北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

いせ:ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦二番艦[2320号艦]本日進水式

2009-08-21 19:58:20 | 北大路機関特別企画

◆護衛艦いせ誕生

 本日、まだ写真の整理などが終了していないので、取り急ぎ午前中に撮影した、ひゅうが、の写真を用いて掲載。

Img_7940  本日、横浜のIHIマリンユナイテッド横浜工場において、鋭意建造が進められていた、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦二番艦、いわゆる2320号艦の進水式と命名式が行われ、二番艦は、多くの期待と任務を背負い、堂々、進水式を完遂。満載排水量18000トンという、その威容を来場者に示した。

Img_7979  2320号艦は、岸防衛政務官により、“いせ”と命名された。旧海軍の戦艦伊勢は、伊勢型戦艦として、同型の戦艦日向とともに第二次世界大戦を戦いぬいた艦であり、半世紀以上の時を越えて、再び「ひゅうが」と「いせ」は、太平洋に再会を果たすこととなる。進水式を終え、艤装、公試を終えると、2011年春ごろには、護衛艦いせ、として自衛艦旗を授与されることとなる。

HARUNA

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平成21年度自衛隊統合防災演習[8月29日~9月1日]実施予定

2009-08-20 16:20:38 | 防衛・安全保障

◆直下型地震に備え6300名が参加

 朝雲新聞によれば、政府は9月1日の防災の日に合わせ、首都直下型地震を想定した防災訓練を神奈川県川崎市などで実施、これに併せ防衛省も神奈川県を中心として平成21年度自衛隊統合防災演習を実施するとのこと。

Img_69441  統合防災演習は、自衛隊の統合運用と関係機関との協同による対処要領の慣熟を目的として実施され、自衛隊からは折木統合幕僚長が統裁官として参加する。今年度は、首都直下型地震への対処を目的とした想定の下で実施され、訓練には陸海空自衛隊より6300名が参加して8月29日から9月1日までの期間、行われる。

Img_6685  演習規模は、人員6300名、車両560両、艦艇2隻、航空機約50機で、参加部隊は、統合幕僚会議、情報本部、指揮通信システム隊、東部方面隊隷下の部隊に加えそして陸上自衛隊の各方面隊からの増援、中央即応集団が参加。海上自衛隊からは、自衛艦隊、横須賀地方隊。航空自衛隊からは航空総隊及び支援集団から人員を抽出、訓練にあたる。

Img_9765_1  訓練はフェーズ1、フェーズ2に区分され、フェーズ1では初動対処や部隊集結要領の確認、首都直下型地震対処要領の検証などが行われ、加えて政府要人の緊急輸送訓練や患者搬送訓練、後方支援体制の確立などの訓練も実施されるとのこと。こちらは自衛隊独自の訓練として29日から1日までの期間を以て行われる。

Img_0848  フェーズ2においては、9月1日の東京都総合防災訓練として知られるような都道府県防災訓練と連動して行われるもので、今回の自衛隊統合防災演習では、1都8県防災訓練に参加する形で行われるとのこと。特に阪神大震災などで問題となった関係機関との横の連携を慣熟させることを主眼として、自治体との協力を訓練する。

Img_4171  大規模災害、特に地震災害は、日本周辺地域における本土直接武力侵攻以上に奇襲を以て被害を及ぼすものであり、同時に被害も広範に広がる。今回想定されている首都圏直下型地震は、南関東地震として以前からその可能性へ警鐘を鳴らされているものであり、日本の政治経済中枢を直撃する一種の“有事”であるだけに、万全の準備が望まれる。

Img_6417  軍事機構は、作業、輸送、補給、通信ともに独立して運用のできる特性から、特に大規模災害では、即応を以て復旧に当たることが可能で、もちろん、大規模災害からの復興は自治体と住民の責務であるが、復興の端緒につくまでの復旧には、自衛隊と自治体の連携が欠かすことが出来ないものである。

HARUNA

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アデン湾における第50回[海賊対処行動第9回]護衛の終了

