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「魂の昭和史」福田和也

2023年03月11日 08時09分48秒 | 読書(昭和史/平成史)

「魂の昭和史」福田和也

著者は、1997年当時、慶應義塾大助教授。

なるほど、って思う箇所もあるが、
あれ?、と思う箇所もある。

P69
日清戦争とは、中国が朝鮮を支配するのを避けるために、ありていに云えば、朝鮮半島を日本の勢力範囲におくために、日本と中国は戦争したんだね。

P73
(ロシアは)なぜ膨張したがるのかというと、臆病だからだね。
ロシアというのは、もともと国のなりたちからいって、スラブ民族が、モンゴル帝国に支配されたことをきっかけにできた国だ。
モンゴルがユーラシア大陸を席巻したとき(13世紀)、今のロシアあたりにいた領主たちは、モンゴルの支配下で、とてつもないひどい目にあった。
そういう目にあわないようにと、スラブの領主連中が集まってできたのがロシアだ。

P90
第一次世界大戦でそれまでの国際秩序が全部変わってしまった。
特に大事なのは、四つの帝国がなくなったことだ。
四つの帝国とは、一つは敗戦国のドイツ帝国、それからドイツと同盟して戦ったオーストリア・ハンガリー二重帝国、その東側のトルコ帝国、そして敗戦国ではないけれども、戦争中に革命で倒れたロシア帝国、この四つの帝国がなくなってしまった。

P100
イギリスの貿易収支を見ていくと、大英帝国の最盛期でもモノの収支はほとんど全部赤字なんだ。
だからイギリスは自由貿易を常に堅持して、自由貿易を守るために国際的な自由経済市場というのを保護した。そのために自国の市場も全部開放した。そしてモノの行き来を活発にして、モノの行き来に関わる保険とか投資とかで儲けていた。
国際金融システムを通じて世界を支配し、世界経済を安定させるというのが、イギリス基本的な国家戦略だったんだ。(中略)
ところが第一次世界大戦で、イギリスが力を失ってしまう。
ということは同時に、この自由貿易システムや金融システムがうまく動かなくなり、ついには壊れてゆくということだ。

P124
実際、日本が単純に満州を植民地にしたのであれば、西欧諸国との妥協は難しくなかったともいわれている。
(満州とあり、満洲と表記されていない、そこが気になる。――
かれらの自称「マンジュ」は、文殊菩薩の「文殊」に由来するものですが、その音に「満洲」という字を当てたのは「明」が火をイメージさせる文字であることから、マンジュの発音に合う文字の中から水のイメージをもつものを選んだと言われています。ですから、最近は「満州」と「さんずい」のつかない表記が多いのですが、本来は「満洲」が用いられるべきなのです。P282「教養としての「中国史」の読み方」岡本隆司

P183
朝日とか、読売とか、毎日といった新聞が、日本人を戦争にかりたてていったこと、その第一の責任を負うべきことについて、今さらとやかく云うつもりはない。ただ、こういう立派な新聞の記者さんたちが、自分の会社のことは棚に上げて、昔から戦争に反対していたようなことをいいながら、日本人は戦争への反省が足りないなんて主張するのはおかしなことだと思う。本当に恥ずかしいね。
でも、この恥ずかしさを味わうのはとても大事なことで、それは戦後民主主義とか、日本国憲法のなりたちを考えるよりも、よほど大切なほどだ。

P192
いくら戦争に勝ったからといって、占領軍がその国の国家体制を変えて、憲法を書き改めるなんていうことは、国際法に違反している。
そういう権限を占領軍に与えるなんてことは、連合軍が日本側に降伏条件として突きつけたポツダム宣言にも、国際法にも、でていない。

P194
講和条約をむすんで、占領が終了し日本が独立した後でも、日本を武装解除しつづけ、アメリカの保護下におく。
それが第九条の本質だ。

P204
北方領土、つまり国後、択捉、歯舞、色丹等の諸島は、サンフランシスコ講和条約のときに、アメリカは、わざと日本のものかソビエトのものか、はっきりしないようにしておいた。
日本とソビエトが、領土問題のために。こじれた関係にならざるをえないようにするめにだね。
本当に知恵のある悪党じゃないか。外交っていうのはこういうもんだね。

