所用があって、千駄木に足を運んだ。この町には、ハタチになるちょっと前から4年以上住んだ。それも20年くらい前のことなので、何やら新しい店がたくさん出来ている。懐かしい店は消えてなくなっていたり、どこにあったか記憶が混乱したり。
その頃から、「乃池」という寿司屋にはずっと行ってみたいと憧れていた(住所は谷中)。何しろ、好物の穴子寿司をウリにしている店である。しかし、寿司屋というものは、学生にとっては敷居が高い。そんなわけで、好機到来とばかりに、二十年来の恋を成就させた。
穴子寿司は八貫で2,500円。フワフワに柔らかく煮てあって、濃厚なツメが塗ってある。期待通り旨かった。・・・だが、もう、「まだ行ったことがない憧れの店」ではなくなったわけであり、胸にぽっかりと穴が開いたようだ(大袈裟だな)。
ところで、道を挟んだ向かい側には、「朝日湯」という銭湯があって、定休日以外には毎日通っていた。「谷根千」(谷中・根津・千駄木)に住むなら、風呂なしで銭湯に通うのが粋というものだと言い張っていた。(探したらホームページがあった。懐かしくて吐きそうになる)
その横には「砺波」という小さい中華料理屋があって、湯を浴びた帰りに、洗面器を持って立ち寄り、春巻とかアジフライをよく食べた。
というようなことを思い出しながら乃池を出ると、目の前には、まるで変わらぬ「朝日湯」と「砺波」があった。冗談のようだ。ぜひまた食べに来て、こっそりと感慨にひたらなければならぬ。
iphoneで撮影