うちは消化器科もやっているので下痢の患者さんも多い。下痢が頻回だとよく患者さんから「これはノロじゃないですか?」と聞かれる。大きな声では言えないがこっちとしてはノロでもロタでもキャンピロバクターでも何でもいいのである。治療法はほとんどみんな一緒であるので、わざわざ原因微生物を突き止めなくてもまあいいやと思ってしまうのである。しかもノロウイルスの抗原定性反応検査は今まで自費であったので手が出にくかった。ところが今回の改訂から保険が効くようになったのである。しかし、対象患者が限定されており、3歳未満、65歳以上、悪性腫瘍が確定している者、臓器移植後の者、免疫抑制剤投与中の者などと、それにしてもあれやこれやと請求制限が設けられており、今だに使いづらいままなのである・・・。ノロウイルスによる高齢の傷病者が多発し広く知られるようになってから久しい。しかしそれからずっと自費のままであったのである。
まあこの加算点数は患者さんに請求していないが、今年の改定から名称が「時間外対応加算」に変更になった。内容的には前述の通りまったく変わりはないが、この「年中無休の電話待機料」は月50円に値上げになった。しかしながらこの名称変更は患者さんから誤解を招きやすそうである。明細書に「時間外対応加算」と記載されるのだが、患者さんは「何これ? 時間外に診察してもらってないよ」とクレームをつけられるおそれがあると思う。なので「これは皆さん方からの電話相談を24時間受け付けていますよという待機料なんです」と説明することになる。説明はもちろんするのであるが、今まで夜中に電話したら迷惑になると遠慮していた患者さんも「なんだ、待機料金とっているなら、これから遠慮なくかけましょう」ということにもなるかもしれない。こちらとしては自分一人でおこなう電話対応の24時間義務はちょっときついのである。まぁでも点数請求してませんが、地域へのサービスとして実際は電話対応やっているんですけどね。
先日も書いたが、この4月から診療報酬が改訂になった。2年に1度の改訂である。いろいろ点数が下げられるものもあれば、申請して加算が認められるものもある。ちょうど2年前の改定時に書いたことであるが、「地域医療貢献加算」というのがあった。なにが地域医療貢献なんだかわからないが、初診以外の患者さんからの電話相談に24時間365日待機しなさい、そうすれば月に20~40円あげますよというやつである。医療従事者に24時間電話待機の拘束を義務付けて、それで月に20~40円あげますよというのはどうかんがえても納得がいかない。うちは在宅支援診療所をやっているので24時間外部から自分の携帯につながるようになっている。患者さんからの相談はとりあえず24時間受けてはいるが、こんな人を馬鹿にしたような加算は請求していない。
4月になって1週間が経過しました。二代目開業してから4年半が経過したことになります。月並みですが早かったですね。あっという間のめまぐるしい毎日でした。とにかく些細なことでも新しいことが毎日おこります。「何でもやります」のヨロズ開業医ですので、たぶんしょうがないのでしょう。開業当初のバタバタ状態と比べると落ち着いた診療にはなってきたようで、なんとなくようやく続けていけるような見込みも感じてきました。しかし、この4月また診療報酬点数の改訂がありましたが、医業の世界もますます厳しくなりました。開業していて経営難で撤退した医院の話もよく聞きます。自分も診療を休まなければならない大病をかかえたら継続は難しいでしょう。やはり何が何でもとにかくは健康一番です。皆様方もご自愛ください。頼れるは国や行政ではなく、己の身体であると実感している今日この頃です。
という話の流れから、証明書を希望する患者さんがまたこられた。インフルエンザに罹患したが、その治癒証明を書いてほしいというのである。保育園や小中学校の生徒以外でインフルエンザの治癒証明を求められることはほとんどない。区内の学校では医師会と約束があり生徒の治癒証明書は一律¥500と決められている。これは医師会員であるので自分も従わざるをえない。しかしこの患者さんはどうも会社に提出するとのことである。まあこの程度の治癒診断は難しいことはない。しかし前述のようにこのような文書は医学的なものというよりも、社会活動における担保にされるわけである。「うちでは診断書は自費で¥3000かかりますが・・・」と申し上げたところ、「あっ、いやっ、そんなんじゃなくていいから、もっと簡単で安い、ちょっとした証明書のようなものでいいから・・・」と。 う~ん、やはり受け止められ方は千差万別である。患者さんにとっては医師の証明であってもたかが紙1枚、「ちょっとした」という感覚なのであろう。
