枕草子 第百二十段 無徳なるもの
無徳なるもの。
潮干の潟にをる大船。
大きなる木の、風に吹き倒されて、根をささげて、横たはれ臥せる。
えせ者の、従者勘へたる。
人の妻などの、すずろなるもの怨じなどして、隠れたらむを、「必ず、尋ね騒がむものぞ」と思ひたるに、さしもあらず、ねたげにもてなしたるに、さては、得旅だちゐたらねば、心と出で来たる。
様にならないもの。
潮が引いた干潟にいる大きな船。
大きな木が風に吹き倒されて、根を上に向けて横倒しになって転がっているの。
身分もたいしたことのない男が、従者を叱っている姿。
人の妻などが、つまらぬやきもちを焼いたりして、雲隠れしたらしいが、「必ず夫が自分を探して大騒ぎするはずだ」と思っているのに、夫の方はそんな気配もなく、しゃくなほど平然としているので、女はいつまでも隠れていることも出来ず、自分の方からのこのこ出てきているの。
比較的意味の分かりやすい章段です。
前段が、男性の不実を責めているのと対照的に、ここでは、女性に対して厳しい描写になっています。
いかにも少納言さまらしいバランス感覚だと思います。
無徳なるもの。
潮干の潟にをる大船。
大きなる木の、風に吹き倒されて、根をささげて、横たはれ臥せる。
えせ者の、従者勘へたる。
人の妻などの、すずろなるもの怨じなどして、隠れたらむを、「必ず、尋ね騒がむものぞ」と思ひたるに、さしもあらず、ねたげにもてなしたるに、さては、得旅だちゐたらねば、心と出で来たる。
様にならないもの。
潮が引いた干潟にいる大きな船。
大きな木が風に吹き倒されて、根を上に向けて横倒しになって転がっているの。
身分もたいしたことのない男が、従者を叱っている姿。
人の妻などが、つまらぬやきもちを焼いたりして、雲隠れしたらしいが、「必ず夫が自分を探して大騒ぎするはずだ」と思っているのに、夫の方はそんな気配もなく、しゃくなほど平然としているので、女はいつまでも隠れていることも出来ず、自分の方からのこのこ出てきているの。
比較的意味の分かりやすい章段です。
前段が、男性の不実を責めているのと対照的に、ここでは、女性に対して厳しい描写になっています。
いかにも少納言さまらしいバランス感覚だと思います。