Sightsong

自縄自縛日記

ハノイのレーニン像とあの世の紙幣

2012-07-01 23:45:47 | 東南アジア

4年ぶりのハノイ。夕方、ちょっと空いた時間に、レーニン像や何かを見て歩き疲れ、カフェでジュースを飲みながら外を眺めていると、路上に馬の人形を置いて火を付けている人がいる。

同行のベトナム出身者によると、あの世に行った人たちに、モノやオカネを送り届けるという儀式なのだった。確かに、馬が燃えてくると、その上に、金塊を意味するような箱や、ウソの紙幣をさらに置いて燃やしている。

今日はそんな日。路上のあちこちには、明らかなコドモ紙幣や、米ドル札のコピーが落ちていた。地獄の沙汰も金次第、ではなく、現世の延長か。(地獄じゃない。)

※コンデジで撮影

●参照
ハノイの文廟と美術館
ハノイの街
『ヴェトナム新時代』、ゾルキー2C
石川文洋『ベトナム 戦争と平和』


池田和子『ジュゴン』

2012-07-01 12:39:00 | 環境・自然

ベトナムへの行き帰りに、池田和子『ジュゴン 海の暮らし、人とのかかわり』(平凡社、2012年)を読む。

生育地の北限である沖縄本島では、辺野古の新基地建設などによって絶滅の危機にさらされているジュゴンだが、実は、かつては八重山でもかなりの数が棲んでいた。激減の理由は乱獲である。本書は、そのジュゴン喰いについてさまざまに紹介している。辺見庸『もの食う人びと』(角川文庫)において、フィリピンでのかつてのジュゴン喰いや、柳田國男南方熊楠によるジュゴンの味や効能の紹介を読んで以来、ずっと知りたかったことだった。やはり美味であったようで、石垣島近くの新城島では国王への献上品でもあった。なお、現在でも、オーストラリアでは、アボリジニの伝統的な漁を保護する観点から、ジュゴン喰いが許可されているのだという。

現在の沖縄におけるジュゴンは、勿論、乱獲やジュゴン喰いをうんぬんするような数がいるわけではなく、保護されなければならない対象である。著者は、辺野古などの政治問題にあまり踏み込むことはしていない。混獲の事故を防ぐための方法や、世界自然遺産登録などの枠組利用によって、ジュゴンを護っていこうと提案している。

そもそも、本書は、ジュゴンを巡る問題というより、むしろジュゴンのキャラクターを紹介することを目的としているのである。その意図は成功しており、鳥羽水族館に観に行きたくなってくる。マナティーとの違いも具体的に書かれており、納得できる点が多い。

もっとも、鯨やイルカに顕著なように、動物を人格化すると保護問題がおかしな具合に歪んでくることが多い。しかし、まずは知らなければダメである。推薦。

●参照
『テレメンタリー2007 人魚の棲む海・ジュゴンと生きる沖縄の人々』(沖縄本島、宮古、八重山におけるジュゴン伝承を紹介)
澁澤龍彦『高丘親王航海記』(ジュゴンが「儒艮」として登場)
タイ湾、どこかにジュゴンが?
名古屋COP10&アブダビ・ジュゴン国際会議報告会
ジュゴンと生きるアジアの国々に学ぶ(2006年)
ジュゴンと共に生きる国々から学ぶ(カンジャナ氏報告)
辺野古の似非アセスにおいて評価書強行提出
二度目の辺野古
高江・辺野古訪問記(2) 辺野古、ジュゴンの見える丘