雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

細殿の遣戸を

2014-06-20 11:00:58 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百三十段  細殿の遣戸を
  
細殿の遣戸を、いと疾う押し開けたれば、御湯殿の馬道より下りて来る殿上人、萎えたる直衣・指貫の、いみじう綻びたれば、色々の衣どものこぼれ出でたるを、押し入れなどして、北の陣ざまに歩みゆくに、開きたる戸の前を過ぐとて、纓をひき越して、顔にふたぎて去(イ)ぬるも、をかし。

細殿の遣戸を、朝、とても早くに押しあけたところ、御湯殿の馬道(メダウ・二つの建物の間に厚板を渡し廊下のようにした所。必要に応じ板を取り外し、馬などを通した)より下りてくる殿上人は、着崩れした直衣や指貫が、ひどくはだけていて、その下の色々な着物もはみ出しているのを、たくしこんだりしながら、北の陣に向かって歩いて行くのに、細殿の開けられた戸の前を通るというので、纓(エイ・冠の後ろに長く垂れている部分)を肩の前へ廻して、顔に覆いをして去っていくのが、可笑しい。


宮中での形式ばった様子ではなく、殿上人がふと息抜きをしている姿を描写しています。
この時、少納言さまは自室からぼんやりと外を見ていたのでしょうか。それともご自身もまた宿直明けだったのでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする