銀座ニコンサロンで、本橋成一さんの写真展『炭鉱』が開かれている。
ここに収められているのは、九州と北海道の炭鉱。筑豊では、あの上野英信さんに案内されたのだという。
狭く真っ暗な中での炭鉱労働、素っ裸になっての着替え、炭鉱住宅の子どもたち、悲惨な炭鉱事故の後。もちろん貴重な記録なのだが、写真群から漂ってくる空気は、暗く厳しい社会のルポが放つものとは明らかに違っている。真っ暗な坑道の中では、爆発防止タイプのストロボを持っていない写真家のために、男たちがヘッドランプの光を集めてくれたのだという。子どもたちの文字通り屈託ない笑顔も、オトナの写真家に向けられたものではない。つまり、本橋さんの人柄のようなものが表れた写真群だと思えるのだがどうか。
●参照
本橋成一『バオバブの記憶』
池澤夏樹・本橋成一『イラクの小さな橋を渡って』
本橋成一『魚河岸ひとの町』
本橋成一『写真と映画と』
奈賀悟『閉山 三井三池炭坑1889-1997』
熊谷博子『むかし原発いま炭鉱』
熊谷博子『三池 終わらない炭鉱の物語』
上野英信『追われゆく坑夫たち』
山本作兵衛の映像 工藤敏樹『ある人生/ぼた山よ・・・』、『新日曜美術館/よみがえる地底の記憶』
勅使河原宏『おとし穴』(北九州の炭鉱)
友田義行『戦後前衛映画と文学 安部公房×勅使河原宏』
本多猪四郎『空の大怪獣ラドン』(九州の仮想的な炭鉱)
佐藤仁『「持たざる国」の資源論』
石井寛治『日本の産業革命』