「希望荘」宮部みゆき
「杉村三郎シリーズ」の第4弾
「誰か」
「名もなき毒」
「ペテロの葬列」
そして、本作「希望荘」。
キャラクター造形、ストーリーテリング、謎解き、と三拍子揃った面白さ。
円熟の技を感じる。
次の4編が収録されている。
「聖域」
「希望荘」
「砂男」
「二重身」
特に良かったのが、「砂男」。
サイコパスの造形がリアルで、怖くなってくる。
小出しにする演出が巧い。
P61
「ベルは鐘、ブックはただの本じゃなしに〈ザ・ブック〉つまり聖書のことで、キャンドルは蝋燭。その三つは確か、魔女を象徴するアイテムだよ」
P243
「女性は、親友には彼氏をお披露目せずにいられないイキモノのようですからね」
(中略)
「大事な彼氏ならちゃんとしまっておけ、と言いたいですね」
P385
恥じ入るのをやめ、はにかんだ。この二つの差異は微妙だが、その違いは誰が見たってわかる。
【おまけ】
シリーズ4作品、どれもすぐれた出来栄え。
他の作家と比べると、どれも平均点以上。
でも、同じシリーズの中では、優劣がある。
「誰か」は、平均点の少し上くらい。
「名もなき毒」は、優れている。宮部みゆき作品の中でもトップクラスの仕上がり。
「ペテロの葬列」で、少し落ちる。前作が良すぎたので、期待しすぎたのもある。
そして、本作「希望荘」。これで盛り返した。満足、満足、ってところ。
【ネット上の紹介】
家族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業する。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年発生した女性殺害事件を解決するカギが隠されていた!?(表題作「希望荘」)。「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身」…私立探偵・杉村三郎が4つの難事件に挑む!!