逆V型尾翼構造を採用、一見バイラクタルTB-2の後部形状を彷彿とさせるものですが、この逆V型尾翼構造の桁部分に垂直離着陸用の補助ローターを設置しており、狭隘地域での発着が可能という。小型VTOL-UAVについては既に名鉄海上観光船を利用した後部特設甲板への発着試験に成功しています。

 名鉄海上観光船への発着は、発着地にQRコードを描いた発着パッドを無人機が認識して自動着陸するというもの。なお、航続距離も巡航速度も同じ大型機と小型機ですが、相違点はペイロードで、小型機にはペイロード5kg、大型機のペイロードは20kgとなっています、これは輸送能力の多寡というよりも搭載センサーというべきなのでしょう。

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【防衛情報】防衛装備庁技術シンポジウム,FTB無人実証機研究試作2025年11月初飛行予定とHPM電磁波装備早期実用化

2024-12-02 20:08:53 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 防衛装備庁技術シンポジウムの話題を。

 防衛装備庁はAI搭載FTB無人実証機の研究試作を推進中である、これは防衛装備庁が開催した防衛装備庁技術シンポジウムにおいて発表されたもので、三菱重工が主契約企業として2025年末の初飛行を目指し開発しているとのこと。この無人機は2022年より防衛装備庁が、無人機へのAI搭載技術の研究試作、としてすすめられていたもの。

 FTB無人実証機は、戦闘型と偵察型を開発していると好い、防衛装備庁技術シンポジウムにおいてはイメージ図が公開、双発型でエンジンはフェアチャイルド社製A-10攻撃機のように胴体上部に離隔して二基のエンジンをそのまま搭載している構図、戦闘型と偵察型は胴体部分とエンジン部分を共通モジュールとして開発し共用するという。

 防衛装備庁が発表したイメージ図には、FSX初号機のような白地に赤色の試作機塗装を採用している。主翼部分と尾翼部分をモジュール化しており、双方の取り替えも可能、具体的には偵察型については主翼を大きくとり、滞空時間を延伸、戦闘型については機動性を重視する、ただ、管制システムを司るAI人工知能については双方ともに共通させる。■

 防衛装備庁のAI搭載FTB無人実証機について。防衛装備庁によれば全長については3mを超える程度、戦闘型は全幅が2m、偵察型は全幅が3mを超える程度、これはTACOM多用途小型無人機が全長5.2mと全幅2.5mであったことと比較するとかなり小型となっていて、TACOMのように戦闘機などに搭載し長距離を進出するのかについては不明です。

 戦闘型と偵察型は、ともに機首部分にEO/IR電子光学/赤外線センサーを搭載し、偵察型についてはSAR合成開口レーダーを搭載することも視野に開発を進めているという。令和六年現在の開発状況は細部設計段階、令和七年度にはFTB無人機製造と管制装置の製造を行い、11月には初飛行を予定、続いて機能確認を令和七年内に行うという。

 飛行試験が所内試験として令和八年から令和九年に掛け実施される。三菱重工は戦闘支援無人機を国際航空宇宙展において模型として展示させていますが、防衛装備庁技術シンポジウムにおいて公開されたイメージ図とは形状が大きく異なる。防衛装備庁はAI自立型無人機としてアメリカでF-16を無人化したX-62Aなどの事例を併せて紹介しました。■

 防衛装備庁防衛技術シンポジウムにおいて、防衛装備庁が開発を進めている無人機迎撃用HPM電磁波装備の開発状況が発表されました。現在は管制装置および空中線装置と運搬車の研究施策が令和8年までの計画で進められています。無人機への対策は攻撃手段だけでは無くISR情報収集警戒監視偵察任務に用いられ、情報優位を脅かします。

 ロシアウクライナ戦争ではウクライナ軍がブコベルAD電子妨害装置や同志国から供与されたアメリカのIXI-EW社製ドローンキラー、リトアニアのNTサービス社製EDM4Sなどが使用されており、またロシア軍もR-330BMV電子妨害装置やR-330Zhジテリ電子妨害装置が使用されていますが、これらは管制用電波を妨害する電子妨害装置となっている。

 自衛隊も導入を検討するイスラエルIAI社製ハロップ徘徊式弾薬などはレーダーなどを逆探知する自爆用務神亀となっていて、この種の航空機は管制電波を妨害するだけでは阻止できない、こうした背景から防衛装備庁ではHPM電磁波を利用した対無人機システムの開発を進めているとのこと。最終的には単一車両の自己完結化を目指している。■