2009-08-19 23:24:54 | 防衛・安全保障

◆海上自衛隊ソマリア沖海賊対処事案

 第一次派遣部隊が呉基地に帰港し、第二次派遣部隊がソマリア沖アデン湾において、航空部隊と協同し、海賊対処任務を継続中である。

Img_7203  横須賀基地より派遣された護衛艦はるさめ、舞鶴基地から派遣された護衛艦あまぎり、の二隻により編成された第二次派遣部隊であるが、8月18日、第一次派遣部隊より数え、第50回目の護衛任務が無事終了したとのこと。日本船籍の船は0隻、日本の船舶運行事業者が運行する外国船籍のタンカー2隻、その他の外国船籍6隻の計8隻を護衛したとのこと。1~2隻の護衛を行っていたころと比べると、計8隻の護衛というのは、かなり規模が大きくなったようにも思う。

Img_4338  海上保安庁による巡視船でも、大型巡視船を増強すれば対応できるのではないかとの指摘はあるが、海賊対処法の施行に伴い、以前の日本関係船舶だけを護衛していた時に比べ、護衛対象となる船舶の数は増加傾向にあり、海上保安庁の運用するベル212などのヘリコプターには、SH-60シリーズのような対水上レーダーは搭載されておらず、海上保安庁のYS-11にもP-3C程の捜索機器は搭載されていない。しかも、データリンク能力は極めて限定的で、海上保安庁では対応は難しいのではないか、とも考えてしまう。

Img_9446  もっとも、護衛対象の商船一隻一隻に巡視艇を貼りつかせることが出来るよう、かなりの数の巡視船や巡視艇を派遣することが出来ればいいのだが、海上保安庁の巡視船なども、長大な日本の沿岸を警備する必要があり、日本沿岸に海上警備行動命令を発令して、海上保安庁の任務を一部肩代わりさせるでもしなければ、難しいようにも思う。現実的には海上自衛隊が任務を行うのが望ましい。

Img_7458  しかし、本ブログでも繰り返し扱っているように、海上自衛隊のローテーションはかなり厳しいところまで来ているのではないか。恐らく、この状況は10月に行われる自衛隊観艦式において、参加鑑定の陣容等の面で表面化すると思うのだが、隻数が防衛大綱により厳しく上限がある中で、護衛艦は大型化、本来、船団護衛は、フリゲイトやコルベット、つまり満載排水量3000㌧前後の艦艇が当たる任務とも考えられたのだが、派遣するにも数が限られていることから、少数の大型艦を派遣するという状況となっている。

Img_9377  防衛大綱の改訂への報告書が作成中という現在、次期戦闘機の問題、本土防衛のグランドデザインのあり方、他国依存を回避するための防衛産業維持という命題、等など山積する問題が多いものの、アメリカが将来海上権力行使の青写真を描いた2002年のシーパワー2000構想のような、装備体系から部隊大系までを包括した構想を立てなければならない時期に来ているのかな、と考える次第。

HARUNA

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平成21年度8月期 海上自衛隊艦艇入港・一般公開・体験航海実施詳報 第三報

2009-08-18 20:34:18 | 北大路機関 広報

◆艦艇一般公開と入港行事

 八月もいよいよ後半、京都は五山送り火が終わると、そろそろ秋か、という季節の変わり目を実感する頃ですが、それでも八月、まだまだ艦艇寄港、一般公開などの行事は行われる。

Img_5747  それにしても、今年は梅雨明けが遅かった関係で、夏が短く感じた。他方、一応八月という事もあり、曇り空は広がっているものの京都はじめじめとした湿った空気が雲と共に暖められ、不快度指数は鰻昇り。そんななかで訪れた夏の日差しの下で、東北、首都圏、西日本などで行事があるので、興味がわかれた方は足を運んではどうか。

Img_2708  千葉地方協力本部HP()によれば、7月22日と23日、千葉県の木更津港にて、砕氷艦しらせ一般公開が行われるとのこと。0900~1600時の間で、木更津マリーナから少し行ったH岸壁に停泊する予定。会場までシャトルバスの運行などは無いが、駐車場が用意されているとのことだ。

