2月1日の誕生日の日、なぜか私は一人の少年のことを思い出していた。彼は中学時代の同級生。異性でありながら彼には友情みたいなものを感じていた。
昨年のバレンタインの時に、中学一年の時の友人の体験を書いたので、今年は予定では、二年の時の私の想い出などを書くつもりだった。でも、思い出してしまったので一年とんで彼の話なんかを書いてみたいと思う。
彼の名前は笹目雪生(もちろん仮名)。
雪生は、今で言うところの爽やか王子のような上品な顔をしていた。真面目でおとなしく成績も中の上。なんでも一生懸命やるタイプなので、先生の信頼も厚く、生徒会では副会長なんかをやっていた。ゆえに女子にはモテた。
私は彼と中学の二年、三年と同じクラスだった。二年の時は私の友人は彼に熱い想いを寄せていて、徹夜して毛糸で何かを作り上げ送ったのだった。だけど、その思いは通じなかった。後で雪生ははっきりと、私に彼女は苦手だと告げたことがある。
その彼女は、吉沢京子似の美人だった。(知ってる?)だけどその美しさは、年頃になって遺憾なくその力を発揮して、その美しさに見合ったいい思い、いい結婚をするまでには、まだ時代を待たなくてはならなかった。その頃は美人だと言う事はまったく武器にならず、彼女はもてなかった。性格ブスだったから・・・
一言で括っては気の毒だが、今回は彼女の話ではないので我慢して貰おう。
雪生が好きになってしまったのは、顔は並、成績はドボン、だけどやたら明るく悪戯好きでお茶目な、やっぱり同じクラスの少女だった。私は、雪生が彼女のことを好きだと、そっと私に告げてきた時、正直心の中で吃驚していた。
何であんな子を・・・。
でも新たに見直してみると、彼女のような人ををキュートと言うのかも知れない。
だけど勘違いしてはいけない。美人で性格ブスの、私の友人と比較してキュートな彼女が性格美人と言うわけではない。
彼女はクスクス笑いながら、そっと私に言ったのだった。
「見てな~。あんなやつ、すぐふっちゃうから。」
しばらくの間は初恋に破れしょんぼりしていた雪生だが、だからと言って、彼はのんびりしているわけには行かなかった。
何かの時に彼の志望校を聞いたとき、私はあまりにも正直に言い過ぎてしまった。
「ゴメン、あなたってそんなに頭良かったんだ。私、勘違いしていたよ。」
「いや、勘違いじゃない。先生も厳しいって言っている。」
彼の志望校は、成績が中の上なんて言うのでは無理だ。上の上でなくては無理なのだ。だけど、彼は何でも一生懸命の覚悟の男だったのだ。
生徒会役員もやっていられないからとクラス推薦も断ったのに、他に推薦できる(押し付ける)相手もいなくて、彼が推薦されてしまった。
「大丈夫だよ、今度は選挙なんだから、俺には入れるなといえば選ばれないんじゃない。」とみんなに言いくるめられての立候補だった。
そして、彼は実行した。体育館での演説会で彼は叫んだ。
「頼む。僕は志望校に入りたいんだ。死に物狂いで勉強しなくては無理なんです。だから僕に絶対に絶対に入れないで下さい。」
そのパフォーマンスが受けに受け、断とつトップ当選で彼は生徒会長になってしまった。
ああ、青春は麗しい。
そして、三年のバレンタインの日がやって来た。
だけど、長くなってしまったので続きはまた明日。
<バレンタインデーでしたね> 2006年
<あのチョコレートは美味しかったですか>2007年の記事です。