友人に借りて、小山田浩子『穴』(新潮社、2014年)を読む。
最近はもう誰が芥川賞や直木賞を受賞したのか記憶していないが、とにかく、今年の芥川賞受賞作である。
本書には短編3作が収録されている。いずれにおいても、田舎の、淀んだ人間関係と、空気のように漂い憑りつく悪意のなかで、突然、「向こう側」の狂気が姿をあらわす。わたしも田舎の出であるから、この感覚はわかるつもりではある。
しかし、まったく目を見開くような作品ではない。自らの裡にこもって、受動態の微妙な感覚をかたちにして、さらに、読み手に暗に共感を求めるようなものなど、読まなくてもよい。