Img_6851  山口地方協力本部HP()によれば、下関港に22日、23日と、あぶくま型の護衛艦とね、が入港、両日ともに0900~1100と1300~1600時に一般公開される。下関市では同期間中、馬関祭が開催されるとのことで、両日ともに2000~2200時、護衛艦電灯艦飾が行われる予定。入港場所は、下関港あるかぽーと岸壁。

Img_7588  広島地方協力本部HP()には、この写真とほぼ同じアングルの写真で、23日にヘリコプター護衛艦ひえい体験航海が行われるとの掲載があった。乗艦には乗艦券が必要だが、乗艦券が無くとも出入港は撮影できる。広島湾外貿埠頭(宇品1万トンバース)に入港、午前1030出航・1150帰港、午後1430出航・1550帰港という予定。

Img_2087  東京新聞などによれば、24日から五日間、米海軍の原子力空母ニミッツが横須賀基地に寄港する。補給などが目的であり、一般公開は行われないが、原子力空母の横須賀寄港、特にニミッツ級のネームシップの入港ということで、興味は尽きない。恐らく艦載機を載せたままの入港になる模様。

Img_0712  大湊地方隊HP()によれば、八戸市市制80周年を記念し、29日と30日9に大湊展示訓練が行われる。こちらも乗艦券が必要だが、八戸港四号埠頭を0800~1400時に体験航海、入出港を撮影できる。1500~1700時には乗艦券不要の一般公開が行われ、1915~2200時に電燈艦飾が行われる予定。

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第一次ソマリア沖海賊事案対策護衛艦部隊、16日、呉基地に帰港

2009-08-17 22:34:27 | 防衛・安全保障

◆さざなみ・さみだれ帰港

 ソマリア沖海賊事案対処として、海上自衛隊が派遣した第8護衛隊の護衛艦さざなみ、さみだれ、が司令五島浩司1佐以下総員、16日、揃って呉基地に帰港した。

Img_0807  護衛艦あまぎり、はるさめ、が第二次派遣部隊として現在任務にあたっているが、第一次派遣部隊は、海賊対処法制定前に派遣された部隊という事もあり、当初自衛隊法に基づく海上警備行動命令という位置づけで派遣されており、加えてアフリカ沖の過酷な暑さの中、商船の海賊船からの防護という任務を完遂した。

Img_16001  第8護衛隊の護衛艦さざなみ、さみだれ、は、任務期間にあたる四ヶ月間で実に121隻の商船を護衛したが、その中で6回、海賊船という疑いのある船舶に対し、ヘリコプターや特殊拡声器等を用いて対処している。加えて、現在、海上自衛隊のP-3C哨戒機による海賊船洋上哨戒飛行任務も実施中だ。

Img_1279  海賊対処法の施行に伴い、護衛対象は海上警備行動に基づく日本関係の商船に加え全船舶へと対象が広がっており、より任務の幅は広くなっているともいえる。他方で、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援任務にも艦艇は継続して派遣されており、収束の見通しが不透明な海賊対処任務は、実任務と訓練、整備補給といった艦艇のローテーションに大きな影響を与えていると考えられるのも忘れてはならない。

HARUNA

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訃報:松林宗恵監督 潜水艦イ57降伏せず・太平洋の嵐・連合艦隊

2009-08-16 12:34:25 | 映画

◆太平洋戦争を語り継いだ予備少尉・僧侶の監督

 映画監督の松林宗恵監督が、昨日朝、急性心不全により亡くなられたとのこと。享年89歳。蕎麦をパチンする森繁久彌と小林圭樹、フランキー堺に加東大介が賑やかな“社長シリーズ”が有名のようだが、戦争映画の監督としても有名だ。

Img_7496  終戦記念日に逝かれるとは。松林宗恵監督、こして故岡本喜八監督の作品などを何度も観返した後で、正直、最近の日本映画で戦争を描いた作品を並べると、どうも見る気になれないのが正直なところ。検証もちょっと、と思う点がありますし、なによりも俳優も監督も、思い切って普通に娯楽映画にした方がいいのでは、と思う事もある。DVDなどで観ていただければ、これは共感できるのだろうか。

Img_8370 『潜水艦イ57降伏せず』、この作品のDVD化で松林監督の名前を知られた方も多いのではないか。終戦直前、沖縄方面での特攻作戦にあたっていた大型潜水艦イ57が特殊任務を帯びて大西洋カナリア諸島に某国外交官を輸送する映画『潜水艦イ57降伏せず』、河本艦長を池辺良が演じ、髭の先任将校志村大尉は三橋達也が演じた。

Img_59431  兵学校を出たばかりの甲板士官山野少尉を久保明が演た。 医師であるとともに最後まで明るく海軍軍人を貫いた中沢軍医中尉に平田昭彦、外交官のベルジェ氏を東宝の外国人といったらこの人というべきアンドリューヒューズが固め、イタリア領事館の紹介で出演した20世紀東宝最大の謎マリアラウレンディも出演。

Img_7219  作品は、当時海上自衛隊唯一の潜水艦である“くろしお”で長期ロケを行い、連合国駆逐艦には、当時の海上自衛隊の護衛艦が次々と登場、爆雷攻撃のシーンも実写で、ヘッジホッグ対潜擲弾の実写シーンも。水中の爆発は、円谷英二の特撮と上手く噛み合っていて、團伊玖磨の音楽も素晴らしい。

Img_7506  何しろ日本特撮の始祖が研究の末に映像美を醸し、しかも音楽は日本有数の作曲家が担当、これほどの迫力の潜水艦映画は、日本では今後考えられず、世界のどの映画祭に出しても誇れる一本、海軍OBも唸らされた作品とのこと。しかし、映画を通じて、なんというか、これはDVD観ていただければ伝わるのだけれども、空気を上手く描いている。

Img_1176  戦争の空気を伝える作品、これはどのようにして描かれたのか、龍谷大学で卒業とともに僧侶となり、その価値観の下で映画を創りたいと日大芸術学部に進み同時に東宝に入社、しかし在学中の1944年海軍兵科予備学生へ、予備少尉として陸戦隊指揮官に着任し実際にアモイに派遣、そこで終戦を迎えている。こうした経験が映画に反映されているのではないだろうかと考える次第。

Img_7497  真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までを描き、艦攻搭乗員の海軍士官という視点から戦争を描いた『太平洋の嵐』、平和な東京の市民の視線から全面核戦争の恐怖を描いた『世界大戦争』、紫電改を駆って末期の本土防空に活躍した剣部隊、やや娯楽色がある中で最後が響く『太平洋の翼』。

Img_7503  東宝が1981年に最大の戦争映画として世に送り出した『連合艦隊』、太平洋戦争の開戦から、戦艦大和の沈没までを通じて太平洋戦争を振り返った大河のような戦争映画、そして実質的に東宝が8.15シリーズとして制作した最後の戦争映画であり、その後は、アクション映画やSF映画の延長としての戦争映画だけとなってしまったが、この大作のメガホンを執ったのも松林宗恵監督である。

Img_1210  戦争に参加した戦前派からのメッセージを、次の戦争が起こるまでの語り部として映画を作り続けた松林宗恵監督、遺作となる覚悟で全力を注ぎこんだ『連合艦隊』1981年を最後に映画監督を引退したが、講演活動などは精力的に行われていたとのこと、謹んでご冥福をお祈りいたします。9月10日午後1時半、東京都世田谷区成城1の4の1の東宝スタジオNo.8ステージにて、お別れの会が行われる。

HARUNA

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8.15 終戦の日 日本の戦争への不関与という国是、そして平和の問題

2009-08-15 23:21:13 | 北大路機関特別企画

◆1945.08.15

 本日は終戦記念日。大日本帝国が連合国にポツダム宣言の受諾を宣言し、それを国民に向けて発表し、全部隊に停戦を命令した日である。しかし、その日以来、日本は平和主義を掲げることで世界の戦争という問題に、実質的な不関与を国是としてきた。本日はこの点について少し考えたい。

Img_4743  真珠湾攻撃から僅か半年で東南アジア全域を制圧し、豪州へ空襲、太平洋方面の戦線は南太平洋から米豪通商路に脅威を与え、空母機動部隊は遠くインド洋に展開、インド亜大陸にその威力の一端を向けた。北方アリューシャン列島の一部も占領、中国とアメリカ、そしてイギリス、オランダを相手に戦闘を繰り広げた。

