CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】夢見る帝国図書館

2020-04-09 21:24:04 | 読書感想文とか読み物レビウー
夢見る帝国図書館  作:中島 京子

穏やかな気持ちで読める物語でした
ヒッピーとは違うんだが、不思議な老齢の女性が紡ぐ
とても不思議な物語と、そのときあかしといった内容で、
魅力的な、でも、地に足の着いた、本当にそんな人がいて、
そう生きたのかなと思える物語が楽しめました

帝国図書館のなりたちを追いかけつつ、
それぞれにかかわりのある文豪との話が小話めいて、
作中作として出てくるんだけども、それの本題ともいえる
現代での不思議な女性とのやりとりが軽妙で、
どこかはぐらかされているような雰囲気だとか、
明るく、さばさばしたと形容されるところから伝わる
絶妙な雰囲気がなんとも心地よく
読んでいて楽しい物語でありました

後半は、その女性の生い立ちの謎を追いかける形になり、
また、その謎が図書館の成り立ちとも関わりあっていくように
収斂していくのも楽しくて、戦後のどたばた、
バラックでの雑多な生き様という描写がありあり伝わると思えば、
そこに居た、あるいは、そういう心持で居たという経験というか、
思い出、辛いことなんかが透けて見えるようで
作中泣いてしまう老教授と同じく、涙してしまいそうでありました

不思議な女性が、知り合いに凄い似ている感じがして
そのあたりも、なんとも楽しく読めたというのは
きわめて個人的な感想ではあるのだけども、
そういった人生を送った人が、そんななりたちというか、
そういう雰囲気の人になるものなのかもなと、
勝手に合点してしまったり
なんとも、ほんわかしながらも、かみ締めるように読めた
よい小説でありました

しかし、戦中の動物園の話は本当に悲しいなぁと思えるが、
口減らしではなく、覚悟を促すための儀式めいた死というのが
残酷であり、そういう面もあったのかと思わされたり
戦争の恐ろしさが、自然、伝わってくるようでもあった