この著者、大学教授・アメリカ文化研究者にして恋愛の達人、である。
まことこのような本を著すのに適されている、と思う。
ただ、このタイトルは内容に即していない。
(おそらく編集者が、オヤジの下世話な好き心を煽るために考えたのだろう)
実際は「恋愛英語の基礎知識」とした方が、内容に即しているし、女性読者の購読意欲を刺激して、結果として発行部数をもっと伸ばしたと思う。
まぁ、編集部批判はともかく、内容はよく書かれている。
具体的な例文として次の2作品が取り上げられている。
『Sex and the City』(通称SATC、主人公のキャリーがミスタービッグがthe One(後述)であるかどうか悩んで何シーズンにもわたって悶々とする←著者文中表現)
『When Harry Met Sally』(邦題:『恋人達の予感』、恋愛・友情を扱った映画の古典)
さて、具体的にいくつか興味深い表現を紹介する。(転載)
the One
soul mateであれなんであれ、「自分にとってこの人が最良の相手だ」「自分が求めている相手、自分が人生を共にしたいのはこの人だ」と思える相手のことを、the Oneと言う。世の中に同類のものは他に存在しない、唯一の相手、という意味がこめられているのであるから、定冠詞のtheをつけて、oneの初めは大文字で表記することが肝心である。
high maintenance, low maintenance
高級スポーツカーのように、調子良く行っているときにはとても愉快であるものの、その人を満足させてその愉快さを保つためにはしじゅうさまざまな注意や投資が必要な人のことである。言葉やプレゼントなどを通した愛情表現や、その人がどれだけ魅力的かということを伝える行為を続けていかなければ、機嫌を損ねたり不安がったりするのがhigh maintenanceな人である。逆にlow maintenanceな人とは、精神的にも物質的にも自立していて、交際相手がそれほど手間ひまかけたり気を遣ったりしなくても、自分や二人の関係について自信と満足をもって暮らすような人のことである。
in touch with one's emotions
自分の感情を認識・把握し、それに正直に対応している、といったことである。
Poul is really not in touch with his emotions.
(ポールはほんとうに自分の感情に背を向けているのよ)
何か失敗したり、恋人にふられたり、プライドを傷つけられたりして、本当は深い傷や悲しみを負っているのに、そうした自然な感情を自分で受け止めようとせず、無理に強がっている人とか、また、誰かを深く愛するようになってもその感情に素直になれなかったり、自分が本当に求めているものに敢えて背を向けていたりするような人について、こうした表現をする。
最後に、私がこの本を読んでいて、「実際、使ってみたい」、という表現があった。
別れの際の、この表現である・・・
I can't give you what you want.
(君の求めているものを僕はあげられない)
う~ん、一度でいいから使ってみたい!
【ネット上の紹介】
性愛に関する英語表現には、アメリカの文化が如実に反映している。「デートする」とは具体的に何を指すのか。なぜ正常位が「宣教師の体位」と呼ばれるのか。「ティーバッグする」とは何のことか…。その様は、滑稽で、エッチで、時に愛おしい。アメリカで“ネットを通じた出会い”を実践した記録『ドット・コム・ラヴァーズ』で話題を呼んだ著者が案内するアメリカ恋愛模様。