 防衛装備庁はHPM電磁波装備の早期実用化を目指している、防衛装備庁技術シンポジウムでは、近年、自爆型無人機の広範な使用が脅威となっている現状を紹介し、電磁波装備、高出力マイクロ波による迎撃能力の開発を急いでいます、具体的には令和4年から研究を進め、また令和6年からは無人機にHPM発生装置を搭載する技術研究を進めている。

 計画では車両搭載HPM研究は令和9年までに完了し、令和10年よりHPM車両搭載型の開発を実施、令和13年までに完成させる見通しであり、またドローン搭載HPM発生装置も技術研究を令和10年までに完了し、令和11年よりドローン搭載HPM技術の実証に進むという。現在は、複数のHPM発射装置と電源車及び管制装置を地上展開させる構想です。

車両搭載HPMは重要施設防護を念頭としていて、HPM発射装置は牽引式のものと車載型と複数の発射装置を開発、発射には電力のみで対応できるために低コストであるとともに弾薬補給の必要が無いということ、また光速で瞬時に制圧できるという。ドローン搭載HPM装置は近距離用で地上配置式との併用を想定しているとされています。

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ようこう,艦名は“ようこう”広島県尾道市内海造船にて建造の中型船舶1番艦進水式挙行

2024-11-29 07:01:26 | 先端軍事テクノロジー
■ようこう-基準排水量3500t
 写真については流石に広島は遠かったものですから輸送艦のと型で代用しているものですが最新の話題を。

 陸上自衛隊は昨日、広島県尾道市の内海造船において建造されていた中型船舶の1番艦進水式を挙行しました。艦名は“ようこう”、陽光を意味する艦名と思われます。先行して進水式を迎えていた小型船舶の1番艦は、にほんばれ、という過去にない艦名であったことから、中型船舶の艦名に関心が集まっていましたが、ようこう、まあ、軟着陸か。

 ようこう、基準排水量3500tとなっていて、陸上自衛隊が運用する艦艇ではありますが、海上自衛隊が過去保有した輸送艦と比較した場合、初代おおすみ型、あつみ型、みうら型よりも遥かに大きく、あつみ型の倍以上、カンボジアPKOなど海外派遣に活躍した輸送艦みうら型で基準排水量2000tですので、現行おおすみ型の8900tに次ぐ大型艦となる。

 2027年までに、ようこう型輸送艦2隻、にほんばれ型輸送艦3隻、そして更に小型舟艇4隻を就役させる方式です。陸上自衛隊は戦車など重戦力の主力を北海道に配備し、しかし南西有事などの事態に際しては北海道から機動展開させる方針でしたが、戦車は狭軌貨物列車では輸送不可能で新幹線貨物輸送は未整備であり、その為の輸送手段が課題でした。

 にほんばれ型輸送艦、ようこう型輸送艦、これまでの海上自衛隊輸送艦と比較した場合でも小型ではありませんが、根本から任務が異なります、それは輸送艦おおすみ型などは有事の際に戦闘地域へ輸送する作戦輸送を想定し、武装やデータリンク装置と指揮通信能力や電子戦能力を相応に有しているのに対し、陸上自衛隊の輸送艦は主任務が単なる輸送だ。

 陸上自衛隊輸送艦は、艦首部分に観音扉を有していますが、これらも海上自衛隊輸送艦のようなビーチング、海岸に直接揚陸する為のものではなく、あくまでカーフェリーのように港湾施設における揚陸を行うためのものです。海上自衛隊では戦闘を伴う作戦輸送と平時における輸送を業務輸送と分けていますが、この場合は高射に当るといえるでしょう。

 ただ、世界では有事の際の外交的協力、同志国を増やすべく、陸軍訓練を強化しています。現在フランスとカタールが訓練中ですし、インドもオーストラリアや東南アジア諸国との訓練、韓国は先日戦車を史上初めて中東に派遣しました。日本の輸送艦も、もう少し大型の全通飛行甲板型輸送艦を導入し、こうした用途に充てることも検討すべきでしょう。

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【榛名備防録】レバノン邦人退避支援ヨルダンC-2待機終了,その負担の大きさと求められる新国産輸送機