診断書の類は保険診療にはならないため自費となる。したがってこちらで価格を自由に設定できる。大学病院では¥5000くらいであっただろうか? いずれにせよ大学病院で何通診断書や証明書を書いても自分の手元には一銭も入ってこない。さて自分のクリニックでは¥3000に設定している。これを高いととるか安いととるかは人それぞれであろう。自分は今後、自分が負わされるかもしれない社会的なリスクを考慮すれば、まさに破格の値段(出血大サービス)と考える。リスクと天秤にかけたら¥3000もらうよりも診断書を書かないことを選択したいくらいである。とはいえ、細かな治癒証明書も含めるとかなり多くの診断書というものを書かざるをえず、その都度「あぁトラブルになりませんように」と祈っているのだ。開業して4年半になろうとしている。開業してから診断書をめぐって小さなトラブルは3件あった。まあ大事にいたらなかったが、こちらとしては面倒くさいことこの上ない。まさに診断書・証明書なんて患者さんへのサービスでしかない。できれば書きたくはないのだが・・・。
途中で途切れてしまったが大分前の日記の続きである。大昔、先輩から聞いた話であるが、もちろんその話の真偽はさだかではない。その先輩の知り合いの医者の話であるが、ある地方で検死を警察から依頼された。現地に行くと顔見知りの警察官から「あー先生、どうも自然死みたいです。事件性はないようなので、面倒だからこのまま病死で検案書かいてくださいよ」といわれたので、そのまま検案書を「病死」としたそうである。ところが大分後になって実はこれは刑事事件だったようであり、その責任が追及されるにいたった。警察側は「先生からの診断では病死になっております。なので我々も捜査を打ち切りました。医師からの証明があったのでやむを得ません」と完全に責任を医師におしつけてきたのである。この話を聞いて医師の診断・証明とは医学を離れて、時に社会での種々の事柄の担保に用いられるものだと痛感したのである。この医師もうかつであったろう。「信ずるものは騙される」である。己がきちんと診察(検案)をしなかったための結果なのである。確かに現場での会話は証拠として残らない。残るのは書類としての公文書(私文書)だけなのである。怖いっ!
今年度より処方箋一般名加算という新点数が導入された。処方箋の投薬を商品名ではなく一般薬品名で記載すると数点もらえるものである。ところが昨日から開始されたこの制度であるが、実際は一般薬品名はすべての薬剤に存在するはずである。ところがこの加算の請求は厚生省が指定したマスター(台帳)の中に一般名が載っている薬品のみに限られるのである。昨日1日目が終わって気がついたが、この台帳の中に一般名が載っている薬剤はあまり多くはないのである。うちのクリニックで出す薬品にたまたま一般名が存在しないだけなのかもしれないが、とんだぬか喜びだった。特定商品名を処方箋にかかさせず安いジェネリック薬品を促進させようとするならもっと違うやり方があるだろうにと思うのだが。
今年は寒かったせいか染井墓地の桜もまだ咲いておりませんが、いよいよ本日から新年度の開始です。今年ももう今年も3ヶ月が過ぎてしまいました。早いものです。今年度は2年に一度の診療報酬改定の時期で、4月1日よりがらっと体系が変わりました。それなので電子カルテもバージョンをかえましたが、早くその新体系になれないといけないでしょう。処方箋も薬の商品名でなく一般名で書くように奨励されていますので、そのようにしたいと思いますがなかなか手間がかかります。それほどお待たせしないとは思いますが、混んでいるときは待ち時間が長くなる可能性もありますので、どうぞ慣れるまでご容赦ください。午後の診療はすいていますので、時間帯に余裕のあるかたは午後に来院くださると助かります。