「源氏物語」を3部に分けて構成した「結び」三部作の最終章。
「紫の結び」=紫の上を中心とした源氏の君の一生。
「宇治の結び」=匂宮、薫大将、浮舟の宇治十帖。
そして本作「つる花の結び」=夕顔と玉鬘十帖を中心とした作品。
玉鬘=つる草の美称であり、中の品の女性たちが登場する。
さらに言うと、玉鬘は夕顔の娘。
P95
「あの白く咲いているのを、夕顔と言います。花の名は人に似て、こうしたみすぼらしい垣根によく咲いています」
たしかによく見れば、小家ばかりのむさくるしい界隈のここかしこ、みじめに傾いた軒先などに、同じつる草が這いまわっていました。
夕顔が突然死し、その遺体を運ぶシーン…非情にリアルだ。
P130
源氏の君には、もう夕顔を抱き上げることができそうにないので、惟光が上筵でくるんで車に乗せます。小柄できゃしゃで、気味悪くも見えずに愛らしい体でした。きつく包むことはできなかったので、髪が筵からこぼれでます。
P169
「機転のきく才気走った人ではないようだね。だが、女人は子どもっぽく大らかでこそかわいいものだよ」
源氏の君は言います。(これは著者・紫式部の本音か?だから清少納言を嫌うのか?)
近江の君が登場する「行幸」
P127
「くさくさしたときは、近江の君の顔を見ると気が晴れる」
(これは、褒めているのではない。元祖・お局様たちの「いけず」である。都人のいけずは、年期が違う)
この分け方は、通して読んでみると、すっきりする。
「これが本来の形かも」って思ってしまう。
どうして、今までこのように順番で刊行されなかったのだろう?
その意味で、コロンブスの卵、画期的だ。
【感想】
多くの女性たちが登場するが、佐野洋子さんの言うように、格別幸せになった方がいない。
西洋の小説だと、もっとなんとかするのではないか。
紫式部が、冷めた眼で登場人物たちを見ている、って読んでいて感じた。
【おまけ】
私が、印象に残った女性を3人挙げると、花散里、夕顔、浮舟かな…。
一番活躍し、貢献したのは、六条御息所と思う。
存命中は生き霊を飛ばし、亡くなっても死霊となって頑張った。
ちなみに、六条御息所の娘は秋好中宮。
【ネット上の紹介】
長雨の夜に語られた女性談義で若い源氏はさまざまな女性の魅力を知りたくなります。貴公子の恋は、身分を越え、人妻の空蝉、頭中将の可憐な女人・夕顔、落ちぶれた宮の姫君・末摘花と危うい綱渡りを続けていきます。