Sightsong

自縄自縛日記

デイヴィッド・マーティンという写真家

2012-07-06 23:41:08 | 東南アジア

ベトナム北部の町、サパ

ベトナム出身の仕事仲間が、良い写真ギャラリーがあるから行こうと誘ってくれて、いそいそと出かけた。ところが、ある筈の場所には別のアートギャラリーしかない。彼がいろいろ訊いて、どうやら、その米国人写真家デイヴィッド・マーティンは、最近亡くなったのだということがわかった。旅の途中、寝台列車の同じコンパートメントで愉しく話しこんだことがあるという彼は、とても残念がった。

もしかしたらと別のホテルに行ってみると、その壁には、多くのデイヴィッド・マーティンの写真が飾られていた。知己のあったオーナーが引き取っていたのだった。

写真群は、サパのさまざまな貌を捉えたものだった。少数民族の女性たち。山々。棚田。稲刈り。水牛。農家の中でくつろぐ人びと。眼を奪われる作品も少なくない。ずっと同じ場所に腰を据えなければ、このような写真を撮ることなどできなかっただろう。

小さい解説板によると、写真は、キヤノンEOS 5DマークIIで撮られている。そのデジタルプリントを販売していると書かれており、ホテル従業員に話をすると、ほどなくして多数のプリントを持った女性があらわれた。その中から気に行った二枚を選び、手に入れた。

そこで同行者が、女性に対し、驚くように言った。

「あなたはこの写真に写っている人?」

「そうです。わたしはデイヴィッドの助手として働き、英語も覚えました。デイヴィッドは残念ながら癌で亡くなりました。確かに、寝台列車に愉しい仲間がいたと言っていましたよ」

●参照
2012年6月、サパ