2024-11-27 07:01:41 | 先端軍事テクノロジー
■C-130R輸送機後継機
 C-130H後継機ではなくC-130R輸送機の後継機という変則的な視点になるのですが今回はこの話題を。

 航空自衛隊のC-2輸送機を補完する輸送機が必要ではないか、具体的には海上自衛隊のC-130R輸送機の後継機として使いやすい規模の輸送機があれば、例えば邦人救出における救出対象者が数百名ではなく十数名から数十名程度の場合や、海外派遣などの部隊に対する交代要員の輸送と物資輸送など、大型の輸送機を使う必要が無い状況で用いるもの。

 U-4多用途機を増強するとか、あまり難しいことは考えずC-2輸送機を派遣してしまう選択肢、もちろんKC-46A空中給油機など今後人員輸送機としても運用可能である空中給油機が増強されるのだから、そうした選択肢そのものを必要と考えることがナンセンス、と思われるかもしれません。ただ、輸送機が現状足りているのかという疑問符はあります。

 政府はレバノン情勢を受けヨルダンへ前方展開させていたC-2輸送機の撤収を決定、11月26日に撤収しました。たった1機ですが、情勢が急変した場合には即応できる、という意味で重要な選択肢でした。しかし、交代機の準備などを考えれば、レバノンに常駐させるだけでも現在の航空自衛隊輸送機定数を考えれば大きな負担だったことは想像に難くない。

 P-1哨戒機の派生型として人員輸送機を開発できないか。これはP-1哨戒機として計画だけ提示され実現しなかった人員輸送型のようなものではなく、P-1哨戒機の特性を考えて、です。基本運用重量は79.7t、C-2輸送機の基本運用重量が120tですので、C-2とP-1は共通部品を用いた姉妹機とはいわれるものの、機体規模はP-1がかなり小型となっている。

 P-1哨戒機の輸送機型、C-1輸送機といってしまうとなにか別の機体を、メーカーは同じだけれども勘違いさせてしまいそうで、P-1Cとでもいうべきでしょうか、P-3Cと似ている感じになってしまうのはさておき、P-1哨戒機は兵装搭載量が9tとC-1輸送機の間持つ輸送量よりも大きなものがありますし、なにより胴体構造が通常の旅客機とは違う。

 ソノブイベイ、P-1哨戒機の胴体下部にはソノブイベイが配置され、ここはもともと機内の与圧区画と連接しているのですね、ここにエアステア型タラップ、ボーイング727旅客機に採用されていた引き込み式の搭乗用タラップを組み込めば、戦術輸送機のように装甲車を載せるわけにはいきませんが、人員輸送は勿論、貨物輸送などに利便性が高まります。

 C-130R輸送機、海上自衛隊が導入に際して最小限度の予算で導入したために、維持運用に難渋しているという輸送機ですが、その後継機に、このP-1Cというべき機体は使えるのではないか、なによりP-1哨戒機の整備治具がそのまま使えますし、操縦資格も同じ。またタラップは特別な設計変更が不要ですし、既存の生産ラインをそのまま応用できる。

 P-3C哨戒機がP-1ともども下総航空基地では練習機として用いられていますが、今後のP-3C哨戒機の運用を考えれば、P-1Cというものを開発しておくならば輸送機のほかに練習機として使える、機体に実物のレーダ装置を組み込まずともASWシミュレータを搭載することで戦術航法士の訓練に応用できます。航続距離8000㎞、巡航速度マッハ0.75、性能はまずまず。

 ジブチ航空拠点を維持している海上自衛隊には日常的に物資輸送を行う必要があり、航続距離に余裕がある輸送機には一定の需要があるはずで、まずなによりP-1哨戒機の製造が継続されているのですから。そして防衛省は電子情報収集機などにP-1の派生型を開発する方針です、するとP-1Cという派生型が一つ増えてもいいのでは、と思うのですね。

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【防衛情報】防衛装備庁技術シンポジウム,無人機搭載早期警戒機システムと島嶼部防衛用新対艦誘導弾マルチプラットフォーム化

2024-11-26 20:17:08 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 防衛装備庁技術シンポジウムの話題を今回も紹介しましょう。

 防衛装備庁は無人機搭載早期警戒機システムを研究中である、これは防衛装備庁が主催した防衛技術シンポジウムにおいて発表されたもので、センシングシステム研究室が主導、具体的には護衛艦などに搭載する無人機へ装備し、護衛艦のセンサーでは見通し線外にある脅威に対して、母艦から前方へ進出し警戒管制に充てるという。

