昨年は309冊。だんだん目が衰えてばりばり読み進めない。それでも面白い本は楽しい。最近は合わないなと感じると、「読書メーター」などで感想を見て判断する。イヤミス(読後感が悪い)とかサイコ・ホラーは受け付けないためすぐやめる。
「みをつくし料理帖」や「若冲」などの歴史ものを楽しんだ。ついに年相応と思う。
昨年は「コンゲーム」ものと社会学系に良いものが多かった。
ミステリでは
・ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール ベストに推せる、どんでん返しの連続、娘の死と作家の秘密、それを取り巻くひと癖あるオーロラの人々
・ピルグリム2 ダーク・ウィンター、ピルグリム3 遠くの敵 テリー・ヘイズ 都合の良い設定以外は楽しめる作品、映画的だ
コンゲーム系では良いものが多かった
・ウドブノ 裏原宿・神宮前情報社 ヒキタクニオ 多重のコンゲーム、ヤクザと探偵、元警官が三つ巴、楽しめる、切手のトリックに驚く
・勁草 黒川博行 オレオレ詐欺の金主、掛け子、出し子とヤクザが入り乱れ、コンゲームが破綻、駄目男と半グレが暴走し逃走する、うまい
・ええもんひとつ 山本兼一 江戸の京都で夫婦の営む骨董屋、誠に楽しい、江戸ものにはまる
・司法取引 ジョン・グリシャム 司法相手のコンゲーム、元弁護士、刑務所の友人、その妹が実は結託、真犯人をジャマイカの監獄に入れるというのは秀逸、二重のだまし
・弁護士の血 スティーヴ・キャヴァナー 詐欺師とスリの技術を持った弁護士が娘を誘拐され弁護を強制、そこから解決を図り、最後はトラウマ事件の謝罪に、傑作
相変わらず、活劇ものが楽しい
・スナイパーの誇り スティーヴン・ハンター ロシアのミリは白い死神と呼ばれる美貌のスナイパー、ナチスのユダヤ排斥をロシアで後押しする博士の殺害の偽装に巻き込まれ、反ナチスのドイツ兵とオーストラリアで余生
・Kの日々 大沢在昌 真相が深い、組長誘拐と真犯人探し、恋と探偵、最後が特に良い、読み漏れていたがこれは良い
・雪炎 馳星周 原発廃止の北海道の街、元公安刑事が学友の市長出馬の弁護士、建築会社社長、もと彼女に協力、ヤクザとの交流、抗争、メディア対策、馬とショットガンで犯人の女を逃がす、ワイズ・クラックが面白い傑作
・さよならの手口 若竹七海 不幸な探偵葉山晶が悪女詐欺師や警察に悩まされつつ、失踪した女優の娘を捜索、ハッピー・エンドで探偵登録も解決
社会学では、ピケティとビンカーが出色
・21世紀の資本 トマ・ピケティ 大風呂敷はジャレド・ダイヤモンドばり、理論的章立て、BSとPLからの歴史分析は面白い
・暴力の人類史 スティーブン・ピンカー なぜ暴力が無くなったのか、国、モラル、反対に殺人上位は独裁、マルクス主義、宗教など、ジャレド・ダイアモンドの向こうを張る大風呂敷
・ハーバード×MIT 世界最強の交渉術 ローレンス・サスキンド ためになるコーチング手法、具体的で分かり易いが上級
・性からよむ中国史 スーザン・マン 意外にさっぱり読める、生物的性と社会的性をセクシャリティとジェンダーで区分、中国の同性愛と女性軽視と不足が面白い
地域学では
・京都の町家と町なみ 丸山俊明 町家を論じた労作、歴史や規制、町人、防火、木戸門、虫籠など実証している、建築学会論文の大成
・アメリカは食べる 東理夫 自分の家族の食事、カナダでの生活、祖先に思いを馳せながらアメリカの食をエッセイでまとめる、だんだん良くなる
・イタリアのしっぽ 内田洋子 動物関連でまとめたイタリア紀行、優しいまなざしと上手な文、うまさが光るエッセイ
純文学系も読んでいます
・職業としての小説家 村上春樹 作家の歴史、小説創作の要点、日本での批判とアメリカへの進出、人脈、健康と体験の両立が創作の基盤
・あこがれ 川上未映子 小学生二人の家庭と肉親捜し、透明な感覚で、亡くなった母親のシンボルであるクリスマス・ツリーの横で数年寝ていた悲しみ、紀伊国屋でのPRだと出会いを大切にしたとのこと
・若冲 澤田瞳子 絵の背景に妻の自殺、その弟からの恨みと模倣、隠居と錦市場や政治、友人の絵師との関わり、総国寺・石峰寺との関わりと最後の絵の境地
楽しいユーモア系と歴史系
・有頂天家族 二代目の帰朝 森見登美彦 阿保と毛深い毛玉の狸が楽しい、小松島の金長も出てくる京都の風景と底抜けなストーリー、楽しめた
・我が家のヒミツ 奥田英朗 しみじみ、色々な人生とハッピー・エンド
・天の梯 高田郁 みをつくし料理帖の大団円、ハッピーエンドで大阪に、暖かい、医学と食の未来の大阪に思いを、最後に「腰を低くし出迎える」さまがなんとも言えない
良い本との出会いは、ますます楽しい