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「冥途のお客」佐藤愛子

2013年07月11日 22時27分03秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「冥途のお客」佐藤愛子

佐藤紅緑氏の娘さん・佐藤愛子さん。
田辺聖子さんと並ぶユーモア小説の書き手で、文壇の老舗。
・・・そんなイメージであった。
こんなに霊感の強い方、と知らなかった。

登場する作家も、超有名人、巨匠ばかり。
遠藤周作さん、開高健さん、有吉佐和子さん、川上宗薫さんの4人が揃って訪ねてくる。
・・・幽霊として!
すごすぎる、豪華すぎる!

本作品は霊感エッセイとも言うべき作品で、様々なエピソードが語られる。

P137
ある時期から私は旅に出るとホテルの部屋で夜通し部屋が割れそうなラップ音に襲われたり、照明やテレビの明滅に悩まされることが多くなった。そんな時は、部屋に塩を撒いて、「南無妙法蓮華経」を唱えなさい、と美輪明宏さんに教えられた。塩を撒く時は、土俵入りの力士のように勢いをつけて撒くこと、「南無妙法蓮華経」と唱える時は、まず下腹に力を込めて怒号すること、それが大切で、つまりその勢いで敵のエネルギーを壊すのである。それから今度は慈悲の気持ちをもって静かに「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と唱える。それによって霊は静まります――。

高知市のホテルでのこと。佐藤愛子さんは、ふとある気配で目を覚ます。壁の中ですすり泣きがするのだ。とっさに塩をつかみ、「南無妙法蓮華経」と大音声で唱え、壁に向かって思いっきり塩を投げつけた!と、てきめんに泣き声がやむ。
しかし、しばらくすると、また泣き声が・・・。そして、また大声で「南無妙法蓮華経」、と。その戦いがしばらく繰り返される。

どうもおかしい・・・佐藤愛子さんは、フト気づく。この泣き声は、壁の中じゃなく、となりの部屋のアベックではないか?、と。
隣のアベックも困ったことであろう。愛のイトナミが最高潮に達してくると、隣室から大声で「南無妙法蓮華経」と響いてくるから!

さすが、ユーモア作家らしく、笑いを取ることも忘れない。

【ネット上の紹介】
江原啓之氏と行った岐阜の心霊アパート、狐霊の憑依事件、遠藤周作の霊、沖縄ガラスの花瓶の怨念など、12篇の怖い怖い心霊体験談。岐阜の幽霊住宅で江原啓之氏が見たもの、狐霊に憑依された女性の奇妙な話、夜中に金縛りにあった初体験、父・紅緑の霊が語ったこと、霊能者の優劣……。「この世よりもあの世の友達の方が多くなってしまった」佐藤愛子さんの、怖くて切ない霊との交遊録、第2弾。安らかな死のためには、どう生きたらいいかを考える一冊です。