 小型無人回転翼航空機への搭載を想定し、シースキミング巡航ミサイルや小型無人機、ミサイルや無人航空機の発射プラットフォームなどを警戒監視することは狙い。運用では小型無人機の機首部分に搭載し、護衛艦など母艦から50km程度まえに前進させる、AI人工知能を用いた信号処理をおこない、レーダー情報は無人機が解析することを目指す。

 技術的課題としては、想定では5mから7m級の無人機を想定している上で、この規模の航空機には搭載制約が厳しくシステムの小型化が必要である点、運用でもルックダウン方式のレーダー索敵では大量のシークラッターが発生するためクラッター抑圧処理能力の高性能化が必要、そして無人機が小型であるため探知能力の強化が必要であるとしている。■

 ドローン搭載HPM技術について。防衛装備庁は防衛装備庁技術シンポジウムにおいて、現在開発している高出力マイクロ波による無人機迎撃装置を将来的に小型無人機へ搭載する技術開発の状況を発表しました。これによれば、実用化は令和11年度以降を目指していると好い、そのためのHPM照射装置性能向上が令和6年より開始されているとのこと。

 HPM照射装置の性能向上は、小型化軽量化が課題で有り、このために新たなHPM発生方式の検討、その上で将来的な技術可能性検討をすすめ、これらに依拠して、ドローンに搭載することが可能かと謂う点、そして管制技術の研究、その上でドローン対処能力の実証研究段階に進むとのこと。基本となるHPM技術は既に構築されていることを示す。

 無人機はロシアウクライナ戦争において多用されているものの、短期間で対抗技術が開発されるため、数年単位で備蓄したとしても数年後には陳腐化して使えないという課題が有り、逆の視点から考えれば高出力マイクロ波照射装置は、搭載する無人機ではなく、その対処能力を短期間では陳腐化させないもので固める、ねらいがあるのでしょう。■

 島嶼部防衛用新対艦誘導弾について、防衛装備庁は技術シンポジウムにおいてその概要を解説しました。これは従来の対艦誘導弾では超音速飛行により敵対勢力の艦艇に対して迎撃能力を突破する、超音速飛行を用いて相手の対処能力に時間的制約を加えることが目的であるとされていましたが、技術発展により阻止される可能性が出てきていた。

 ステルス化と高機動化、そして射程延伸がこの解決策として模索されているもよう。ステルス設計についてはこの種のミサイルとしてはコングスベルク社がJSMミサイルとして低RCS構造を採用し既に各国に採用されている点が特筆されますが、島しょ部防衛新対艦誘導弾についてもエッジマネージメント技術や曲がりダクト構造を採用しステルス化へ。

 RCS模型によるレーダー反射面積計測も既に実施されており、継ぎ目や突起物を省くとともに探知されにくいミサイルを開発するという。また機動性については、BANK-TO-TURN技術により近接防空火器や艦対空ミサイルの脅威がある距離においては不規則機動を、敵早期警戒機の覆域内においては欺瞞機動をとることで生存性を高めるといいます。■

 島嶼部防衛用新対艦誘導弾はマルチプラットフォーム化をすすめる。防衛装備庁は防衛技術シンポジウムにおいて、開発が進められている島嶼部防衛用新対艦誘導弾は、地上発射型にくわえて、航空機、これも哨戒機や戦闘機からの発射型に加えて、護衛艦などから、等からと謂うのが重要、海上発射する方式を開発しているとされています。

 地対艦誘導弾として、島しょ部防衛という用途から地上発射型が重視されているこれまでの開発に加えて、必ずしも島嶼部だけの運用に限らないマルチプラットフォーム化を明示したと謂うことは重要です。ただ、海上発射型については、海上と明示されているということは、現段階では潜水艦への搭載は念頭としていない、ということでしょうか。

 海上プラットフォームは、護衛艦のイメージ写真が採用されていましたが、防衛装備庁は今後海上自衛隊が導入する哨戒艦への武装モジュール搭載にかんする研究も並行しているため。射程の長い島しょ部防衛用新対艦誘導弾を哨戒艦へも搭載し、有事の際に安全な後方から哨戒艦による長距離打撃の一端を担わせる構想もあるのかもしれません。

