散歩道の頭上でしきりに鳥が鳴くものだから姿はと見上げた先、空を指すこの高い高い梢も、いっせいに若葉を吹きはじめていた。つい先ごろまでまる裸だったクサギの枝枝にも。
長い自粛生活が続く。
京都大学教授・鎌田浩毅さん(地球科学)は、アランの『幸福論』の中から「心配のある時には理屈を考えたりしてはいけない」というキーフレーズを引いて、〈悩み始めたら考えるのをやめて体を動かそう、感情を変えるのは簡単ではないけれど、行動は変えられる〉と勧めていた(朝刊記事)。人が少ない場所を散歩したり、畑仕事も庭仕事もできるし、家の中で体を動かすことなど、工夫の余地はあるだろう。
孫娘は帰国後の2週間の自宅待機を終えても、開いているのは薬局、病院、スーパーぐらいで、レストランやお酒を提供する店などすべて休業、相変わらず外出はままならないようだ。かれこれひと月半が経つ。依然として学校も休校状態で、オンラインでの授業が始まっている。
住まいのある州では感染者がいなくなったと聞いた。それでもあと2週間ほどは閉鎖が続くのだそうな…。長い。日本より厳しいので精神的にもきついことだろう。
〈森羅万象(生きとしいけるもの)。その生命の気は風となり、花となり、木々となり、この乾坤に姿を現し、私たちに話しかけているのです〉(『西行花伝』)。
気持ちを鬱屈させることなく、今、せめて散歩のいっときは、地上の暮らしにある好きことを慈しむ機会でありたい。