倉庫の天井のやや下にはむき出しの太い梁が横にかけてあり、そこには工事用の道具が吊り下げられて保管されていた。我々は壁際に積み上げられた廃材の上に登り、その梁の上を伝わって遊んでいた。当時は冒険科学小説やドラマが流行っていた。自分も、もしかしたら空を飛べると思っていた。飛べないまでも「落ちないだろう」と考えていた。自分はその梁の上を小説の主人公の如く、悪人を追跡するような設定で走り出した。すると案の定、梁の上から足をすべらせ片足が落ちたのだ。このまま数m下まで墜落かと思った瞬間、もう片方の足と腰が梁に吊り下げられていた工事用の道具の取っ手に引っかかりかろうじて落ちるのをまぬがれた。もしこの工事用の道具の固定具合が甘ければ、道具もろとも地面を直撃していただろう。命拾いをした。今でもこの時の恐怖の瞬間を忘れない。