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ウクライナ情勢-ドニプロ攻撃未確認弾道弾”オレシュニク”は2011年開発のRS-26ルベシュ大陸間弾道弾改良型か

2024-11-26 07:00:03 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 1979年東京サミットにおいて西欧地域を直接攻撃できる新兵器として議題となったSS-20ミサイルというものがありましたが。

 ロシア軍が°ドニプロ攻撃に用いたミサイルはRS-26ルベシュ弾道弾改良型か、ISWアメリカ戦争研究11月21日付ウクライナ戦況報告によれば、プーチン大統領はこのミサイル攻撃を新型のオレシュニク弾道弾による攻撃と発言しました、そしてこれの使用はATACMS陸軍戦術ロケット弾によるロシア本土攻撃への報復であるとも発言しています。

 オレシュニク弾道弾はRS-26大陸間弾道弾の派生型であったと分析されていますが、RS-26そのものではありません、何故ならばRS-26に通常弾頭型は開発されておらず、核弾頭かアバンガルド極超音速滑空兵器を暖冬として装備するのみ、後者については通常弾頭型が開発されていますが、今回の着弾映像を見る限り極超音速滑空兵器の特性ではありません。

 RS-26ルベシュはNATOコードネームSS-X-31,モスクワ熱技術研究所により2011年に開発されたミサイルで、射程から一応は大陸間弾道弾に区分されるものです。一応、と明示したのはRS-26が開発された当時は米ロ間においてINF中距離核戦力禁止条約があり、これは射程500kmから5500kmまでの地上発射型ミサイルの開発を禁止するものでした。

 ロシア側はRS-26の射程は5800kmであり、INF全廃条約には違反していないと主張しています、が、RS-26の射撃試験について最初の二回は射程2000kmで試験されており、NATOはじめ、これは事実上、INF禁止条約の範囲内の装備を射程でじゃっかん上回るとして開発しているだけではないかという疑義を招くこととなっています。

 SS-20中距離弾道弾の後継装備ではないか、SS-20は日本でも首相がG7サミットで知らなかったとして政治問題化した中距離弾道弾、ソ連側正式名称RSD-10パイオニアの後継装備とも考えられています、このSS-22の射程は5800kmで1976年から配備されていますが、1987年のINF全廃条約を受けソ連では退役、第三国立会いの下、無力化されている。

 RS-26は射程からSS-20の後継装備に当ると目されていたのは前述の通りですが、2011年当時はまだINF全廃条約が機能していた為、欧米の批判を受け当時のロシア政府は模擬弾頭による試験を終了後、量産や配備にすすめていません。ただ、RS-26派生のミサイルであれば、ロシアウクライナ戦争はICBMが実戦使用された人類史上初の戦争となります。

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【防衛情報】韓国ポーランド輸出FA-50PL初号機組立状況とFA-50GF戦闘機能力向上オプション契約

2024-11-25 20:11:46 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今週も似たような写真を選ぶ時間が足りない程に多忙ですので岐阜基地航空祭の国産機写真とともにガンバている勧告を眺めつつ。

 韓国がポーランドへ輸出するFA-50PL初号機の組立状況について、KAI韓国航空宇宙産業がその概況を発表しました。10月初旬の時点で機体部分は複合素材の塗装までは至っていませんが、胴体部分と電装品の搭載はほぼ完了し、主翼を取り付ける前の段階まで進んでいて、組み立ては完了目前の状態といえる。ポーランドは36機を取得する。

 FA-50PL初号機、その機体番号は5013/001という。原型となるFA-50block20はFA-50block10がイスラエルエルタ社製EL/M-2032レーダーを搭載、これはもともと1980年代に後の未成機イスラエル国産のラビ戦闘機用に開発したもので、インドのテジャス戦闘機やトルコのF-4戦闘機近代化改修F-4E2020ターミネーターに搭載されたもの。

 block20にはこれより強力なレイセオンインテリジェンスアンドスペース社製ファントムストライクAESAレーダーが搭載され、これは小型ではあるもののメーカーによればF-16V戦闘機が搭載するAPG-83に部分的に匹敵する性能を持つとし、JSMミサイルやKEPD 350K-2、天竜ALCMミサイルやAMRAAMが運用可能となっています。■

