雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ちょっと一息 ・ 田園風景

2014-07-11 11:00:32 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
       プチパロディ枕草子  ちょっと一息 

田園風景

枕草子には、所々で田園風景が描かれています。少納言さまが見た田園風景といったところでしょうか。
もっとも、少納言さまが農村の風景や庶民の生活などを記録に残されているのは、それを目的として観察されたものではなく、神社仏閣に詣でる途中で見た風景や、人々の生活の一端に紛れ込むようにして描かれているに過ぎないように見えます。
宿下がりした時などは、下層の人々と接する機会はもっと多かったと思われますが、それにしても、全体としては表面的な観察に過ぎない面は否めません。
天皇、摂関家を頂点に、厳しい身分制度になり立っていた社会ですから、中下級の貴族階級である少納言さまにとっても、一般庶民は下衆男下衆女に過ぎなかったのでしょう。

それでも、枕草子に描かれている田園風景や庶民生活は、比較的穏やかなものです。
少納言さまに下層階級の厳しい現実に目をやる意識がなかったともいえますが、彼女の生きた時代は、平安時代の絶頂期であり、武士階級が台頭してくる百年あまり前の時代です。藤原氏全盛という歪みはあるとしても、少納言さまを取り巻く生活環境は、比較的良い時代だったのではないでしょうか。
コメント
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