Img_8952  島嶼部を巡る戦いは、必然的に洋上の制海権を巡る激戦となり、海戦史上あらゆる空母同士の海戦は、全て日本との間で戦われ、総力戦における国力減殺を目的とした日本の諸都市への無差別爆撃が繰り返され、最後には二度にわたる核攻撃までもを行い、不可侵条約を結んでいたソ連軍までもが参戦し、圧力を加えたことで、ようやく大日本帝国は降伏に至った。

Img_0298  しかし、日本は全土が文字通り最前線となったドイツと比べれば、サイパンや沖縄本島などの一部を除き、市民を巻き込んだ市街戦には至らず、最後の悲劇は防ぐことができたのかもしれない。帝国議会が大日本帝国憲法から日本国憲法への改正を認め、アメリカをはじめ連合国の総意として講和が成り立ち、主権を回復した。

Img_0963  憲法九条に、戦争の放棄を盛り込んだことにより、世界の平和を巡る問題に、日本は不関与することにより、国際政治に影響を及ぼさないようしよう、という指針が定められたわけではあるが、終戦の時点で連合国が展望した以上に、日本の復興は思いのほか早く、その経済力は世界に影響を及ぼす立場となった。

Img_06551  主権を回復し、自国の防衛は自国により行う必要とともに、防衛力により自国民に影響が及ばない程度に周辺地域の安定させる必要が生じ、結果、歪なかたちでの防衛力を構築する必要に迫られたが、同時に経済活動は全地球規模で展開されるものであり、その必要上から、そして東西冷戦における要求から、その防衛力を経済力に合わせたものに拡大しつつ今日に至る。

Img_31631  武力が無ければ戦争が起きないという事は、現実問題としては正しく、失礼な論法だが、中国大陸に日本が侵攻した際、例えば日本の特務機関などが中国での平和運動を扇動し、結果、中国国内で無抵抗運動が広がれば、日中戦争は起きなかったであろう。しかし、それが国際公序に適っているかと問われればそうではなく、同じ論調で日本の無防備を唱える平和主義には大きな落とし穴がある。従って、均衡を破らない程度の、つまり自衛力としての軍事力は必要となる訳だ。

Img_5060_1  他方で、自衛力としての軍事力を整備しつつも、日本国憲法の解釈として、集団的自衛権の行使を禁じている日本政府は、本来、集団的自衛権の行使の下での国際公序の実現のための国際公共財となるべき軍事力を、世界の為に使う事が出来ず今に至る。同時に、個別的自衛権に限られた軍事力の行使は、国際管理の下ではなく一国の意思により動かすものとなり、いわばこの集団的自衛権行使の違憲判断が世界に意思とは異なる影響を及ぼしているとも言える状態にある。

Img_5464  日本が平和主義を国是として、戦争という国際関係の捻れに対して、関与を拒否していることにより、日本以外の諸国民が、代わって流血を強いられているわけであり、日本よりも豊かでない人たちをも、結果的にではあるが、より深い苦痛と死の正面に立たせることを強いているとも言える訳である。

Img_1617  平和主義という形ではあれ、世界への不関与を以て日本一国の安寧を保とうとする手法は、これは戦争に対する一種の鎖国で、もちろん、国民の命を預かる行政府としては平和的生存権の保障も重大な意味を持つのではあるが、国際公序からは離れているのではないかとも考える次第。

Img_8491  意図したかは論点に含めず、日本国は経済的に大きくなり、国際金融への影響、対外直接投資の規模や、精密機器の世界への供給、技術の錬成、製品の市場として、様々な点で日本の動静は世界に影響を及ぼす大きな地位となっており、結果、こうした様々な面への影響力を有する国は、必然的に、安定し、負の影響を周辺に及ぼさないという義務もあるように思える。

Img_2507  もうひとつ、軍事力の面で、国際社会において安定と秩序の回復や復興への端緒を構築する上で軍事力の助けを必要する諸国民に対して、自国が平時において、供することのできる自衛力を供するということは、果たして悪なのだろうか。無意識に、他国と日本、命の価値の線引きを、日本の平和主義は行っているようにも思えてくる。