 ポーランド空軍のFA-50GF戦闘機能力向上について、韓国防衛事業庁はオプション契約によりFA-50PL戦闘機水準まで改修する事は可能であると発表しました。FA-50GFはイスラエルエルタ社製EL/M-2032レーダー、FA-50PLはレイセオンインテリジェンスアンドスペース社製ファントムストライクAESAレーダーとレーダーから違います。

 ただ、EL/M-2032レーダーを搭載するFA-50GFはFA-50block10相当の機体であり、ファントムストライクAESAレーダー搭載型のFA-50block20は2025年完成予定、現在韓国が各国へ販売している機種はblock10となります。この機種を改良することによりAMRAAMの搭載が可能となるのであれば、販路はさらに開ける事でしょう。

 FA-50戦闘機は改良を積み重ねることでAMRAAMの運用能力を持ち、航続距離はF-16戦闘機などと比べかなり短いものとなっていますが、局地戦闘機のように中小国が大国の第4.5世代戦闘機の脅威にさらされた場合の有用な自衛手段となるとともに、その取得費用をかなり抑えているという点から注目すべき戦闘機と言えるでしょう。■

 韓国国防省はAH-64E追加調達の中止を検討中とのこと。これは国防相が10月18日に発表したもので、現在韓国陸軍は36機のAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターを運用していますが、この追加調達としてアパッチガーディアンを更に36機調達する4兆7000億ウォン規模のオプション契約を再検討するかたち。

 AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターの再検討は36機の追加調達を部分的に見直すか、完全に白紙撤回するかを含めて検討中とのこと。この背景には第一次契約の時点で441億ウォンであったアパッチガーディアンが再検討の時点では733億ウォンに取得費用が高騰し、戦闘ヘリコプターそのものの有用性にも疑義が生じたため。

 戦闘ヘリコプターの有用性については、ロシアウクライナ戦争においてロシア軍戦闘ヘリコプターがウクライナ軍に対して有用に機能を果たせていないという評価もあるもよう。ただ、2023年ウクライナ軍夏季反転攻勢を阻止したのはロシア軍戦闘ヘリコプターによる戦力集中であり、ロシア軍の運用稚拙もありその判断は尚早にも思えます。■

 韓国のKAI韓国航空宇宙産業はサーブ社との間でグローバルアイ早期警戒機に関する提携を結びました。韓国空軍は既にE-7早期警戒機を運用中です、この機体はボーイング737の機体を原型としてカヌー型AESAレーダーアンテナを搭載した大型の機体となっていますが、サーブ社のグローバルアイはビジネスジェットを原型とした機体です。

 KAI韓国航空宇宙産業はこのグローバルアイ早期警戒機の韓国空軍採用を後押しするとともに、サーブ社と共に売り込みを強化、また韓国空軍での採用が実現した場合には定期整備などの運用基盤構築と共にサーブ社からの技術移転も実施するという。E-7の導入は各国空軍では第一次航空統制機整備事業という位置づけ、これにつづくかたち。

 グローバルアイは比較的小型の航空機で、その分は管制要員の搭乗数など性能面で限界が生じることは確かですが、第一線での大型早期警戒機運用は超長距離空対空ミサイル脅威などが存在し避けるという新しい潮流があります。韓国空軍へはこのほか、アメリカのL3ハリス社がG-550-AEW&C早期警戒機を提案しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】韓国とポーランド,FA-50block10とFA-50block20はFA-50GFとFA-50PL

2024-11-19 20:11:54 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 わが国はT-4練習機後継機開発へようやく動き始めましたが練習機関連という事で今回は韓国のTA-50ゴールデンイーグルとFA-50の話題を。

 ポーランドが導入しているFA-50戦闘機について重大な錯誤があった模様です。それは稼働率の問題やミサイル運用能力に関するもので、KAI韓国航空宇宙産業との間で交わされた契約文書は正文としての英文に明記されていますが、ポーランド側の解釈幅の問題から韓国防衛事業庁が反論の声明を発表する異例の事態となっています。

 FA-50戦闘機の性能についてポーランド側は当初の想定されたものと異なることに反発しているようですが、ポーランドが2022年ロシアウクライナ戦争勃発時に急遽調達計画を立ち上げ、2022年内に取得が可能な戦闘機を求めたため、韓国空軍向けTA-50超音速練習機にFA-50戦闘機用火器管制プログラムを搭載した機種を緊急供与しています。

