「レスキュードッグ・ストーリーズ 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄
シリーズ5作目。
南アルプス山岳救助隊の活躍を描く短編集。
次の12編が収録されている。
「遺書」
「山の嫌われ者」
「青天の霹靂」
「神の鳥」
「霧の中に……」
「帰ってきた男」
「父の山」
「サバイバーズ・ギルト」
「辞表」
「向かい風ふたたび」
「相棒(バディ)」
「夏のおわりに」
P111(「霧の中に……」より)
「たとえば山で登山者同士がすれ違うとき、お互いに“こんにちわ”って挨拶するだろ?あれは、自分が生きている人間なんだよと相手に伝えるために始まったという話があるね」
(中略)
吊尾根分岐の斜面に立っていた青いシャツの男性に夏実は声をかけた。返事がなかったのは、もしや当人が死者だったからなのだろうか。そう思うと、あらためて背筋が寒くなる。
「でも……そういう人たちにお会いしたとき、どうすればいいんですか」と、曾我野。
「心の中で唱えるように教えてさし上げるんだよ。いつまでも山に残っていても仕方ありません。早くご家族のところに戻ってあげて下さいってね。たいていの場合、納得してくれるみたいで、それきり見かけなくなるね」
特に良かったのが、「相棒(バディ)」。
解説では、物語の転換点となる、と表現されている。
確かにそうだ。
涙、涙、である。(41ページの短編だけど、どれだけ泣かせるのか)
【ネット上の紹介】
標高3193m。日本第二の高峰・北岳。そこに南アルプス山岳救助隊があり、山岳救助犬を伴うK‐9チームがいる。山岳救助、犬との交流、親子の絆のほか、「南アルプス山岳救助隊K‐9」シリーズの転換点となる「相棒(バディ)」、単行本未収録作品「夏のおわりに」を含むバラエティあふれた全12編を収録した本格山岳小説集。