Img_4001  もっとも、関与しるべき、とはいっても、これは国内に、これまで国際と国内で引いていた、防衛と安全保障の面での命の線引きを行うべき、という論点ではない。日本の総意として、平和と世界危機に、無視ではなく世界の一員として、関与し、是正する方向に向かうべきではないか、というのが、一つの命題だ。

Img_1616  食料自給率の話題がよく取り上げられるが、食糧の輸入が途絶すれば云々と危機感を煽る発言の数々。しかし、食糧の輸入が途絶するような状況であれば、工業国日本への原材料の供給は、エネルギーの輸入は、どうなるのかまで踏み込んだ発言は少ない。しかし、食糧は完全に途絶しても他のものは順調、という危機の形態を考えるのはナンセンスであることは間違いない。即ち、日本は世界の一員であり、共存と補完関係のもとで成り立っている訳である。このことを考えれば、終戦の日から今日まで、特に軍事力の面で世界に不関与を続けてきた日本外交の在り方は、これからも不変であるべきか否か、再検討の機会も必要になってる区のではないか、そう考える次第。

HARUNA

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戦闘機国産技術存続の道⑤ 技術以外の要因で開発出来ない国産第5世代機

2009-08-14 21:50:12 | 防衛・安全保障

◆予算への根本的な理解の相違

 F-15JMSIP機の後継の模索が必要、とした前回の記事であるが、それでは日本独自の次世代戦闘機の模索、つまり戦闘機の国産を模索する必要はどの程度か、本日は、この内容を扱いたい。

Img_1502  しかし、日本は、F-22やF-35にあたるような絶対航空優勢を獲得することに主眼を置いた航空機は、現状では絶対に開発できないと言い切れる。その背景には、開発費の高騰を無視して、最高峰の技術を醸成することよりも、厳しい予算の管理下という枠内で出来得る最高峰の航空機を開発することが、日本では求められ、目的のものの開発には予算の枠をある程度度外視して開発する事への理解が難しいという背景はあるからだ。

Img_7280  同じ予算規模ならば、日本は他の航空工業企業が開発する機体よりも上の機体が開発できるかもしれない。ただ、風洞施設や電子暗室さえ国内に充分になく、先端技術実証機はフランスの電子暗室を利用、こういうところに、日本のこの種の航空機の開発力に限界が滲み出ている。他方、今後十数年間、毎年、戦闘機1~2機分の予算を戦闘機関連技術研究開発に充当させる、技術開発の重要性を認識すれば、多少は変わってくるのだが。

Img_1743  だが、ここで諦めてしまえば、部分的ながら共同開発に対応できる戦闘機国産技術そのものが喪失してしまうことにもなる。従って、可能な限り、各種技術を温存且つ発展させ、相互互恵に中軸を置きつつ、国際共同開発に参加という、一般に国際共同開発で求められる技術向上や価格低減以外の視点からの参加の模索が検討されるべきだ。

Img_7162  加えて国際共同生産からは距離を置きつつ、共同開発機の仕様に、開発遅延につながるような独自要求は共同開発機に盛り込まず、開発には参加しても生産には関与せず、日本仕様機は日本国内で製造する、という理解されにくく、加えてアクロバティックな方式の模索が必要になるのでは、と考える。

Img_9659  なんとなれ、日本の航空防衛産業は、綱渡りの状態。F-Xが、どうなるのかはまだまだ未知数ではあるものの、AV-8ライセンス生産をも念頭に入れ時間を稼ぎつつ、将来、どう足搔いても確実に訪れるF-15JMSIP機の後継が必要になる時期は到来する訳で、将来を見通した技術開発と生産体制、生産基盤の確保を行う必要はあるように思う。

Img_7176  日本仕様のF-35Jをライセンス生産するのか、それとも、フランスがかつてミステールやミラージュを開発した際のように、国策として戦闘機開発を提示し、無理だと思うが、基礎技術開発や情報収集、技術試験、その他予算に糸目をつけずF-22やF-35並の開発費を投じる覚悟でF-3の模索を行うか、選択肢を選ぶにあたって、防衛政策の根本的転換に至るという、ある種の覚悟は必要なように思う次第。

HARUNA

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戦闘機国産技術存続の道④ F-X計画に続くF-15JMSIP後継機の模索

2009-08-13 23:36:49 | 防衛・安全保障

◆F-35J?/F-3?第五世代機は国内製造可能か?