 TA-50練習機を再塗装し上記の火器管制システムを搭載の上輸出する事はポーランドとの間で2022年内納入に際しての留意事項として合意されていたはずですが、ポーランド空軍はこれがFA-50block10水準の機体であることを契約上見落としていたかたち。自衛戦闘能力を持つ攻撃機か、制空戦闘に対応できるかという性能の差があります。■

 ポーランド空軍が導入しているFA-50戦闘機のblock10問題、2022年に契約し2022年内に引き渡しを行うという、21世紀には中々考えられない緊急取得を行った構図ですが、先ずポーランドにはFA-50block10を配備し、つなぎとしての役割と共に続いて新造したFA-50block20を輸出するという契約はポーランド自身も発表していたものでした。

 FA-50block10とFA-50block20の相違点はAMRAAMのような中距離空対空ミサイルの運用能力の有無を示しています。Block10ではレーザー誘導爆弾の運用能力と共にAIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力が付与されていますが、AIM-9Mミサイルの射程は18kmであり、Su-30やMiG-29などとの間では一方的に追い込まれます。

 ポーランド空軍にはAIM-9Xは配備、これはAIM-9の第四世代のもので射程は40㎞、中間指令誘導と画像素子誘導方式併用であり、FA-50block10にはINS誘導装置が無い、西側空軍では冷戦時代に第三世代までのAIM-9を大量備蓄しているため問題は生じませんが、旧共産圏のポーランドには備蓄がなく、搭載ミサイルが無い状態となっています。■

 ポーランド空軍向けFA-50戦闘機AMRAAM運用能力について。韓国防衛事業庁は異例の公式声明を発表しました。ポーランド側の主張としてFA-50戦闘機全てのAMRAAMミサイル運用能力が付与されるものと理解しているようですが、初期の輸出したblock10仕様のものはFA-50GFとして制式化され、この契約にAMRAAMの条項はない、と。

 FA-50GFそのものの性能は高く、AIM-9サイドワインダーミサイル運用能力は勿論、リンク16データリンクシステムに対応するとともにNATO規格のIFF識別装置を搭載し、GPSとINS慣性航法装置を統合したEGI航法装置を搭載、スナイパーポッド搭載能力がありペイヴウェイⅡレーザー誘導爆弾の運用能力があり、12機を調達する契約だ。

 FA-50PL、ポーランドが導入するblock20相当の機体はFA-50PLで、AIM-120C7-AMRAAMミサイルの運用能力を持つものですが、この運用能力についてアメリカ政府が了承したのは2022年9月23日であるため、もともと契約成立の時点で開発段階であることはポーランド側も理解できたはずで、また契約にも明記されているとのこと。■

 ポーランド国内ではFA-50GF戦闘機稼働状況に関する誤報道が為され、韓国防衛事業庁が公式に反論を出す状況となりました。それはポーランド軍が導入した11機が不稼働状態である、というものです。これについて韓国防衛事業庁は、韓国からポーランドへ輸出した予備部品がポーランド税関で通関手続きの停滞に見舞われた為としている。

 通関手続きの不備により予備部品が空軍へ納入できなかったために稼働不能の機体が出ているが、11機ではなく6機、それも一時的に予備部品到着まで不稼働となったものであり、10月までに11機が稼働状態に復帰しているとのこと。FA-50はNATOではポーランドのみが採用している機種であり、NATO部品プールには予備部品がありません。

 FA-50GFの原型であるFA-50block10はT-50超音速練習機の派生型として開発されたものですが、練習機故に航続距離は1800㎞と抑えられているものの、中小国空軍がもちいる航空機としては価格が安く、充分な性能を持ちます。ただ、AMRAAMを運用できるblock20と混同することで、過剰な期待が発生している、その椿事というべきでしょう。

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【榛名備防録】AH再評価論:戦闘ヘリコプターの価値を根本から変える三要素,ARKWS・AHEAD弾薬・スパイクNOLS

2024-11-18 07:00:51 | 先端軍事テクノロジー
■AH再評価論
 航空祭予行の特集ばかり続いていましたので北大路機関らしい話題をひとつ。

 ARKWSと30mm機関砲、攻撃ヘリコプターに関する装備はこの二つにより大きく転換するのかもしれません。現在、世界中ではアパッチガーディアンの採用の流れがある、インドとインドネシアにポーランド、ただ本邦では戦闘ヘリコプター廃止の流れが政治決定され、後継機の調達は2013年のAH-64D調達終了後、行われていません。

