石屋のカミさん日記

仕事に趣味に 好奇心の赴くまま楽しいこと追求します!

猛女とよばれた淑女

2008-06-05 23:59:57 | Weblog
図書館で本を借りた。

斉藤由香著
「猛女とよばれた淑女 -祖母・斉藤輝子の生き方」


斉藤由香さんは 日本を代表する歌人の斉藤茂吉の孫であり
作家・北杜夫を父にもつ。
一昨年亡くなられた 精神科医でエッセイストのモタさんこと斉藤茂太は
由香さんの伯父になる。

斉藤茂吉の妻・斉藤茂太と北杜夫の母である
斉藤輝子さんの波瀾に満ちた生涯を孫娘の
由香さんが愛情を込めて綴った本だ。

斉藤輝子さんは 敷地4500坪もある!ローマ式建築の
大病院のお嬢様として生まれ 乳母日傘で育った。

9歳で 当時優秀で才能のあった22歳の茂吉を
婿養子に迎えた。
名家の令嬢として育った輝子は わがままで自分勝手だが
強い自分の意志をもっており、
関東大震災・東京大空襲など困難が起こるたび
毅然と乗り越えていく。

一流を好みながら 贅沢を嫌い、権威を嫌い、
自分の意思に反するものには絶対従わない強い女性。
気難しい茂吉とは うまくいかず、
相当な悪妻と風評が流れるが
弁明も言い訳もいっさいせず12年間も別居生活をするのだ。

晩年、茂吉を看取ってから海外旅行に目覚め
89歳で亡くなるまで108か国を旅した。

しかも、先進国ではつまらないから・・と
79歳で南極・80歳でエベレスト・81歳でエジプト
83歳でアラビア・85歳でジンバブエ
その他、アフリカ・インド・アマゾン・ガラパゴス
ブータン・メソポタミア・・・
凄いのである、そのエネルギーとパワー
私なんか そんな国が地球上のどのあたりにあるのかも
知らないのに。

また、北杜夫さんの壮絶な躁鬱病の様子が
面白おかしく描かれており、驚いた。
北ご夫妻が毎日、バトルを繰り返されるところや
自分勝手な輝子が まわりを振り回す様子も
すごい
世界の一流レストランで食事をしても
自分が美味しくないと思ったら
「まずい!まずい!」と激怒するエピソードには
心がすーっとした、そんなこと言ってみたい

個性強烈な斉藤一族のなかで 二人のお嫁さんは
際立って淑やかに描かれている。
最上級の敬意をもって
このとんでもない姑さんに尽くし仕える様子に
ご苦労だな~
私には務まらないな・・と思った。

ドタバタと賑やかな斉藤一族も
大病院が火事で消失し、
茂吉や輝子が亡くなり
モタさんも亡くなってしまい
あの北杜夫さんも もはや80歳を超える御年だとか。

本のラストシーンで 由香さんが
旅先からの輝子の絵葉書の束を見つけ
いろいろなことに想いを馳せる場面は
胸が熱くなった。

生きているって熱いことだなと思う。

そして、栄えたり衰えたり
生まれたり死んだり
花は散って、また咲いて・・
永遠の繰り返しだ。
由香さんの何ともいえない寂しさが伝わってきた。



 

コメント (4)
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