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「旅立つ理由」旦敬介

2013年12月21日 20時59分44秒 | 読書(小説/日本)

「旅立つ理由」旦敬介

ANAグループ機関誌「翼の王国」に連載された作品を集めた短編集。
世界各地・・・メキシコ、スペイン、ブラジル、ケニアなどを舞台にした小説。
それも、けっこう深く掘り下げていて、そこに暮らすか何度も尋ねないと分からないようなネタを提供している。
食べ物の記述も多くて、思わず食べたくなる。
旅行好きなかたに、お薦めの作品だ。
政治情勢にも触れられていて参考になる。

P116
1981年の初めのスペインは、40年近く独裁政権を敷いたフランコ将軍が死んでまだ5年しか経ってなく、ヨーロッパ共同体のメンバーになる日が来るとは、まだ誰も夢にも思っていない時代だった。

P124
1981年のスペインを思い出すと、望遠鏡を反対側から覗いているみたいに遠くに小さく見える。その翌年からわずか十年の間にスペインは、サッカーのワールド・カップと、バルセローナ・オリンピックと、セビーリャ万博を、立て続けに開催して、左派政権のもとで一気に加速して変わっていったからだ。 

【ネット上の紹介】
政変でケニアに逃げてきたエチオピア人、ベリーズに流れ着いた上海娘、メキシコ湾岸に住む黒人奴隷の子孫たち…。アフリカや南米の、そのさらなる辺境に暮らすふつうの人びとの真摯に生きる表情と飾らぬ姿を簡潔に写し取りながら、現代の地球において、人はどういう理由で旅に出るのか、どうして故郷を離れることを強いられるのかを問う、21の短篇。主人公以外は日本人がほとんど登場しない、異色の日本文学。