 陳腐化により戦闘ヘリコプターを廃止するという政治決定ですが、しかしこれは単純に財務省の予算を出せないという政治決定を、陳腐化という、いわば廃止ありきの結論のもとでこじつけただけともみてとれます。こうしたなかで、いまARKWSと30mm機関砲により戦闘ヘリコプターを巡る状況が大きく変容を迎えているのでは、と。

 30mm機関砲についてはラインメタル社が開発したスカイレンジャー機関砲弾、30×173mm機関砲弾の存在です。アパッチに搭載されているM-230機関砲とは30mmで口径こそおなじですが別物で、M-230の砲弾は30×113mm弾ですのでスカイレンジャーの方が遙かに大型です、そしてこれはAHEAD調整散弾を投射可能、空中で炸裂して散弾を撒く。

 AHEAD調整散弾、これを使用できる機関砲をもし将来的に戦闘ヘリコプターが搭載するならば、ロケット弾、ハイドラ70のような無誘導のロケット弾を使わずとも、暴露した陣地や非装甲車両に対して致命的な破壊力を発揮できるのではないか、これは最近、クラスター弾に代わるAW代替弾頭の砲弾がウクライナで猛威を振るっている事で気づかされて。

 AW代替弾頭は、クラスター弾薬の国際法による規制気運を背景に、極小のタングステン球を大量撒布することでクラスター弾と同様の、しかし爆発物では無いために不発弾を残さないという弾薬で、この威力は懐疑的ではあったのですが、ウクライナ軍のクルスク逆攻撃により使用され、これがかなりの威力を発揮し、有用性を実績で示しました。

 30mm砲弾にAHEADを使用することでAW代替弾頭のような破壊力を発揮し、従来の焼夷徹甲弾よりも高い面制圧能力を発揮できるようになれば、もうロケット弾を大量に投射する必要もありません。ロケット弾の任務に目標指示というものもありましたが、あれはもうデータリンクの時代には目視の指示というのは、それほど必要ないものなのですから。

 ARKWS,もう一つはハイドラ70に誘導キットを搭載した小型ミサイルです。戦車に対してはなにしろもとが70mmロケット弾ですから威力はかなり制限されるのですが、装甲車両にたいしては、また戦車も上部から狙うものですので行動不能に陥れることは可能です。AHEAD弾薬によりロケット弾が不要となれば、そのぶんARKWSを搭載すればよい。

 ヘルファイアミサイル、現在、戦闘ヘリコプターに搭載するミサイルの主流は射程が8km程度であることから威力が限定的であるという非難があります、これが戦闘ヘリコプター陳腐化論の首座というところなのですが、現在これはアメリカも問題視しており、イスラエルとともにスパイクNOLSという光ファイバー/TV誘導型ミサイルの試験が進む。

 スパイクNOLSをアパッチガーディアンに搭載した場合、射程は24kmから50km程度まで伸びますので、防空システムを無力化するとか、高付加価値目標の制圧には、アパッチガーディアンのデータリンク能力と連接させた超長距離ミサイルによる精密攻撃というものは有用です。しかし、その分、スパイクNLOSは大きく重い、ヘルファイアの半分しか積めない。

 ARKWS,射程は高高度から撃った場合で8kmというものですが、この軽いミサイルは逆にスパイクNOLSとARKWSを並行搭載するという、なにかサイドワインダーとスパローを戦闘機が搭載して使い分けているような印象ですが、こうした運用が可能になります。ロケット弾をAHEAD弾薬で置き換えた故に積める余裕が生まれる、ということ。

 AHEAD弾薬は、もともと無人機を一撃で撃墜する欧州スカイシールド構想の産物ですので、これをヘリコプターに搭載するならば同時に無人機狩りを効率的に行えることも意味しますし、特にアパッチガーディアンはロングボウレーダーを搭載しているために、自爆用無人機を狩るにはかなり有用な選択肢であることもまたわすれてはなりません。

 スカイレンジャー30、しかし第一に忘れてはならないのはM-230よりもかなり大型のものですので現在はM-230用のAHEAD弾も存在しませんので現時点では絵空事です。しかし、ARKWSという選択肢も開発されているのです、もう一歩進んだ改良を行うことで、戦闘ヘリコプターは再び、かなりの怪物に化けるのでは、とおもうのですね。

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