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「派遣社員あすみの家計簿」①②青木祐子

2021年09月13日 08時01分46秒 | 読書(小説/日本)

「派遣社員あすみの家計簿」①②青木祐子
 
①が出て、私が読んだのが2019年11月。
まさか続編が出るとは思わなかった。
これでオワリ、と思っていた。
嬉しい驚きだ。

約2年前なのでほとんど人物関係を忘れている。
②を読むに当たって、①を読み返して②に入った。

①の内容は・・・
あすみは会社を“寿退社”したのに、恋人は雲隠れ。
残ったのは、カードの支払いのみ。
家族の援助は期待できず、急遽、派遣会社に登録する。
シャンプー配りや工場の日雇いで、なんとか食いつないでいく。
その苦境のなか、友達も出来ていく。
 
あすみの就職の理想
P27
25万円は最低ラインである。勤めるなら残業なし、ボーナスあり、家賃補助あり、有給休暇を好きにとれて、オフィスが綺麗で、丸の内にあって、人間関係がよくて、責任はないけどやりがいがある会社がいい。(そんな会社あるわけない)
 
P89
ネットの求人サイトを調べたら、28歳の中途入社で、給料25万円を超えて楽そうな仕事はほぼなかった。あると思ったら看護師だの、英検1級以上必要だの、未経験者不可だのである。オフィスワークだったら手取り20万円いけばいいほうで、それすらスキルが足りなかったりする。
 
コーディネーター矢野のセリフ(矢野さんは好感度高い)
P258
「私の仕事は、その人にとって最良の働き方を提案していくことだと思っています」


ここから②の紹介に入っていく。

仁子とあすみの会話
P23
「OKOK。スタイルはいい。これで断る男はいない」
あすみは写真を見つめてうなずいた。
「貧乳がバレないのを選んだわ」
「乳は盛ればなんとかなる。仁子はスマイルが足りないんだよ。ニコニコしてたらそれだけで周りが喜ぶのに」
「私の笑顔は総量規制があるから。好きでもない他人を喜ばせる趣味はないの。(後略)」(女性の「無意味な笑い」は、男を攻略する上で重要な戦略、と思う・・・試してみて)

P33
節約生活を始めた最初のころに椿のような女性と知り合えたのは幸いだった。おかげで自分を惨めに思わないで済んだ。女性は公務員か大手の会社の正社員になって、似たような男性と結婚して、実家の近くに家を建てるのが一番の幸せ、というような価値観から逃れられた。

P119
「仁子は内面にこだわりすぎなんだよ。男はまず顔だって。顔さえよきゃ少々のことは目をつぶれるんだから。内面とかキャリアはその後に考えればいいんだよ」
「びっくりするぐらい説得力ないわー」

P233
「なんかさあ、結婚相手って仕事だよね。やってみなきゃわからないっていうか。やったら案外、なんでもいけそうな感じとか。結婚にも派遣みたいなのあればいいのにね」
「三年たったら契約終了、みたいなの? 非正規結婚。子どもくれるならそれでもいいわ」
「わたしもそれでいいわ」
(結婚は人生最大のギャンブル、と思う・・・それも、リスクが高いギャンブルだ。なにか「保険」をかけるべき、と思う)


P249
わたしはこういう文面を見るのは初めてじゃない。なぜだか関係の薄い周辺の人間に、自分の正当性を訴えたがるのね。どうせならわたしに出せばいいのに。ミルキーがちょこちょこ嘘をつくのは事実だけど、わたしは嘘をつく人よりも、全部自分が正しいのだと思い込んでる人の方が怖いわ」

【感想・コメント】
①に劣らず面白かった。むしろ面白さのレベルが上がってるかも。
ミルキーの過去も明らかになり、「おお!」と思った。
さりげなく重い話が挿入され、びっくり。
男女のすれ違い、価値観の相違を分かりやすくエピソードで披露する技術は秀逸。
この終わり方は、③も期待できそう。
「これは経費で落ちません! 」のように、シリーズ化なるかもね。

【ネット上の紹介】
豊加と付き合い始め、元彼の理空也と同棲していたマンションから引っ越しをしたあすみ。いざ新生活と思いきや、新居に洗濯機が入らずコインランドリー通いが始まった。そんな折、アメリカの大手銀行が倒産し、悪性のインフルエンザも流行して、経済は急激に悪化。正社員登用の話が白紙になった豊加は、会社を辞めて無職になってしまう。あすみは配達員の副業を始めるが、派遣の契約更新では時給を下げられショックを受ける。そして先行きの不安な中、豊加からプロポーズを受けるが…!?金欠アラサー女子のサバイバル小説、波乱含みの第2弾。