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「マリー・アントワネットの嘘」惣領冬実/塚田有那

2021年10月04日 08時04分25秒 | 読書(歴史/時代)

「マリー・アントワネットの嘘」惣領冬実/塚田有那

誤った「伝説」が定着している。
それを正そう、って企画。
シュテファン・ツヴァイクの「マリー・アントワネット」は1932年出版。
それを元に「ベルサイユのばら」が描かれた。
その後、新たな資料が発掘され、「そこ違うんじゃないの」、ってのが出てきた。

P11
21世紀に入ってから、歴史研究者たちの間でこうしたねじ曲がって伝えられてきたパブリックイメージのどこまでが史実だったかをより緻密に調べ直す動きが出てきた。シモーヌ・ベルティエールによる伝記『マリー・アントワネット 不屈の王妃』(日本未訳)とジャン=クリスチャン・プティフィスによる伝記『ルイ十六世』の2冊がその代表作だ。そして2016年、この2冊をベースに全く新しいマリー・アントワネットとルイ十六世のマンガが生まれた。それが惣領冬実による『マリー・アントワネット』だ。史上初めてヴェルサイユ宮殿がマンガを監修し、資料提供に全面協力した。

P41
当時流行のサロン文化においては子どもさえできなければ不倫ではないとされたことだ。

マリア・テレジアとマリー・アントワネット往復書簡
P73
「この書簡をベースにしたのが、後のツヴァイクの伝記に書かれた、頭の弱いマリー・アントワネット像、ダメなルイ=オーギュストなのではないか・・・・・・・と思い始めているので、あまりこれに固執するのは危険な気がしてきました」

P79
アントワネットのスキャンダラスなイメージを積み上げていった噂の本体は、「チビでデブで頭の弱い国王を、高飛車でプライドの高い王妃は愛せなかった」という言説に由来するものだ。

P82
ルイ十六世は本当に愚鈍で気のきかない男だったのか?アントワネットは、本当にお馬鹿なお姫様だったのか?

P93
マリー・アントワネットが生涯感じていた「居心地の悪さ」は、夫が不能だったからでも、彼女が馬鹿だったからでもなく、当時の絶対王政下の宮殿の異質さ、しきたりによって決まりきった人生への抵抗だったのではないかと惣領はいう。

惣領冬実と萩尾望都の対談
P129
『チェーザレ』の時代と違って『マリー・アントワネット』の時代はレースがふんだんに使われているので、必然的に線がかなりの細かさになります。レースの風合いを出すために、0.03ミリのペンを使っています。チェーザレの時代はゴブラン織りなどカーテンのような布地なので、その質感を出すために0.1ミリくらいの太さで描いていますね。

【感想・コメント】
目から鱗の数々。勉強になった。
ちなみに、7つの嘘とは、次の通り。

第1の嘘「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」は誰のセリフ?

第2の嘘 ベッドに隠された謎 ルイ16世は不能だった?

第3の嘘 マリー・アントワネットはフランスに嫁いだ時、フランス語ができなかった?

第4の嘘 マリー・アントワネットはデュ・バリー夫人を無視し続けた?

第5の嘘 フェルセンはマリー・アントワネットの愛人だった?

第6の嘘 ルイ16世は愚鈍な男だった?

第7の嘘 プチ・トリアノン離宮は王妃の淫らな社交場だった?

実際読んで、確認してみて。
新資料によると、シュテファン・ツヴァイクも池田理代子も根本部分を誤って認識し、描かれたエピソードのいくつかも間違い、ってことになる。

【新資料・・・特に驚いた点】
皇帝ヨーゼフ二世が弟(マリー・アントワネットにとっては兄)のトスカーナ大公レオポルトに送った手紙。これが発掘されたことにより、なぜ7年間も子どもができなかったのか?、って謎の答えが得られる。シュテファン・ツヴァイクは、ルイ16世が真性包茎のように記述しているが、そこ違うんじゃないの?、となる。P22-23を読んでみて。(きわどい内容なので、ブログでの記述を控える)

これって本来夫婦間のプライベートな問題だけど、オーストリアとフランス、ハプスブルク家とブルボン家、政治と歴史の大問題だ。

【関連リンク】

「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク

【ネット上の紹介】
夫はチビでデブの気弱な国王、不能の夫に欲求不満でフェルセンと密通、「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」発言、離宮は王妃の淫らな社交場だった…etc.その歴史、ぜんぶ嘘でした。ヴェルサイユ宮殿、そしてマリー・アントワネット協会が監修した史上初の漫画企画『マリー・アントワネット』。その作者である惣領冬実が「真実のマリー・アントワネット」に出会うまでの製作秘話のすべてがこの一冊に。
第1章 マリー・アントワネットの七つの嘘(「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」は誰のセリフ?
ベッドに隠された謎―ルイ十六世は不能だった? ほか)
第2章 マンガ家と美術館のコラボはどうやって誕生したか(ヴェルサイユ宮殿の誘い
歴史探偵・惣領冬実のプロファイリング ほか)
第3章 「歴史美術の職人」として(百科事典への欲望
「描く」ことで見えてくる真実 ほか)
第4章 対談・萩尾望都×惣領冬実「マンガ、それは異端者のための芸術」(妄想VSプロファイリング!?―史実へのアプローチ
衣装は、時代を反映する芸術 ほか)
第5章 マンガが、社会を変えていく(鼎談「マンガ」は新しい血を必要としている)
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