CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】猫を拾いに

2017-11-02 22:07:03 | 読書感想文とか読み物レビウー
猫を拾いに  作:川上 弘美

可愛らしい短編集でした
珍妙といったらいいのか、不思議な話も多くて、
ややもすれば夢十夜のような雰囲気もあるのだけども、
やっぱり、もっと親しみやすいというか、
近くにありそうでない、絶妙な距離感の話が多くて、
なんのかんのと楽しく読み終えた小説であります

どの短編も、読んでいると何か楽しい気分になれるのだが、
終わってみたら、なんの話だったっけ?みたいな感じで、
本当にとりとめなく、でも、会話や心情が
とても解りやすいというか、読んでいるだけなのに、
「聞き取りやすい」という印象を受けるのであります
読みやすいとはニュアンスが違う
そういうことを言いたい

表題にちょっと騙された感じもあるのだけども、
どれもこれも、なかなか楽しくて、やきもきする話に
ほっこりしたり、脱力したりと
ゆるやかに面白がることができたのでありました

とりわけ好きだったのが、ハイム鯖というお話で、
物凄いどうでもいい謎が、本当に、もう、
どうでもいい、としか言いようが無いのに、やたら気になる
この感覚は読んだ人にしか伝えられないのが
大変もどかしいんだが、ともかく、気になって仕方ない
しょーもないことを残して終わるという短編で
至極だと思ったのであります、素晴らしい
こんなに意味がないのに、記憶に残る物語は
なかなかどうしてないだろう

ほかにも、ゆるやかに駄目になってしまう男女の機微だとか、
友達じゃないけど仲がよいという、
女性にありがちな関係を物凄く的確に描いたと思われる短編だとか
まぁ、ともかく、読んでいると
特に何もないのに楽しくなれるというものばかりでありました

そんなわけで、非常に楽しめたので満足なんだが
数日経って、この本を読んだことは覚えているけども
ハイム鯖以外のことを思い出せるだろうか、
いや、ハイム鯖自体も思い出せるだろうかと
不安になりつつ、その時はもう一度読めばいいのかもねなんて
思わせてくれる一冊でありました
ゆるい