P210
日米安保条約は、日本をアメリカの軍事的占領下におくという条約であって、日本はこの条約を結んでいるかぎり、本当は独立していない、とも考えられる。(じゃあ、安保を破棄して、独力で防衛できるのか?代替案を示してほしい)

*【安保を破棄して国防力を持てるのか?】「令和を生きる」半藤一利/池上彰
半藤:いま国防予算は5、6兆円ですよね。(中略)
もし仮に日米安保を破棄して日本が自主防衛するために独自の国防力をもつとなったら、どのぐらい金がかかると思います?防衛大学校の教授二人がその場合のシミュレーションをやった。それによると23兆円もの金がかかるんだそうですよ。これは核兵器をもたない場合の予算です。いわんや核兵器なんかをもつなんて言ったらとんでもないことになる。核兵器をもつとなると、核拡散防止条約から外されて、たちまち経済封鎖。経済封鎖を食らったら日本の国はもうお手上げです。
(中略)
池上:日本が核ミサイルを持つならば、ディーゼル型の潜水艦は長期間潜っていられませんからイギリスとおなじように原子力潜水艦をつくる必要が出てくる。経済制裁でウランが入って来なかったら原子力潜水艦の原子炉の燃料をどうします?
半藤:原子力潜水艦がなければ抑止力にならないんです。要するに、北朝鮮が何もアメリカにできないのは、原子力潜水艦がないからです。
池上:ええ。しかもその運用ということになると、つねに日本海溝なり日本海に潜ませておくためには一隻ではダメ。最低、三隻必要なんです。原子力潜水艦三隻を運用して、初めて最低限の核抑止力が完成する。さあ、日本はそれができますか、ということでしょうね。(中略)
半藤:借金大国の日本がね、それだけの予算をほんとうに投入できるんですか、ということなんです。

【関連図書】・・・昭和史と言えば、先にこちらを押さえるべき、と思う。
 
「昭和史 1926-1945」半藤一利
「昭和史 戦後篇」半藤一利


「昭和史裁判」半藤一利/加藤陽子

 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子


「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて」大沼保昭/江川紹子

【ネット上の紹介】
“もし自分がその場にいたら、戦争を止められただろうか”“なぜ日本はふたたび経済的な発展ができたのか”“君が「売春をしたっていい」と言えるまでになるのに、どれだけの蓄積が必要だったか”…。本書は、世界の動きを追いつつ、大きな流れの中で昭和史を捉え直す。歴史は単に年表を追うものでも、他人事として裁くものでもない。時代の波に翻弄され続けた先人たちの喜びや悲しみ、誇り、戸惑いなどに思いを馳せれば、歴史はもっと身近になる。すべての日本人が自分に直接かかわる問題として共感できるようやさしく語りかける、渾身の一冊。こんな歴史観があったのか。
魂の震えとしての歴史(あらゆる時代を超えて)―魂の核心で感じる、それが歴史を学ぶということ
江戸時代の意味(17世紀~19世紀中頃)―世界史に例のない平和で文化的だった時代
明治時代について(19世紀後半~1890年代)―残酷きわまる世界のなかで、命がけで走り続けた
日清、日露戦争(1894年~1910年)―独立を守るため戦争をしなければならなかった
昭和の始まり(1910年代~20年代末)―世界秩序の変化に気づかなかった日本の悲運
満州国とは何か(1930年代初頭)―独自の道を歩み始めた日本と、西欧の鋭い対立
昭和前期について(1920年代後半~30年代)―ひどい貧困のなかで新しい国家のデザインを模索
大東亜戦争とは何か(1930年代後半~45年)―勝ち目のない戦争に進まざるをえなかった悲しさ
占領は日本を変えたか(1945年~51年)―わかりやすい目標が生まれ、変な陽気さがあった
高度経済成長(1951年~60年代)―経済発展が国民に一体感を与えた幸福な時代〔ほか〕
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