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「十五の夏」佐藤優(上・下)

2018年07月06日 20時05分47秒 | 読書(旅・紀行)


「十五の夏」佐藤優(上・下)

1975年、高校1年の夏休み、佐藤優少年は旅に出る。
約40日間、東欧とソ連の旅。
「栴檀は双葉より芳し」と言うが、佐藤少年は、既に問題意識が高かった。
それにしても、両親もよくOKしてお金を出してくれたなぁ。
今回の場合、本人より両親がえらいように感じる。

上巻P336
「日本で知ったルーマニアのイメージは、もっと肯定的でした。東欧社会主義国でありながら、自由がある。アメリカのニクソン大統領もルーマニアを訪問した。ルーマニアはワルシャワ条約機構の一員でありながら、1968年の『プラハの春』に対する軍事介入をしませんでした」
「対外的な自主外交と国内統治は違う。この国の内政は実に酷い。ソ連の方がずっと自由だ。おそらく、この国よりも国民に対する抑圧が厳しいのはアルバニアしかないと思う。ニコラエ・チャウシェスクに対する個人崇拝は、スターリンを上回っている。(後略)」

下巻P105
「日本人は思想に関して鈍感だ。だから、天皇制神話のようなものを本気で信じ込んでいた。もっとも陸軍将校では、神憑り的な皇国神話を信じていた人は少ない」

下巻P109
「高校1年生の夏休みにソ連・東欧に一人旅をするような少年が、将来、中学校の教師になることはない。佐藤君は、自分では認めたくないだろうが、大きな野心を持っている」
「野心なんかないと思います」
「いや、ある。ただ、若者が抱く立身出世や発明家になりたいという類とは異なる野心だ」
 そう言って、篠原さんは笑った。

下巻P435
「ほんとうに好きなことをしていて、食べていけない人を僕は一人も見たことはない。ただし、中途半端に好きなことではなく、ほんとうに好きなことでないとダメだよ。(後略)」

高校一年の旅、これだけ克明に記憶しているのか、と驚嘆する。
その時につけた記録を見ながら書かれてるのだろうか、会話を詳細に覚えているのがすごい。
会話までノートに記録しないだろうから。
またそれとは逆に、数学の問題について、何度も繰り返し説明される。
「それさっき聞いたから」と言いたくなる。
本書を書いていて、その辺のダブりは記憶から抜けるのか、全体を通して読み返していないのか、気にならないのか、よっぽど強調したいのか、何度も繰り返し言いたくなるほどトラウマなのか、どれなの?

【おまけ】
現代日本の「知の巨人」と言うと、佐藤優さんと池上彰さんを思い出す。
両者を比べると、佐藤優さんは少し癖がある。
言動を見ても、共感するものもあれば、首肯出来ないものもある。
そこが違う。

【さらにおまけ】
TVでの池上彰さんは、例えば原発問題など意見の分かれている事案には、自分の意見を前面に出さない…でも注意深く聞くと、地震列島に原発を乱立するのは無謀だ、と婉曲に表現しているんだな、と分かる。そのように、映像の流れを演出している。

【蛇足】
本書を読んで、ハンガリーとポーランドに行ってみたくなった。
ウクライナ、ロシアも一度くらい行っておきたい…かな。

【ネット上の紹介】
一九七五年、高一の夏休み。ソ連・東欧一人旅。 異能の元外交官にして、作家・神学者である“知の巨人"の 思想と行動の原点。40日間の旅行記。 僕がソ連・東欧を旅することになったのは、高校入学に対する両親からの「御褒美」だ。旅行費用は、僕の手持ちの小遣いを入れて、48万円もかかる。僕は父の給与がいったいいくらか知らないが、浦和高校の3年間の授業料の10倍以上になるのは間違いない。両親には申し訳ないと思ったが、好奇心を優先した。 羽田→カイロ空港→チューリヒ→シャフハウゼン→シュツットガルト→ミュンヘン→プラハ→ワルシャワ→ブダペシュト→ブカレスト→キエフ→  →モスクワ→サマルカンド→ブハラ→タシケント→ハバロフスク→ナホトカ→バイカル号→横浜
第1章 YSトラベル
第2章 社会主義国
第3章 マルギット島
第4章 フィフィ
第5章 寝台列車
第6章 日ソ友の会
第7章 モスクワ放送局
第8章 中央アジア
第9章 バイカル号
第10章 その後