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森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

さよならを意識した夏、その2

2015-09-15 11:25:22 | 梢は歌う(日記)

網戸をそっと開けてカメラを向けても、鳩は急いで逃げ出そうとはしません。

やはりこの鳥は図々しいのでしょうか。それとも私に敵意など微塵もない事を即座に見抜いていたのでしょうか。

部屋の中で影が動いただけで飛び立つ鳥の慎重さも瞬時に相手を見抜いて大胆な行動に出る事も、どちらも大切な事だと思います。

小さなベランダですがそこから拾えるものはたくさんあるようです。

トップ画像は全く本文記事とは関係はありません。

 

これは「さよならを意識した夏」の続きです。

 

※         ※

 

良く思い返してみると、8月10日ラッタ君と東京駅で待ち合わせをした時、虎屋のカフェ「TORAYA TOKYO」で美味しそうな羊羹プレートを頂きながらの話題の一つがそれでした。《「東京駅散歩」

「お父さんの真夜中の咳が変なの。」

「あやつは〈あやつ呼ばわり〉、何でたばこ止められないんだろ。」

「国が売ってるだけでドラッグと一緒だからね。」←過激。

「この前会社の健康診断受けたから、それで大丈夫だったらオーケーなんだけれどね。でも何かあったら、あなたは長男としてちゃんと私を支えてね。」

「いや、それは家にいるやつに頼む。ヘラヘラ」

「あのねー!!」

などと言う会話をしていたのでした。

 

なんとなく気になっているー。

でも何気に気にしていても、人間と言うものは、いや私だけかもしれませんが「きっと、大丈夫。」「思い過ごしだったんだ。」と、やっぱりそのような展開になる事を、心のどこかで信じていたのだと思います。

 

だけど8月13日、夫と二人でいつもの気楽なショッピングモールで買い物と決め込んでいた私たち。

その時、まだお墓参りに行く日にちと時間が決まっていませんでした。

車の中で、彼の携帯が鳴りました。

姑からかもと思って、私が出ると

「××病院です。先日の集団検診の結果なんですが、他の方は会社にお送りすることになっているのですが、お盆休みでもあるので○○様には早くお渡しできた方が良いと先生から指示がありましたのでご自宅にお送りいたしました。」

と、そのような内容。

えっ !

ドキリ !

電話の内容は夫にも漏れ聞こえていました。

「あのすみません。それは、結果を見て、いち早く何か行動をせよと言う意味のものですか?」と、私は聞きました。

「ああ、このようなお電話が行ったら、吃驚されますよね。ご安心ください。もっと差し迫ってる時はお呼び出ししますから。」と電話の主様は言いました。

どうもトップランクではないらしい。

ちょっとだけホッとしましたが、早く何がしらの行動をせよと言う部分は否定されませんでした。

そして車の中の二人・・・・・・・沈黙です。

しばらくして、夫がぼそりと言いました。

「スルー出来なかったな。」

「うん。」小さな声で、私も答えます・・・・・・・

「って、言うかさ。私、アリの心臓なもんだから、今、気落ち激しいよ。」

「俺も。。。。」

だよねー。本人だし。

 

あの人の言い方だと癌ではないよねとか、でも「まあいいか」と言うレベルでもないとか二人でぼそぼそとため息をつきながら語り合いましたが、その時に話し合っても意味がないなと言う事になって、とにかく結果を見てから、いろいろと考える事にしようと言う結論になりました。

クヨクヨしていても仕方がないので、普段通りの行動をとる事にした私たち。

まずは最初はホームセンターに行って洗剤などの日用品と猫殿のお食事などの調達です。それが済むと彼は買ったものを車に置きに行き、私はその間に百均に行ったりトイレに行ったりした後、喫茶店で待ち合せるのが常なのです。

これと言った用もないのに百均のお店に足を向ける私。

その時、窓の向こうに見えた青い空。

私は不意にべそをかきたくなりました。

子供のように、エーンエーンと泣きたくなりました。

もちろんまだ泣くような場面ではありません。

 

でも私はその時思ったのです。

 

なんでもないような今日が来て、そして明日が来る。そしてその繰り返し。

子供たちは皆いつか私たちから離れていき、その先は二人で文句を言ったり喧嘩をしたりしながら、それでも二人で生きていく日が来る。そしてさらにその先は、どちらかが先に消えていく。

分かっているよ。分かっているさ。

でもその「いつか」は、絶対に「今」じゃないし、1年後でも2年後でもないんだよ、私の中では。

だけどそんな約束、誰もしてくれてないんだって。

 

いや約束はしてるなって、また私は思いました。

例えば、本当の別れの日が10年後20年後、または運よく30年後であったとしても、必ず来るんだよね。

そしてその時も、こんな風に始まるんだよねって。

考えた事もなかった夫との別れの日。

いつだってこれからは覚悟の二文字は心の辞書に入れておこうと思いました。

 

瞬きをしたら濡れてしまった瞼をぬぐい、喫茶店ですでに待っていた夫の所に向かいました。

席につくと、夫が神妙な顔をして言いました。

 

「俺は今日からタバコを止めます。」

 

 

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夫は肺がんではありませんでした。でも肺の中に炎症があり、原因不明で検査ばっかりしています。お薬も出ていないので、時々真夜中に咳をしていますが、その回数は明らかに減っています。

しかしお医者様は「わかんねー。」と言うばかりなのに、検査代が高くて家計と言う所が重症になってきました。

でも夫殿の禁煙は1か月と二日目になり、とうとう国営ドラッグから足を洗うことが出来ました。

 

これで三回忌の写真から夫の唇の白い影が消えていたら、お話としては三倍は面白くなるんだけれどそうはいかないのが現実なのでした^^

 

 

コメント (6)
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