CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】戦場のコックたち

2016-01-16 16:24:56 | 読書感想文とか読み物レビウー
戦場のコックたち  作:深緑 野分

また、思ったのと違う題名だった
けど面白かったからいいやという気分であります
いや、むしろ、ちゃんとこの小説の要諦をつかんだというか
内容を期待させる題名にならなかったんだろうかと
なんか考えさせられてしまったのであります
戦場で、物資が不足するなか、コックさんが
いかにがんばったかという、飯系小説かと期待してたのですが
どっこい、まっすぐなというか
非常に、まっとうな戦争小説でありました
根幹にミステリ要素があって、なかなか
読み応えたっぷりのそれでありました

第二次世界大戦中のアメリカ兵、しかも
特技兵と呼ばれるコックが主人公というもので、
飯シーンは、確かに出てくるし、
読み終えてみたら、重要なキーワードではあったんだけども、
飯描写がどうしたとか、戦場のおいしい料理とか
そういうの全く関係なく、
いかに前線が凄まじいところで、恐ろしいものかと
そういうのが描かれていたように思うのであります
慄くというか、怖くなるようでもあったのです

空挺団に所属しているため、
相当の激戦地をいくのでありますが、
その先々で、コック兵だからこそというか
兵站部隊だからこその、野営地での出来事なんかが多く、
その野営地を転々とする間に、
不思議な事件なんかが発生し、
それをなんだかんだと解き明かすといった
ミステリ要素満載で読み応えのある内容であります

やがて戦争も終盤にさしかかってというあたりでは、
すっかり古参兵になっているという
人間的な成長といういか、戦争によって擦り切れていく感じも
いい具合に伝わってきて、なんとも悲しい感想も抱いたりする

友情や、憐憫や、倫理に対する憤怒や、
そういったもろもろをごった煮にしたようになり
それでも、最後に一つの事件を起こす側になるというのが
なかなかステキでありまして、
華やかなりし戦争ではなく、暗く重たい第二次世界大戦の
ヨーロッパ戦線を描きつつ、悲惨さが伝わってきて
いい小説だったと思うのでありました

キャラクタもそれぞれステキでありまして
よくよく読まされた小説だったとメモっておくのであります