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「イソップ寓話の世界」中務哲郎

2018年07月20日 20時21分35秒 | 読書(エッセイ&コラム)

ちくま新書<br> イソップ寓話の世界 
「イソップ寓話の世界」中務哲郎

P119
ごましお頭の男が、若い娘と年たけた婆さんと、二人の愛人をもっていた。婆さんは、自分より若い男と語らうのが恥ずかしくて、男が通ってくるたびに、髪の毛の黒いのを抜き続けた。若い方は、年寄りを愛人にしていることをごまかそうとして、白髪を抜いた。こうして、両方から代わる代わる毛を抜かれた男は、禿になってしまった。(子供用「イソップ童話」には、この話は掲載されない、と思う。「愛人」「禿」「男が通う」など、モラルコードやポリティカルコレクトネスに抵触するワードが、短い中に満載で教育上不適切と思われるから)

P89
共同体を襲う災いやそこにある一切の罪穢れを担わせ、全員で境界の外に追い出し、あるいは殺害することによって集団が浄められたとする。このようなスケープゴートの儀礼の全世界からの例については、フレイザー『金枝篇』の記述に詳しいが、これは未開社会や古代社会に限られた現象ではないし、制度化された儀礼としてのみ現れるものでもない。疫病や大地震のような不時の災厄に際して、人間はどれほどのスケープゴートを作り出してきたことであろう。

【ネット上の紹介】
イソップの動物寓話は、子ども向けの人生訓話としてなじみ深いものである。けれども、ほぼ同時代のソクラテスやアリストパネス、ヘロドトスなどによってすでに真剣な考察の対象とされたように、そこには読み手の立場によって多様な解釈を許容する、奥行きをもった世界が展開されている。では、イソップとは誰なのか。それはいかなる経緯によって成立し、流布されていったのだろうか。先行文明としてのメソポタミアやエジプトをも視野に入れながら、イソップ寓話をとりまく謎に迫る。
第1章 イソップ寓話とは
第2章 寓話の起源
第3章 イソップの生涯
第4章 寓話の歴史の三区分
第5章 イソップ以前―ギリシアの場合
第6章 ギリシア作家とイソップ寓話
第7章 イソップ以前―日本の場合