いよいよ決戦の火蓋がきられました。
祐道すゝミ出て十左衛門
に申けるハ/助之進父子当時かくれなき小筒の上手にて御座候に
相かゝりに御懸り被成候事大事に御座候間私父子の右の方の畑之
中より遠く廻り悪口を申的をせかせかゝり申候ハゝ藤田必定
私共鉄炮打懸け可申其火音相図に二ノ屋込合之内二旦那
御両人様ハ此左之方之高見ねを小楯ニ御仕寄被成彼者共か私
父子を討申候と一同ニ御懸り被成候ハゝ御利運慥成る事にて此節
御矢面之御奉公勤上/と云捨て祐道父子并酒屋伊右衛門一面
二并右の方之畑ノ中より土烟ふみ立て声々によ者ハつて
刀を振て討てかゝる山名内之加々見権平ハ御矢面は前川様
之衆斗の持方にも有之ましと/此方より壱人も矢面に成候者
なかりしと後代迄沙汰に逢はんも口惜し且主君の御名も
出し事なり/とて祐道に相ならひて討てかゝる酒屋伊
右衛門ハ常に多言ならぬ口おもき者也しか此節大声上て
主之矢面にたつ事ハ成にくき事の様に連々聞伝へ成程
左様に可有事と我もおもひ居けるに此場に成りてハ思ひし
に違扨々成りよき心安き事哉/とから/\笑て討かゝるを各
声々に/あの臆病者めおのれよりか相手になるこそ残念なれ
但我等ともか様なる剛の者にハ己レ共か躰の臆病者の打鉄炮の
あたるものにてハなきそ鉄炮にても石火矢国崩しにても
何百挺もうたハ打て見よ此方共は花の散る様のもおもはす斜め
と飽まて雑言し的をせかせて討てかゝる処をいかりにいかつ
たる藤田父子祐道か智略におとされ大にせき上て三挺の
鉄炮つるへ打ト打かくる祐道・伊右衛門ハ一同に水落を弐ツ玉に
て打ぬかれ祐道ハ弐間斗走り懸壱尺五寸ほと飛上つて前へ
かつ者と伏す伊右衛門ハ鉄炮請とめたるそ心得たりとこたへて
走りかゝりけるを前に弐尺斗りの畑の峯の有けるにどうと落
て起もあからて死けり加々見権平は乳の上のまん中弐ツ玉ニ而
打連血煙おひただしく立て是も弐間余り走り懸つて
かつ者と伏す藤田ハ聞ゆる早打の上手にて烟の中に早詰し
て父子共に早打するに烟て矢筋不分明ニ也有けん西郷
平十郎右の高腰を打けれ共少しもひるます討て懸る父子
か内何レか打たるとハ知レさりけり一放ハ者つ連けり此鉄炮の
火音聞と一同ニ左之方北の峯かけ飛か如くに討て懸れ
者藤田父子平生鍛錬の早打の秘術を尽し父子一同に打
かくるといへ共間相(ママ)以之外近く其上極て急成る事故ニさし
もの藤田も此ニあわてゝや有けんまた山名・前川運や強かり
けん両人ハ手も不負さ連とも山名内金光小右衛門高腰を打
れ小膝をつく同鑓持弥右衛門と云もの末々なれとも謐りたる
もの也しか鑓をハ主人に渡して我等も此侭にて只おる
へき所かとよ者はり刀えお抜て十左衛門脇よりつとかけぬけ
て先へすゝむ所を高もゝを被打ころひける其間合甚た近
かけれハ藤田父子鉄炮なけすてけれ共鑓を取る隙もなく
直に刀を抜いて討合けり助之進をハ十左衛門鑓付けるか助之進
につこと笑て鑓をたくり寄る所を十左衛門踏付て留めをさす
縫殿進ハ大勢を相手にし戦ひけるか父か討るゝを見て一文字
にかけ来り十左衛門の左之方の小膝を折て上ケ切に切かくる
家頼共それ/\縫殿進か懸り申候と云を聞十左衛門ハ此とき
助之進を踏付て留メを二タ刀さす時なり殊ニ左勝手にて
急に取合せかたく右之方江横飛に壱丈余り飛ひらくを
家来共中にへだたり縫殿進を取こめ討ンとす縫殿進ハ
四人をあいてにして前後左右に相當り働く事鳥の飛より
も猶軽し此時十左衛門横飛ニ飛ひ被申ける所ハ高さ四尺はかりに
よこ六尺余の土手洪水の節の水よけ乃塘也十左衛門無双の軽
わざを得られけれ者たやすく飛越へ即時にまた土手を走り
越へて鑓を者助之進に突立て被置ける故に直に刀にて相
戦ふ此土手今ニ至りて年々水よけの修復有て今者
高さ六尺余地なみ八尺程に成て有今に至つて此土手を
山名殿の飛土手と所之農人者名を呼ふとや扨縫殿進ハ又
十左衛門に討かゝり火花をちらして相戦ひけるか咽やかわき候ん
横きれに小川の端に走り行て左之手にて水をすくひて
飲む所を十左衛門かけ付て鑓をもつて背より突通す縫殿
進拂ふ太刀にて十左衛門左の足に少し手負けり藤田か家頼
共ハ何も命を惜まず切合けるか若黨壱人中間弐人ハ手負
落失ける
