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京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

スキマに生きる

2020年04月10日 | 日々の暮らしの中で

さくらさくらさくら盛りを過ぎた公園の桜を見ながらいつもの散歩道から、山道への脇道をとってみた。
ウグイスがすぐ頭上で鳴いた。力強い。よく通るいい声だ。しきりに鳴き交わしている。「ほろろ」と、微妙にビブラートがかかったような鳴きはじめの声を耳にした。通りかかった人が笑顔で近づいてきて、「こんなにきれいに鳴くんですね」と同じように上を見上げて言う。立ち去りがたいウグイスの饗宴だった。

「春は空からさうして土から微かに動く」とは長塚節の『土』にある一節だが、庭だけではなく道路を歩いていてアスファルトのスキマにも春はやってきている。

公園の桜の花びらを集めてタンポポが咲き、

ガードレールの下で白いスミレが咲いていた。

川本三郎氏が、街中のスキマに生きる植物を観察した楽しい本だとして『スキマの植物図鑑』(塚本裕一)を紹介していた(『ひとり居の記』)。
それによると、スミレはスキマを好むらしい。こんな狭い窮屈なところでと思うなかれで、光と水があり、何よりライバルがいないということから、すき間は植物にとって「天国」なのだそうな。著者のスキマ植物に対する愛情を感じ取りながら、川本氏は、すきまに咲く花を「植物の世界のよき世捨て人」などと呼んでいた。

人間にとっては路上のスキマでの自活生活は辛いはずだ。
このコロナ感染拡大の中で、野宿するしかないと行き場を失った若者が報道されていた。
コメント (4)
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