そしてこの席を譲られたご婦人は、いかにも当然とばかりに「うむ」とうなずいてから、わざとらしく「あらーすみませんねー」と口では言うが、当然のような態度でしかもためらうことなく瞬時に着座したのであった。以後、目的地まで私はこのお二人の前に立っているのも気分が悪い。かといって、当然、私はこの高齢者の代わりに着座の権利を持っているはずであるが、それでもその後ろの空いている優先席なんぞには座る気はしない。善行のあとは通常は気分がいいものであるが今日はとても気分がすぐれないのである。この日はなんだか不可抗力の交通事故にあったような思いである。なにげなく件のご婦人二人をみると楽しげに会話をしている。それはそれでよかったのかもしれないが、でも車内は譲り合いである。高齢者とはいえ「常に譲られる立場」にあるわけではない。このお二人が最初から優先席に座れば車両内は大団円であったはずである。高齢者は車内では自由気ままで気配りをしなくてもいいというマナーはないと思うのであるが・・・。