現在の進捗率60%ほどです。
祐道すゝミ出て十左衛門
に申けるハ/助之進父子当時かくれなき小筒の上手にて御座候に
相かゝりに御懸り被成候事大事に御座候間私父子の右の方の畑之
中より遠く廻り悪口を申的をせかせかゝり申候ハゝ藤田必定
私共鉄炮打懸け可申其火音相図に二ノ屋込合之内二旦那
御両人様ハ此左之方之高見ねを小楯ニ御仕寄被成彼者共か私
父子を討申候と一同ニ御懸り被成候ハゝ御利運慥成る事にて此節
御矢面之御奉公勤上/と云捨て祐道父子并酒屋伊右衛門一面
二并右の方之畑ノ中より土烟ふみ立て声々によ者ハつて
刀を振て討てかゝる山名内之加々見権平ハ御矢面は前川様
之衆斗の持方にも有之ましと/此方より壱人も矢面に成候者
なかりしと後代迄沙汰に逢はんも口惜し且主君の御名も
出し事なり/とて祐道に相ならひて討てかゝる酒屋伊
右衛門ハ常に多言ならぬ口おもき者也しか此節大声上て
主之矢面にたつ事ハ成にくき事の様に連々聞伝へ成程
左様に可有事と我もおもひ居けるに此場に成りてハ思ひし
に違扨々成りよき心安き事哉/とから/\笑て討かゝるを各
声々に/あの臆病者めおのれよりか相手になるこそ残念なれ
但我等ともか様なる剛の者にハ己レ共か躰の臆病者の打鉄炮の
あたるものにてハなきそ鉄炮にても石火矢国崩しにても
何百挺もうたハ打て見よ此方共は花の散る様のもおもはす斜め
と飽まて雑言し的をせかせて討てかゝる処をいかりにいかつ
たる藤田父子祐道か智略におとされ大にせき上て三挺の
鉄炮つるへ打ト打かくる祐道・伊右衛門ハ一同に水落を弐ツ玉に
て打ぬかれ祐道ハ弐間斗走り懸壱尺五寸ほと飛上つて前へ
かつ者と伏す伊右衛門ハ鉄炮請とめたるそ心得たりとこたへて
走りかゝりけるを前に弐尺斗りの畑の峯の有けるにどうと落
て起もあからて死けり加々見権平は乳の上のまん中弐ツ玉ニ而
打連血煙おひただしく立て是も弐間余り走り懸つて
かつ者と伏す藤田ハ聞ゆる早打の上手にて烟の中に早詰し
て父子共に早打するに烟て矢筋不分明ニ也有けん西郷
平十郎右の高腰を打けれ共少しもひるます討て懸る父子
か内何レか打たるとハ知レさりけり一放ハ者つ連けり此鉄炮の
火音聞と一同ニ左之方北の峯かけ飛か如くに討て懸れ
者藤田父子平生鍛錬の早打の秘術を尽し父子一同に打
かくるといへ共間相(ママ)以之外近く其上極て急成る事故ニさし
もの藤田も此ニあわてゝや有けんまた山名・前川運や強かり
けん両人ハ手も不負さ連とも山名内金光小右衛門高腰を打
れ小膝をつく同鑓持弥右衛門と云もの末々なれとも謐りたる
もの也しか鑓をハ主人に渡して我等も此侭にて只おる
へき所かとよ者はり刀えお抜て十左衛門脇よりつとかけぬけ
て先へすゝむ所を高もゝを被打ころひける其間合甚た近
かけれハ藤田父子鉄炮なけすてけれ共鑓を取る隙もなく
直に刀を抜いて討合けり助之進をハ十左衛門鑓付けるか助之進
につこと笑て鑓をたくり寄る所を十左衛門踏付て留めをさす
縫殿進ハ大勢を相手にし戦ひけるか父か討るゝを見て一文字
にかけ来り十左衛門の左之方の小膝を折て上ケ切に切かくる
家頼共それ/\縫殿進か懸り申候と云を聞十左衛門ハ此とき
助之進を踏付て留メを二タ刀さす時なり殊ニ左勝手にて
急に取合せかたく右之方江横飛に壱丈余り飛ひらくを
家来共中にへだたり縫殿進を取こめ討ンとす縫殿進ハ
四人をあいてにして前後左右に相當り働く事鳥の飛より
も猶軽し此時十左衛門横飛ニ飛ひ被申ける所ハ高さ四尺はかりに
よこ六尺余の土手洪水の節の水よけ乃塘也十左衛門無双の軽
わざを得られけれ者たやすく飛越へ即時にまた土手を走り
越へて鑓を者助之進に突立て被置ける故に直に刀にて相
戦ふ此土手今ニ至りて年々水よけの修復有て今者
高さ六尺余地なみ八尺程に成て有今に至つて此土手を
山名殿の飛土手と所之農人者名を呼ふとや扨縫殿進ハ又
十左衛門に討かゝり火花をちらして相戦ひけるか咽やかわき候ん
横きれに小川の端に走り行て左之手にて水をすくひて
飲む所を十左衛門かけ付て鑓をもつて背より突通す縫殿
進拂ふ太刀にて十左衛門左の足に少し手負けり藤田か家頼
共ハ何も命を惜まず切合けるか若黨壱人中間弐人ハ手負
落失ける
現在の進捗率60%ほどです。