社長に言われて、金をおろしに行った。
番号札を取る。次の順番だ。
ここは主婦雑誌とか地域雑誌なんかがいろいろ置いてあって、順番待つのが楽しみでしょうがないのだが、利用客もそんなに多くないので、あまり待つことは無い。
地域雑誌をパラパラ読んでいると「いつもお世話になっています。」と挨拶するものが居る。
ここの支店長である。
うちの会社は資金繰りが良くて嬉しい客(しかも時々借りてくれる)なのと、社長が怖いので何となく私にも挨拶してしまうのだろうか・・と勝手に想像する。
現金を受け取ると、窓口のお姉さんが「実は私達、来月で転勤なんです。」と言う。
「え!お二人共ですか?」
「そうなんです。」
「よく担当の男の人は定期的に代わるけど、窓口の人もそうだとは知りませんでした。」
「そうなんですよ。」
私はこう見えて、銀行の窓口のお姉さんには覚えられやすいキャラなのだ。
雨の日の全身黒ガッパを店の片隅で脱ぎ脱ぎしながら通帳を取り出す様とか、現金(大金)をおろした時のカバンに詰め込んで決死の覚悟で帰る様とか、そう言う様子がウケるらしい。
窓口の彼女は「今までありがとうございました」と挨拶しながら、隣の窓口のお姉さん(と言っても私とタメぐらい)を指差して、「彼女が最後にどうしてもsakeさんに訊きたい事があるそうで、いいですか?」と言う。
私に最後に訊きたいこと?!
この場に及んで一体何が知りたいのか、まぁ何でもドンと来い!と思って、「どーぞどーぞ、何でも遠慮なく訊いてください。」と言って、彼女の次の言葉を待った。
「いつも気になっていたのですが、sakeさんの髪のアップはどうやっているんですか?」
・・ズルッ。
「あぁ!これはですねぇ、すごく簡単なんですよ!髪を束ねてクルクルねじり上げて、てっぺんで大きめの櫛みたいなピンでグサッと刺します。こう。(指差す)」
「私、不器用でなかなか同じようにはできないんです。」
「そうそう!私もそうなんですよ!普通のアップはできないんです。これなら大丈夫!クルクルねじって、てっぺんに近い所でこう!水平にグサッと刺すだけ。このピンは駅前の○○○で300円でした。」
と言うと、窓口の二人は笑った。
私も笑った。
最後の別れでそこまで言うならば、ここで実際にやってあげようかと思ったが、他の客や店員の目もあることなので止めた。
入社して、彼女達と出会って1年半になる。
月に2~3回しか会ってないけど、どこか通じる心と心。
特別に今度会いましょうって間柄ではないから
よけいに一期一会
またいつかどこかで、会うことがあるのだろうか。
そして、これから私を待っていること
人も景色も、道もすべてが、たった今だけのことなのだ。
車の練習も父の面会も、いつまで続くかは分からない。
番号札を取る。次の順番だ。
ここは主婦雑誌とか地域雑誌なんかがいろいろ置いてあって、順番待つのが楽しみでしょうがないのだが、利用客もそんなに多くないので、あまり待つことは無い。
地域雑誌をパラパラ読んでいると「いつもお世話になっています。」と挨拶するものが居る。
ここの支店長である。
うちの会社は資金繰りが良くて嬉しい客(しかも時々借りてくれる)なのと、社長が怖いので何となく私にも挨拶してしまうのだろうか・・と勝手に想像する。
現金を受け取ると、窓口のお姉さんが「実は私達、来月で転勤なんです。」と言う。
「え!お二人共ですか?」
「そうなんです。」
「よく担当の男の人は定期的に代わるけど、窓口の人もそうだとは知りませんでした。」
「そうなんですよ。」
私はこう見えて、銀行の窓口のお姉さんには覚えられやすいキャラなのだ。
雨の日の全身黒ガッパを店の片隅で脱ぎ脱ぎしながら通帳を取り出す様とか、現金(大金)をおろした時のカバンに詰め込んで決死の覚悟で帰る様とか、そう言う様子がウケるらしい。
窓口の彼女は「今までありがとうございました」と挨拶しながら、隣の窓口のお姉さん(と言っても私とタメぐらい)を指差して、「彼女が最後にどうしてもsakeさんに訊きたい事があるそうで、いいですか?」と言う。
私に最後に訊きたいこと?!
この場に及んで一体何が知りたいのか、まぁ何でもドンと来い!と思って、「どーぞどーぞ、何でも遠慮なく訊いてください。」と言って、彼女の次の言葉を待った。
「いつも気になっていたのですが、sakeさんの髪のアップはどうやっているんですか?」
・・ズルッ。
「あぁ!これはですねぇ、すごく簡単なんですよ!髪を束ねてクルクルねじり上げて、てっぺんで大きめの櫛みたいなピンでグサッと刺します。こう。(指差す)」
「私、不器用でなかなか同じようにはできないんです。」
「そうそう!私もそうなんですよ!普通のアップはできないんです。これなら大丈夫!クルクルねじって、てっぺんに近い所でこう!水平にグサッと刺すだけ。このピンは駅前の○○○で300円でした。」
と言うと、窓口の二人は笑った。
私も笑った。
最後の別れでそこまで言うならば、ここで実際にやってあげようかと思ったが、他の客や店員の目もあることなので止めた。
入社して、彼女達と出会って1年半になる。
月に2~3回しか会ってないけど、どこか通じる心と心。
特別に今度会いましょうって間柄ではないから
よけいに一期一会
またいつかどこかで、会うことがあるのだろうか。
そして、これから私を待っていること
人も景色も、道もすべてが、たった今だけのことなのだ。
車の練習も父の面会も、いつまで続くかは分からない。