雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ちょっと一息 ・ 「あはれ」なりけり

2014-06-19 11:00:15 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
     枕草子  ちょっと一息 


「あはれ」なりけり

清少納言が仕えた中宮定子(後に皇后)は、中関白家の姫君として栄華の絶頂を経験しますが、やがて、父道隆の死去と共に不遇となり、道長の娘彰子にその地位を奪われていきます。そして、第二皇女誕生と共に崩御。数え年で二十四歳という短い生涯を閉じています。

清少納言は、中関白家の絶頂も衰退も間近で見ているはずです。定子の悲哀も痛いほど感じ取っているはずです。しかし、枕草子に登場する定子に悲壮感などほとんど見られません。何が清少納言をそうさせたのか、色々な意見が発表されていますが、本当はどうなのでしょうか。私は、それが「少納言さまの心意気」だと感じ取っているのですが。

第二百二十三段には、
『御手にて書かせたまへる、いみじうあはれなり』
という部分があります。
これが、枕草子全体を通して、清少納言が定子を描くのに、「あはれ」という言葉を、悲哀を表す言葉として用いている唯一の例です。
まなじりを決するようにして筆を取っていた清少納言が、ふと漏らしてしまった本音だとすれば、まことに「あはれ」なかぎりです。
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