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「美雪晴れ みをつくし料理帖」高田郁

2014年02月19日 21時10分41秒 | 読書(小説/日本)

「美雪晴れ みをつくし料理帖」高田郁

シリーズ第9弾、8か月ぶり最新刊。
いよいよ大詰め、大団円に向かって、澪が動き出すのか?(次巻が最終刊)
ミッション・・・『四千両を用意して、あさひ太夫を身請けする』が発動するのか?

前巻P222の文章。
どうあっても、と澪は自身の掌を開き、それをぐっと拳に握った。
どうあっても、この手で野江を取り戻す。途方もないこと、と怖じ気づくのはもう止めだ。ただ厚い雲の下に居て、切れ間を待つのではない。自ら飛翔し、雲を切り開いて行くのだ。
 
前回、当ブログでも次のような文章を書いた。

様々なしがらみは無くなり、かなり身軽になった
ストーリーはシンプルになり、最終章に向け、ベクトルは強くなった。
いよいよ物語は佳境に入っていく、と思う。

実際、今回の展開はどうなんだろう?
以下、ネタバレありなので、未読の方ご注意。

作品は4章から構成されている。
最初の3章は、芳の再婚に焦点が当てられる。
物語が大団円に向けて進展するのは、4章「ひと筋の道」から。

P153
「又次の今わの際のあの言葉・・・・・・」
掠れた声が、指の間から洩れた。
「あれは、お前さんに太夫の身請けを頼む、という意味だったとは・・・・・・」
(・・・摂津屋が探り出すかと思っていたが、澪がストレートに教える、とは思わなかった。私の予想に反してしまった)

P158
人の身体は、酷暑の頃には塩見と酸味を欲し、極寒の頃には甘味とこくを求める。
(・・・確かに、そのとおり、と思う)

P229
「芳と縁を結んだ今は、佐兵衛さんは私にとっても息子同然。だからこそ、教えておきたいのだ。自らを守るために苦しみから逃げることは間違いではない。だが、逃げて苦しみが深まったならば、決して逃げるべきではない、ということを」
柳吾は自身に言い聞かせるように、声を落としてゆっくりと話す。
「料理の道を捨てさせた原因を取り除くために、相応しい場所へ、本来身を置くべきだった場所へ必ず戻す。それが、芳というかけがえのない伴侶を得た私の役目のように思えてならない」
(・・・う~ん、こうきたか!今後、こちらの展開は終わった、と思っていたけど。思わぬ流れが出てきた)

P244
「吉原でそうしたお大尽の助けを得よ、と仰りたかったのですか」
その問いかけには答えずに、清右衛門は厳しい眼差しを料理人に向けた。
「良いか、お前は試されるのだ。その心願をお前がどれほど本気で叶えようとするのか、摂津屋は敢えて
手を貸さずにじっと見ているつもりだ」
(・・・このあたりから、物語の流れが変わってくる。ほとんど
花登筺作品か!、と思われる雰囲気。吉原に出むいて、自分の料理を一人で売る。このあたりの展開、手に汗にぎるというか、思わず正座して読み進んだ)

P300
「摂津屋助五郎には感心させられた。あさひ太夫の身請けを企てるお前に、金を貸すのではなく、知恵を貸したのだからな」
(・・・これは清右衛門のセリフ)

P305
「ご自身では気づかれていないだけで、澪さんはずっと料理人として変わらぬ姿勢を貫いておられますよ。料理で食べるひとを健やかにしよう、身体と心に良い料理を作ろう、と。口から摂るものだけが、人の身体を作る――私の何気ないひと言を心に留めて、今日まで少しも手を抜くことなく料理を作っておいでではありませんか」
(・・・医師・源斉のセリフ、澪の将来の姿を占うお言葉である。なかなか二人は良い雰囲気だ)

さて、次巻タイトルは、「天の梯(そらのかけはし)」、今年2014年8月刊行予定、とある。(P320)
我々読者に出来ることは、楽しみに待つ、のみ。

【参考リンク】
前作の感想
「残月 みをつくし料理帖」高田郁

【余話】
雪で入荷が送れていたようだ。
土曜日、いつもの書店にTEL。
「入荷しましたか?」
「雪で送れています。来週月曜か火曜になりそうです」
翌日、日曜日、別の駅前書店を訪ねる。
「入荷してますか?」
「先ほど入ったところです」
「よかった!」
これで無かったら、紀伊国屋・高槻店まで電車で行かねばならない。
(ネットで在庫検索かけて、『在庫有り』を確認済み)
余計な時間を取らずにすんで良かった!

【ネット上の紹介】
名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい―。一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。