 F-2の生産を継続しつつ、将来戦闘機の国内ライセンス生産が開始されるまので期間、時間を稼ぐという目的も含め、AV-8ハリアーⅡ+のライセンス生産を行うという、滅茶苦茶な提案をしてみた。

Img_9732_1  日本が、非国内生産航空機航空機(あえて国産とは言わない)に代えて、欧州機や米国製戦闘機の直輸入を行うに適さない理由は、地理的理由で、整備や部品補給により稼働率を高めようとすれば、航空機工場は近傍にあることが望ましい。NATO加盟国であれば、同盟国と協同で整備や補給面の整備を行う事も可能なのだが、今のところ、戦闘機に関しては三菱重工小牧南工場以外に、近隣諸国で整備を行えそうな場所が無い。

Img_2860  また、北緯45度付近には稚内市、旭川市があるが、これは北米大陸ではカナダの首都オタワ市やトロント市。ニューヨーク市が青森市と同緯度。東京は、だいたいコロンビア市と同じくらいであるが、那覇市がフロリダのマイアミ市と同じ緯度。防衛白書では、戦闘機数のみを、日本と韓国や台湾、中国、北朝鮮と数字で比較するのだが、数字以上に日本列島は広大だ。http://blog.goo.ne.jp/harunakurama/d/20081211

Img_9901  稼働率を高めるには、国内で部品を調達する必要はあるのだが、例えばイスラエル空軍のように、極力稼働率を高める整備の努力を重ねつつ、航空自衛隊よりも少ない人員でありながら、F-16だけで300機以上を配備し、F-15も各種80機を運用するなど、とにかく多数の航空機を調達し、イスラエル空軍は戦闘機よりも遥かに多い搭乗員を養成することで、一機当たりの出撃回数を増強しているが、保有数と出撃回数を重視することで稼働率に換える、という選択肢もあるかもしれないが、他方で、あまり多くの航空機を航空自衛隊が保有する、というのは現実的には難しいように思う。

Img_9948  他方、現在選定中のF-X計画による二個飛行隊分の航空機を調達したのち、特に日本が本格的に第五世代戦闘機を調達する場合、日本国内で第五世代機をライセンス生産も含め製造することが許されるのだろうか。第一に予算的な問題が立ちはだかる。第五世代機は、第四世代機と比べ、F-35は、F-16並の低価格を実現するという建前ではあるが、恐らく調達費用は上昇する。生産数を低減させなくてはならなくなるかもしれない。

Img_0495  また、技術的にライセンス生産が認められるのか、という視点も必要になる。武器輸出三原則の観点からF-35の開発に参加できなかったことを負の点として提示する識者や関係者の声があるが、国際共同生産であるF-35に日本が関与してしまえば、共同生産に参加することはできても、ライセンス生産は認められなかった可能性が高い。

Img_3250 F-35へは、戦闘機国産技術の観点からは参加せず正解であった、とも言えるのだが、他方で、第五世代機のライセンス生産には政治的な障壁が高くなることも事実だ。こうした現状を認識したうえで、時間稼ぎの果てに、第五世代機、F-X計画に続くF-15JMSIP後継機の模索は行う必要があるように考える次第。

HARUNA

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戦闘機国産技術存続の道③ ハリアー、ライセンス生産の可能性と需要

2009-08-12 21:41:04 | 防衛・安全保障

◆ハリアーという選択肢

 ハリアーという意外な名前を出してみたのだが、F-4後継機までの時間の空白を。F-2の需要模索で数年間時間を稼ぎ、続いてハリアーをライセンス生産し、国内用とともに輸出用とする案。F-35が開発されている中でハリアーの需要があるかの議論を最初に行いたい。

