京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

ちょっと夜ふかし あと1ページ

2021年10月29日 | こんな本も読んでみた

見上げる梢の枯葉が日を受けて、折しもの強い北風に吹かれるさまが何やら小判のきらめきのように見えた。

読書週間が始まっている。かつての標語では〈秋だからちょっと夜ふかし あと1ページ〉(1994)が気に入っているが、〈ありますか? 好きだと言える一冊が〉(2003)と人に訊ねてみたくなるものもある。今年は、〈最後の頁を閉じた 違う自分がいた〉だと知った。

「映画は終わりが始まりなんだよ」とは小津語録だそうだ。
エンドマークは打たれるが、余韻に浸る中で、さらにその先に続く登場人物の人生を想像する。自分の人生に引き寄せて考え、心の中に根を下ろす作品となることもある。読書にも通じること。


少し前に読み終わったこの2冊。『神様には負けられない』は義肢装具士を目指して努力を重ねる若い3人のこれからを、素直に応援したくなる読み心地だった。身体のあらゆる場所に名前があり、そのすべてに役割がある。神様が命の息を吹き込んで作ったように思える人間の身体は、よくできている。義足の調整を繰り返し、繰り返し、よりよくと調整を試みるとき、「神様には負けられない」という言葉になった。
『見えない星に耳を澄ませて』での主人公は音楽療法士を目指す大学3年生の真尋。最後になって彼女が記憶を作っていることが明かされて、すっと終わった。希望や決意など説明されて終わる。決してとんでもない展開ではない。だが、ちょっと足元をすくわれた気もしないではなかった。こういう終わり方は好きではないと思った。が、想像してよ、ってところなのかな?

「金があったら本を買っておけ。どんな本も3年経ったら役に立つ」って尾崎紅葉が弟子に説いたという。
きらめく小判、いっぱいほしいわ。明日から知恩寺で秋の古本まつり(30-11/3)が始まる。
コメント (2)
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