Sightsong

自縄自縛日記

エドワード・ヤン『恋愛時代』

2012-07-14 22:41:24 | 中国・台湾

エドワード・ヤン『恋愛時代』(1994年)を観る。

台北で働く同世代の若者たち。人物関係図を描いたら、きっと恋愛の関係線が交錯しまくるような有様だ。

これだけ多くの話をたった2日間に押し込め、ひたすらスピーディーに世界をぐるぐると廻す。登場人物たちは、みんな、泣き叫び、鉛のような苦しみと悩みを抱えながら、それでも顔と身体を前面に出し、次の展開に自ら斬り込んでいく。大した手腕である。

冗談のような恋愛映画だが、羨ましくてたまらない。もちろん恋愛が、ではなく、停滞しないエネルギーが、である。上り坂社会において自分の脚でジャンプしたり墜落したりする人生。う~ん。


イエメンの映像(4) バドゥル・ビン・ヒルスィー『A New Day in Old Sana'a』

2012-07-14 12:11:58 | 中東・アフリカ

バドゥル・ビン・ヒルスィー『A New Day in Old Sana'a』(2005年)を観る。

イエメン首都のサヌアに滞在するイタリア人の写真家、フェデリコ。彼のイエメン人助手タリクは、ある夜、自分が婚約者ビルキスに贈った白いドレスを着た女性が、道で躍っているのを目撃する。それはビルキスではなく、別の女性イネスだった。ビルキスの家は金持ちで、そのドレスも窓から外に投げ捨てられていたのを、イネスが拾って、つい着て躍ってしまったのだった。結婚の日が近づくと、タリクは、ビルキスではなくイネスを愛していることを自覚する。イネスと一緒に逃げようと約束するタリクだが、なかなか外出できず、そしてイネスは毎晩約束の橋に立つ。

ヴェールで顔を覆った女性たちが、実はもの言わぬ存在ではなく、人の噂話が大好きだという設定が面白い。ここだけの話だが、ビルキスが破廉恥にも夜中に躍っていた(良家の娘としてあり得ない)、いやイネスがドレスを盗んだのだ、いや実はタリクはイネスを愛しているのだ、などと、ゴシップが凄まじいスピードで拡散していく様子は、別の言語体系かと思わせるほどだ。

フェデリコが使うカメラは、ニコンF3と、ニコマートの何か(輸出仕様のニッコールマット)。ずっとどこかに滞在して写真を撮るなんて羨ましい限りだ。それにしても、「ニコマート」と聞くと、どうしてもイメージするのはスーパーマーケットであり、それが入手を妨げてきた。

サヌアの家々は相変わらずデコレーションケーキのようだ。サレハ大統領の退陣を求めた騒乱のあと、街はどうなっているのだろう。

●参照
イエメンの映像(1) ピエル・パオロ・パゾリーニ『アラビアンナイト』『サヌアの城壁』
イエメンの映像(2) 牛山純一の『すばらしい世界旅行』
イエメンの映像(3) ウィリアム・フリードキン『英雄の条件』
イエメンとコーヒー
カート、イエメン、オリエンタリズム
イエメンにも子どもはいる
サレハ大統領の肖像と名前の読み方