Img_9188  F-35は、ステルス機であることに加えて、多国間国際共同開発という背景もあり、様々な機能が盛り込まれており、特に開発費負担の割合に応じて発言力が定められている訳であるので、この結果、より多用途性を求めた代償というべきか、自重が計画値を上回り、軽量化と仕様変更の必要性が浮上、必然的に開発計画と量産計画は遅延を重ねている。

Img_9776  7月30日にF-35Cの量産初号機がテキサス州にあるロッキード社のフォートワース工場にてロールアウトを果たしたが、もともと90年代末期の段階では2008年に量産機の引き渡し開始を目指し開発されているので、量産初号機の技術試験が終了し、初度作戦能力を獲得するのはいつになるのか、という問題がある。

Img_0224  加えて、F-35はステルス機であるという関係上、米国国内では、この機体がオビー条項に抵触するのでは、という議論もあり、特にこれから軽空母を建造しようという国が、F-35Bを導入できるかと問われたならば、確証は無い。また、F-35は開発計画が遅延するとともに、開発に要するコストも増大しており、これは必然的に機体単価に跳ね返る。

Img_8208  また、機体単価が上昇し、生産数の減少につながれば、調達数の減少につながり、これが量産効果の低減に伴う機体単価上昇に、という悪循環を招く可能性も無視できない。もちろん、ここまで開発されたF-35は、普及型第五世代戦闘機として、実戦配備には至るであろうが、構造が複雑なF-35Bについて、特にハリアーほど敷居が、もちろん、ハリアーの導入コストも高いのだけれども、ハリアーよりも割高になる可能性が無視できない。

Img_9963  そこで、日本国内でハリアーをライセンス生産し、各国に供給する、という選択肢が生まれる。イギリスやアメリカで生産終了となったハリアーであるが、日本でライセンス生産というかたちであれば、これは、日本国内でラインを整備する訳だから、生産再開は可能である。販路などは、イギリスのBAEシステムズ社が契約を行い、BAEとの互恵を強調する。

Img_4919  その契約に応じて、三菱重工を中心にライセンス生産を行えば、F-2が生産終了したのちでも、戦闘機、ハリアーは厳密には攻撃機・・・、いや支援戦闘機であるが、ラインの維持は可能だ。F-35に関して、特に海上自衛隊が将来、例えば、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦の後継となる22DDHなどに、その運用を期待した場合でも、F-35Bに関してはライセンス生産が認められる可能性は、F-22のライセンス生産と同等の可能性しか有していない。他方で、ハリアーであれば、ライセンス生産が認められる可能性はあり、ハリアー+の性能も、今後20年を見渡しても、近代化を重ねれば、第一級の性能を発揮できる可能性もある。付け加えて、輸出市場でも、F-2よりは、ハリアーへの需要は高い。何故ならば、F-35を除けば、軽空母用の艦載機となり得る機体が見当たらないからだ。

Img_48991  日本では過去にもこうした、本国での生産が終了した機体を日本で生産し、世界に供給した事例がある。川崎V-107だ。陸上自衛隊の輸送ヘリ、海上自衛隊の掃海ヘリ、航空自衛隊の救難ヘリとして採用されたV-107は、もともと、アメリカのバートル社が、陸軍と海兵隊用に開発した輸送ヘリで、特に海兵隊ではCH-46として採用、後継機V-22の配備まで現役にとどまる予定だ。このV-107は、バートルでの生産が終了してのち、スウェーデン軍やタイ軍、サウジアラビア王室専用機などとして川崎重工で生産され、輸出されている。アメリカで生産が終了したV-107を川崎重工がライセンス生産し、供給したのだ。

Img_4658 本国では生産終了となったハリアー、しかし、この機体を、基本的には海上自衛隊用、そして、もちろんこれは武器輸出三原則の緩和と兼ねてではあるが、日本以外の国においてハリアーを必要としている国に対して、BAEシステムズ社からの発注に応えて三菱重工が中心となりライセンス生産し、BAEシステムズ社を通じて三菱重工が供給する。この方法は、かなり無理があるようには見えるが、日本国内の戦闘機生産基盤を維持存続させる、一つの方法にはなるのではないか、そう考える次第。

HARUNA

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